軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

“高飛車”な朝日の社説

朝日新聞は、岩国市の住民投票で、米軍艦載機移転に反対票が賛成票を大きく上回ったのは、政府が「地元に十分相談せず、結果だけを押し付ける高飛車なやり方」に住民が反発したのだ、と社説に書いた。前回も書いたしコメントにもあったが、高速道路建設、鉄道の高架建設、ゴミ焼却・集積場、廃品処理場、はたまた葬儀場、墓地などなど、自分の生活圏内の施設が、衛生上、静寂確保上好ましいものではなかったり、または地価が下がり損益を蒙りそうなものであった場合には、一般住民は「絶対に」に賛成票を投じることはない。従って、この種の住民投票は全国のイデオロギストたちの支援もあって、殆ど全て「反対票が上回る」事は分かっている。
それは政府が「高飛車」に出たからではなく、むしろ「下手」に出た場合の方が激しく、どちらにせよ結果は同じであったと私は思っている。その反対運動を影に日向に支援してきたのが朝日新聞であったことも国民は知っている。過去の縮刷版を見てみるが良い。
その昔、原子力船「むつ」がその象徴であった。単なる「放射線」漏れを、「放射能」漏れと大々的に報道し、広島、長崎の被害に重ねて、国民に恐怖心を植え付けた。その結果、「むつ」は漂流を続け、国はどれほどの損害を蒙ったことか。青森県下北半島に行ってみるが良い。

ところで政府は、今回の住民投票問題について、「安保政策は国の専管事項」として結果にとらわれず、日米の最終合意に移駐計画を盛り込むという。当然である。ついでに言っておきたいが、竹島問題も、島根県の問題ではなく「国の専管事項」である事をお忘れなく。

今まで国は、基地周辺で騒音などの被害を受ける住民に対しては、それなりの「補償」を施こしてきた。基地周辺の実情を検証するが良い。勿論,「ダメなものはダメ!」という住民には、対処の方法がないから100%の住民が満足する結果は得られないであろう。だから今でも成田空港は世界でもまれな「不自由な空港」として片肺運用を余儀なくされているのである。あの時、まるで麻疹にかかったように「反対」を煽った政党があったが、彼らは成田から“平気で”外国に飛び立っていて、使い捨てられた「反対派農民」の苦しみなんぞどこ吹く風。その実態を朝日新聞はつぶさに検証して報道してみたらどうだろう。 自然保護を強調する余り?サンゴを破壊していんちき報道をするような新聞社が、「高飛車なやり方」などと政府批判社説を書く資格はなかろう。
ところでその朝日新聞に「良い記事」が出ていた。巨大な人口を誇る?中国が世界各地に「労働者」を「輸出」している実態の一部を報じたものである。国境を接するアフガニスタンのカブールの北にあるチャリカル町のはずれで、中国は「水利施設修理プロジェクト」をしているそうだが、一帯に中国人売春婦が溢れ、酒をサービスすることもあって、風紀が乱れ、酒を飲まないモスレムの住民と摩擦が絶えないのだという。
アフリカのジンバブエでも、ハラレの北約100Kmに進出している中国の「水利電力対外公司」の中国人が現地で農業指導を行っていて、「白人から守ってやる」と言っているそうだが、ジンバブエ国民は疑っているともいう。ロシアの沿海州にも木材会社が進出していて、ロシア人と摩擦を引き起こしている。二年前に私はサハリンを訪問したが、中国人のサハリン進出は目覚しく、サハリンの農業を殆ど独占していた。中南米でも、流入してきた中国人に対する反感は凄まじく、殺人事件も起きているというし、一昨年、ジャカルタを訪問したときも、あのおとなしい?インドネシア人でさえも中国人を襲っていると聞いた。このような現地レポートを朝日は今後とも続けて欲しいものである。

さて、今日は、私も評議員を勤めている「史料調査会」の定例会があり、森本敏拓大教授が「米軍再編と日米同盟」についてレポートした。ここで詳細を書くことは出来ないが、時宜に適した充実した内容であった。
イランを巡る動きからは眼が離せない。北朝鮮については、昨年九月の6者協議で、アメリカは「北に軍事攻撃をしない」と中国に約束したというが、それで中国が最近、北朝鮮に乗り込んで鉄鉱石など鉱物資源開発に取り組んでいる理由が分かった。北朝鮮は中国からの「見返りである経済支援」が続く限り、日本からの経済制裁なんぞどこ吹く風、ということになろう。しかし、米国は偽ドル問題は看過しないだろうから、対北経済制裁は強化されるだろう。
こうなると米国が世界戦略を完成させるための「不安定な弧」戦略の完成は、日本の態度一つにかかっていることになる。普天間基地岩国基地問題はその「リトマス試験紙」である。米国は現在「戦時下」にある。テロは戦争であり、テロ撲滅は9・11以後の米国民の一致した目標である。日本は、普天間基地問題一つとっても10年間も「放置」し続けて同盟国としての責務を果たしていない。厚木基地NLP問題は、それ以上前から続いているが、のらりくらりと解決を遅らせていて、何一つ解決されていない。そればかりか、米国がテロリスト国家・ならず者国家に指定したイランから、日本は平然と石油を輸入している。以前、湾岸戦争のときも日本だけは米国と歩調を共にせず、米国民は怒りを露にした。その上、「拉致被害者」を自ら奪還する努力もせず、6者協議に含めて会議進行を妨げた、と受け止めている。拉致被害者家族の方も、自国政府に見切りをつけて、米国や国連に「陳情」に行く始末。日本の事をよく理解していない米国民の中には、「日本は同盟国ではなくイランの味方ではないか?」と思うに違いない。世界野球の日米戦で、デビッドソン球審の「暴挙」に対して、米国メディアは冷静な反応を示しているそうだが、そのうちに球審の判定は正しい!と言い出すかもしれない。米軍のグアム移転費100億ドル、そのうち日本は75%出せといっているようだが、普天間・岩国問題がこじれると、全額出せと言わぬとも限らない。いずれにせよ、ラムズフェルド国防長官は「自分のやる事をしっかりやれ!」と、日本政府を怒鳴りつけたいに違いない。日本が「シーレーン」を自力で守っているのならばいざ知らず、米国に頼っている以上、放置できない問題である。
朝日新聞から「高飛車だ」と注意されようとも、普天間岩国基地問題については、政府は毅然とした対応をしなければならない。年内には中近東で何かが起きる公算は高まっている。事が起きてからでは間に合わないのである。

***史料調査会「4月の研究会」のご案内****

日時:18年4月20日(木)1330〜1600
場所:渋谷区神宮前1−5−3  (財)水交会(TEL:03-3403-1491)
議題:1.日本と中東・・・・・中東調査会上席研究員  大野元裕
   2.世界軍事情勢のブリーフィング・・・史料調査会会長   田尻正司
会費:1500円(資料代、珈琲代)
申し込み:史料調査会(TEL:03-3441-5330)・・・締め切り4月17日