軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

若き研究者に「拍手!」

今日は研究会参加所感を短く書きたい。
虎ノ門道場という、東京財団主催の研究会に参加しているのだが、今日は我が目を疑いたくなるほど感激した。報告者は稲垣大紀氏という、25歳の東洋英和女学院大学大学院修了生であった。
司会者の吹浦氏が「女学院大学というのに半分は男性だ」と解説しなかったら理解できなかったであろう。報告は「南京事件をどう見るか」という題であったので大いに興味があったのだが、かっての戦争とは全く無縁な世代の「若過ぎる?」研究者であるにもかかわらず、彼の冷静な分析に感心したのである。
この研究を始めた切っ掛けは、1、祖父の戦場体験談に興味を持った事。2、日本人としての愛国心。3、単なる感情論部門を整理したい、というものだったというから嬉しい。
彼は、この問題は「虐殺数」の大小に尽きている感があり、その他の要因を無視している。
この「事件」を論じる為には何が必要か。それは、当時の軍隊の規律、背景。事件の質、どのような立場の者が「被害者」なのかについて調べる事を研究目的にしたと言う。
当時の南京攻略戦の概要説明から入り、関係した各部隊が、それぞれ得た捕虜にどのように対応したのかについて、当時の指揮官や兵隊達の日記などを含む第一級資料を追求しているのは見事である。報告はその外「捕虜処刑の背景」、「一般市民の被害」、「軍規弛緩の背景」など、各種資料を丹念に読んで考察しているが、結論は「歴史の真実は一つ」、白か黒かという感情論ではなく、資料を集め読み解く冷静さが必要。マスコミや煽動者の「間接的な意見」に左右されて、結果的に政治性を帯びているのは不健全である、と言うのだから、講演に参加した「老齢?」者の殆どが「目からうろこ?」だったのではないか? 
参加者の感想にあったが、「料亭に行きたいと言った26歳の代議士と同じ世代の青年」とは思えなかった。「自虐史観」蔓延の現代に、このような冷静な学者が育っていると言う事に私は感動した。彼の論文はやがて出版されるだろうから、この問題についての国民の関心が高まる事を大いに期待したいが、司会者の吹浦氏が最後に指摘したように、このような研究論文が、英訳されて世界に公表される事が大事であろう。
山本五十六大将は、高橋三吉大将に宛てた手紙の中で「今時の若者などと、口はばたき事は申すまじく候」と書いたが、久々に気分が明るくなった研究会であった。