軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

テポドンの波紋

コメント欄では、熱心な「協議?」が続いていて、教えられることが多い。それほど関心が高かった証拠であろう。
私は5日の夜に、チャンネル桜の「防人の道」で、井上キャスターと「防衛漫談」を予定していたのだが、北朝鮮がミサイルを発射したので、急遽その話題に集中することになった。
夕刊に報じられた「ねた」が材料に過ぎなかったが、普段からあの国のやり方は推察できるので、まさに「放談」であったが、ついに7発目を発射したと言う。各界でも「目的」が分からず右往左往している感があるが、騒げば喜ぶのがあの国のやり方であるから、冷静に突き放してみるべきであろう。米国は「怒り心頭」に発しているくせに、建国記念日と大統領の誕生日が重なっていたこともあり、冷たくあしらっている。しかし、その裏では厳然と「対処」しているのである。第7艦隊のキティホークはじめ、かなりの艦船が日本海に展開して、いつでも「対処」出来るようになっているし、横田にもコブラボールが展開してきている。もちろん自衛隊も厳戒態勢にある。
北朝鮮は第8発目を準備しているそうだが、液体燃料を注入してしまったら、発射するか「廃棄」する以外に手はないので、その後が見ものである。金さんはとうとう最後の切り札を切ってしまったようだが、吉と出るか凶と出るか・・・

6日は早速テレビ局から解説してほしいと依頼があって都心に出かけたのだが、要点は「アメリカを狙っていると言うのに、着弾地点がロシアに近いのはなぜか」と言うものであったから、私の「得意とする」メルカトル地図と、ポーラ地図を解説、ディレクターは地球儀を用意してくれたから、非常によく理解できた様に思った。
ロシアの反応がいまいちなのは「暗黙の了解」があったからか、全くの奇襲だったのかだが、後者のほうが公算が高いだろう。いかにロシアの対空警戒網が弱体であるか、大韓航空機撃墜事件を例に挙げるまでもない。あの時も「専門的観点」から見ると、実にお粗末な対応振りであったし、樺太を2度訪問した私は、いかにこの国の軍事態勢が「崩壊しつつあるか」を十分認識したのである。どうもこの国は「張子の熊」に落ちぶれたようだ。これから国連安保理でのロシアの対応振りが面白いだろう。今回、最も困ったのは中国だったろう。
知らされていなかったのならば、あれほど胡錦濤主席が率先して、金さんを国内旅行して差し上げたのにこのやり方は何だ!・・・と言う反発は起きるだろうし、知らされていたとすれば「金さんは中国の忠告など意に介していない証拠である。つまり、6者協議議長国でありながら、北の暴走を抑止するほどの実力が中国にないこと」を6者協議参加各国ならずとも、世界に認知させたことになるからである。それを見抜いていた米国の「深慮遠謀だ」と私は考えているのだが、8発目を撃ったら中国はどうするだろう。勿論アメリカは北朝鮮を無視するだろう。
いらだつ金さんはどうするか?良い幕僚いたちにも恵まれていないようだから、結果が楽しみである。

ところで今回の事案を受けて、もっとも問題なのは日本国の対応である。「運も実力のうち」とはよく言ったもので、小泉首相は、国会を延長することなく、予定通り米国に行き、ブッシュ大統領の手厚い歓迎を受けた。
その一連の動きが終わった後に起きたのだから、8年前のようなお粗末な対応振りでなかったのが国民に好感を持って受け止められたのは一歩前進であったと思う。それにしても小沢さんと福田さんは「よほどツイテいない」ようだ。すべての「パフォーマンス」が吹き飛んでしまった・・・
夕方のテレビで、取材されたどの部分がどのようなニュアンスで放映されたのかは確認していないが、そのころ私は別の勉強会に出席していた。
「中国の核が世界を制す」と言う著書(PHP)で今人気?上昇中の、伊藤貫氏の話を聞いていたのである。伊藤氏は
在米期間が長いので、米国国内事情とでもいうべき、密度の濃い内容であったが、私も基本的には「自主防衛」を完成した上での日米同盟であるべきだと思っている。米国に「おんぶに抱っこ」だと言う姿勢は不愉快だし、独立国で経済大国の名にふさわしくない。速やかに憲法を改正し、自主防衛体制を確立し、足らざるを米国との安保条約で補うべきである。これが「普通の国の姿勢」だと言う点では全く同感だが、日米・・・など、海洋国家と、中国など、大陸国家との対立図式は誤りで、結果がそうだからとは単純にいえない。日英同盟を高く評価する向きがあるが、アングロサクソンの狡猾さを忘れてはならない、と言う点には、少々違和感を覚えた。
もちろん、昨日の敵は今日の友・・・であることは認識しているが、伊藤氏によって「よく言われていない」親米派は、ここ半世紀先の展開を予想すれば、米国との協調路線を進むことがわが国にとっての「国益にかなっている」と言う点で、米国との強調を評価しているのだ、と私は理解している。そういう点では結論は同じだと思うのだが。
わが国の核武装が必要かどうかについては、大いに世論を喚起して侃々諤諤の世論喚起をする必要があるが、個人的には「慎重であるべきだ」と思っている。理由は簡単、原子力推進の潜水艦さえ持たずにSLBMでもあるまいし、第一、核の発射キーをもった人が誰になるかによって、こっちの方がハラハラするからである!
しかも「核は持ってはいるが使わない」などと統一見解を出さないとも限らないし・・・。声高に叫ぶのは自由だが、足元を現実的に分析することと平行して行動すべきだと私は思うからである。

まあ、この問題は次回に譲ることにするが、北のミサイル発射事例を「好機」と捉えて、国家安全保障体制の確立に突き進んでもらいたいと、有終の美を飾るであろう小泉首相に熱望する次第である。