軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

北のミサイル発射に「情報収集」で対抗?

北朝鮮が、やるに事欠いてミサイルを5発も発射したと言う。政府は「安保会議」を開いて、情勢を検討中だというが、長年「対抗手段」を欠いてきたわが国としては、これぐらいが関の山だろう。いつも思うのだが、北朝鮮の「不審船事案」のときも、政府では「要人たち」が集まって「協議」を続け、結局「弾を当てないよう」海上自衛隊の艦船や航空機に指示し、「不審船」が「防空識別線」を越えて北に逃げた時点で持って、事案を終結したのだった。
退官した後、「なぜ撃沈しなかったのだ!」と当時の「要人であった同期」に聞くと、「最高指揮官の命令だったからしょうがない」と言ったから、私は「撃沈して、『すみません。予算不足で実弾射撃訓練が不十分なため、ついつい当てて撃沈してしまいました。責任とって私がやめます』と言う役目が貴様だったのじゃないか?」と言ったことがある。もちろん「たちの悪い冗談」だが、今回のミサイル発射事案でも、おかしなことばかり報道されていて、家内でさえも不思議がっている。
「首相が『情報を収集するように』と官房長官に指示したそうだが、具体的に何をするの?」とか、「安保会議を開いてこれからどうするの?」とか私に聞く。
「OBの私に聞いても答えようがないではないか」と言いつつ、「情報収集のため、役所内でテレビをつけてニュースを見るのだろう」とか、要人たちが雁首そろえて、「アメリカに何とお願いしようか?」などと相談するのだろう、としか答えられない。
もちろんアメリカは具体的な「実力行使手段」を含めて「検討」しているだろうが、わが国の現状はそこまではいっていまい。
「O時O分、4発目を発射しました」「×時×分、5発目を発射しました」と、担当官は次々に要人たちに「報告する」だろうが、トップが決められることは何もない。「そうか」と答えて官房長官が記者会見するのが関の山。
ペルーの日本大使館人質事件でも、外務省内に「情報収集所」を開設し、「情報を収集した」そうだが、実質的な手段は何も取れなかった。記憶に新しいのは、時の首相が自らK屋のアンパンを抱えて情報収集所を「慰問」したことくらいだろう。
6カ国会議は不成功、拉致問題の「シナリオ」は見透かされてこれまた不成功、金づるは米国に押さえられて身動き取れない。北朝鮮は万事休している、と私は見ている。
頼りの中国の動きも芳しくない。それどころか、中国内には北朝鮮をさげすんでいる兆候が見え隠れしている。
昨日の新聞に、北朝鮮は、中国からの援助物資を運んだ「貨車」までも没収して、貨車ごとの援助だと理解しているようだ、と報じられていた。案外、体制内でも何らかの「変化」が起きているのではないか?
キチガイに刃物」ならぬ、「・・・にミサイル」とはこのことをいう。
わが国では、国内の犯罪に対しても、事前に抑えることが出来ず、犯罪が起きてからでないと対応できないから、現場の警官たちは切歯扼腕しているが、自衛隊にも共通点がある。しかし、これが長年惰眠をむさぼってきた「平和国家」日本の実態である。
国際紛争に関しても、実際に「占領されて」始めて「抗議]する有様。竹島も、わがEEZ内で、韓国側が「調査」を開始したらしいが、わが海上保安庁は「無線で抗議」しただけだという。やがて、尖閣列島も、「無線で抗議」する事態になるだろう。

大昔、私の著書に書いたことだが、時の通産省キャリア幹部3人と、現役幹部自衛官10人ほどで、「私的」討論をしたことがある。そのとき、彼らは「脅威の実態」について、総合安全保障の観点から、「食料や油を確保する努力が総合安全保障なのであって、軍事力では平和は築けない」と平気で言ったから、私は「食料や油をいくら確保しても、軍事力がなければ守れない。逆に、軍事力さえあれば、食料や油がなくとも、隣国を脅かして『奪い取る』ことが出来るのだ」と言い返したのだが、とうとう現実のものになってしまった。
北朝鮮がこれから何発ミサイルを発射するか見ものだが、「陸地に着弾して、国民に被害が出たら」、政府は一体どうするつもりだろう?正確な死者の数でも「情報収集するつもり」なのだろうか?
私は、世田谷から「脱出」して山奥に移ったから心配ない?が、都心中央部にお住みになる方々は気が気じゃなかろう。それとも北のミサイルがそこまで正確に飛ぶとは思っていないから、高みの見物なのかもしれないが。
困った「軍事的弱小国家」に成り下がったものである。