軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中国の“焦り”

今週中に25枚の原稿を書かねばならず、ブログを数日「サボった」が、ようやく素稿を書き上げた。現役時代に体験した「F−1戦闘機」の思い出話を雑誌社から依頼されたのだが、「空飛ぶダンプ」と呼ばれたファントム戦闘機から、国産で推力不足気味の「華奢な」F−1戦闘機に乗ったため苦労が多く、内容的にはいささか「不満」が先行することになった。しかし、乗った者でないとその苦労はわからないことだろう。
読者に理解していただくために表現に苦労したが、近々「航空ファン」誌が出している別冊の「F−1特集号」に掲載される予定である。
そんなことで、久しぶりにブログをあけたが、いつものことながら熱心なコメントが多く、目を通すだけで時間がかかる。

ところで最近も、中国は尖閣諸島周辺のEEZ内で、通知することなく調査活動をしているらしい。安倍官房長官が「厳しく対応する」と言っていたが、当然である。

最近の中国国内では、共産党幹部の「汚職・腐敗」が目立ち、胡錦濤主席は相当苦労しているようだが、ついに現役の王守業海軍副司令官(62)に「断」が下ったらしい。中国では、地方官僚のみならず、ついに高級士官までが汚職まみれのようだが、これは江沢民政権時代の名残だと思われる。
王中将は62歳と言うから、ちょうど文化大革命時代が20代の多感な時期だったわけで、混乱した時代の影響を受けている世代である。
かわいそうに「不適切な関係」にあった女性から密告されたらしく、1997年から2001年にかけて1億6000万元(約23億円)の収賄や公金流用、5人の愛人を持つなど「不正を働いた」と言うものらしいが、軍事法廷は「死刑(執行猶予つき?)」を宣告する公算が高いと言う。
上海でも、北京でも、まじめ?な研究者たちにとっては、高級幹部たちの目に余る汚職が恨みの種で、よく不平不満を聞いたものだが、今回は海軍首脳だからいささか気になるところである。
岡崎研究所と上海国際問題研究所が、毎年定期的に「研究会」を開いていることはすでに書いたが、昨年は11月に北京と上海で「侃侃諤諤」の討論を実施した。
毎年年末に行うのを通例にしているのだが、今年はやけに早く、今月10日に急遽日本で開かれることになった。
今回は私は特に意見は発表しないが、コメントと司会は勤めることになっている。
何でそんなに急に日程を早めるの?・・・とたずねるだけ「野暮」で、中国は9月の日本の自民党総裁選で、「反中派?」の首相が誕生することを恐れており、その対策に追われているのだ、と私は勝手に思っている。そんな「毅然とした首相が」日本に誕生したら、日本にとっては良いことだが、彼らにとっては今後やりにくくなるだろうから、大いに困るのである。2001年の北京での会議で、私は「江沢民主席」の訪日が「失敗だった理由」を聞かれたことがある。今回も、日本研究者たちには、何とかして失敗することなく、「阻止」しなければならない使命?が課せられているのだろう。

おまけに先日訪米した小泉首相は、ブッシュ大統領から「最大級の歓待」を受け、「プレスリーの物まね?」で返礼するなど、両者間にはほとんどわだかまりがないことが世界中に知れ渡った。それに比べて先に訪中した胡錦濤氏に対する米国の対応は、いささか?冷たかった。これじゃ「アジアの大国」として面子が立たないから、日本と米国間に「楔」を打ち込み、仲を裂こうと躍起になるのも無理はない。
そして出来れば「米国に抵抗する首相」を日本人に選出させ、中国こそがアジアで唯一の「大国」であることを米国民に思い知らせたいに違いない。ブッシュ大統領後の米国政府を意識していることも間違いない。
そんな中、親中派で名高かった橋本首相は、王中将に似て一億円をもらった?らしいが、罪を咎められる事もなく、「死刑になることもなく」、先日死去してしまった。
早速民主党代表を呼びつけてはみたが、そううまくことが運ぶとは思われない。
そんなこんなで、中国にとっての「日中関係」にも、いい話がこのところあまりない。国内では前述したとおり、役人はもとより、軍の高官までがあの有様である。
2年後に迫ったオリンピックで、北京市内は「建設ラッシュ」、有名なフートン地区も一斉撤去が始まっていて、住民との間で「立ち退き問題」でゆれているという。
結局「オリンピック」は、中国人の「貧富の差」をいっそう拡大しただけではなかったのか?と言う結末になったら、人民のための共産党政府としてはひとたまりもなかろう。落とし所をどうするか?胡錦濤主席はじめ、政府首脳陣には頭が痛いことだろう。
それで、国民から目をそらそうと、尖閣周辺に手を出してきた?とは思わないが、中国政府に優しかった橋本首相はもういない。尖閣問題でも、今度は日本側から毅然とした対応を受けて、調査活動が尻切れトンボに終われば、いっそう苦しくなるに違いない。日本政府にはぜひとも「断固」たる抗議をしてもらいたいものだが、とにかく10日の会議が楽しみである。