軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

北朝鮮は孤立した!

国連決議は、理事国全員が「とにかく」ひとつの結論を導き出した。常任理事国が一致して「同一票」を投ずることは滅多になく、その存在意義が問われていたのに、今回の「結果」は、非常に興味深い。
各国の「国益・戦略・思惑」「日本外交の成果」などについて、識者たちが色々な意見を述べているが、「北朝鮮が孤立」したことは間違いなかろう。
最大の保護者たる中国の思惑は、金正日政権は「癪に障る」が、さりとて「かっての友軍?」は切り捨てられない。とにかくこの政権が倒れた後、鴨緑江まで資本主義化することは絶対に避けなければならない。韓国まで、中国の「属国化」するのが上策だが、今のところ極めて不安定である。少なくとも、北朝鮮が暴発した結果、この国が「消滅」して、朝鮮半島が「逆統一?」されることだけは防ぎたい。
そうなると、今回の安保理では、北の「味方」をすれば、逆に中国が世界から孤立し、経済活動を含めて先行き不安定になる。だからと言って北を切れば「社会主義国の盟主」を自認する中国の面子は丸つぶれになる。失うものがあまりに大きい。第一、北が「ミサイルを発射した」ことを咎めれば、今後台湾に向けた700基の中国のミサイルの威力は失われるし、次は中国が台湾を脅かせなくなる。それだけは防ぎたい。しかも、言う事を聞かぬ相手に「ミサイルをぶっ放して威嚇した元祖」は実に中国自身である。これまた痛し痒しである。
何とかかんとか「武外務次官」を送り込んで説得してみたが、これまた「駄々っ子」には通じず、大国・中国の外交力が「皆無」であることをさらけ出した。これじゃ今後の6者協議開催国としての成果が、全く期待されず、米国と「覇権を争う」ほどの大国らしくない。今頃、「議長国を引き受けさせられた」ことが、米国のしたたかな戦略であったことに気がついたが、時すでに遅い。いかに「名誉挽回するか?」
日米の決議案に「内心同意?」ではあっても、ここで日本外交に点数を稼がせることは絶対に出来ない。「靖国問題」でも行き詰った。これじゃ「アジアの大国」の名が廃る。
ロシアもまたサンクトぺテルブルグ・サミット開催国として、「拒否権発動後」では示しがつかない。そこで中・露が相談して、双方の面子維持のための落としどころが、ああいう結果になったのだろう。
日本外交は、久々に米国と組んでそれなりの成果を挙げたと私は思う。問題は今後である。北朝鮮は「最後の切り札」を使ってしまったように思われる。
ある評論家が、テレビで次は「核実験だ」と言っていたが、それはあるまい。万一、それを実行すれば、一番脅威を感じるのが「中・露」だからである。

中国が、6者協議の議長国に就任?した時、たまたま上海での会議に参加していた私は「お祝い」を述べるとともに、「貴国がアジアの大国であることを証明する絶好の機会を与えられたのであるから、是非とも成果を挙げてほしい」と、発言すると「相手が相手ですからなかなか難しい問題です」と言う答えが返ってきた。そこで私は次のような「助言」をした。

「北の核開発を停止させることが出来れば、貴国は世界的平和に貢献したとして、世界中から感謝され、尊敬され、アジアの大国として北京オリンピックは盛大に実施されるだろう。
その上、日本と韓国の最大の懸案である「拉致被害者」を全員無事に帰国させ、この問題を「平和裏に」解決したら、日本からは「最大級の賛辞」と「ODA」が届けられるであろう。
それが出来なかったら、貴国は「張子の虎」であったことを世界に証明することになろう。絶好のチャンスだから、健闘を期待する。」
研究者の皆さんは、苦笑いをしていて、一人は「先生、それは難しいですよ」と言ったから、「歴史に学びなさい。918(満州事変・張作林爆殺事件)があるではないか。それが一番貴国が望む形での解決じゃないか」と言うと大笑いになった。
確かに「悪い冗談」ではあったが、奇妙なことにその数ヵ月後に、「列車」通過後の国境の駅で大爆発事件があったと報じられた。
半年後の会議で、「あの事件は惜しかったなあ」と言うと、研究者たちは大慌てで、笑いながらも「冗談じゃありません」と打ち消した。
もちろん「悪い冗談」だが、それから数年、北朝鮮は沈黙状態だったものの、今回世界からの中止勧告を無視して、テポドンー2の実験をした。
次に核開発実験をしたら、確実に「核兵器」を保有したことを意味する。そうなったら、「国連決議」の効力なんぞ、全く無意味になろう。米国は、自国が狙われる危険を排除するために、「先制攻撃」の火蓋を切るかもしれない。米国は、時機を失すれば、イランと北朝鮮の両面作戦をする余裕はあるまいからである。事前に「芽を摘み取る」決心をするだろう。
そのような事態が起きたときの一番の関係国は、この日本であることを国民は決して忘れてはなるまい。核爆発を含む、最悪の事態の「最大の被害国」であるのはもとより、百数十人といわれる「拉致被害者」を救出しないまま、30年間も放置してきて、彼らはいまだに祖国の救出を待っているのである。
イスラエルを見るが良い。兵士が「拉致」されたら、戦争をも辞せずに攻撃に踏み切った。サッカーワールドカップでも、フランスのジダン選手は、イタリアの選手から、母親と姉に対する「差別用語」を受けて、猛然と「反撃」したではないか。
北がミサイル実験に失敗している間に、何らかの手を打たねばならないのは自明である。その決意・戦略は出来ているのだろうか?防衛庁長官が、「先制攻撃論」を吐いたとかで、韓国と中国は「過剰な反応」をしているようだが、彼らは、本当はおとなしい日本人が「目覚めること」が怖いのである。
国連決議は、極端に言うと役人好みの「ペーパー」に過ぎない。生身の人間の「地球より重い命」ががかかわっていることを政府には忘れてほしくない。

昨日は、砂防会館別館で行われた、「北朝鮮に怒りの声を!!・国民大行進」の前座の討論会に出席してきた。
国民の生命財産と国家主権を「守る使命」を帯びて34年間戦闘機乗り人生を続けてきた私としては、その使命が果たせなかったことへの「自衛官」としての屈辱感がある。
何よりも、親族を不法に奪われても、国家がその使命をなんら果たさず、そんな悲劇的人生を送らされてきた国民からも、税金だけを徴収してきたことへの怒りが収まらない。今回の事案を受けて、国民は心底怒りを感じている。このパワーを見誤ったら、政治家としての資格はない、と思ってほしいものである。
今こそ、日本国民が一致して問題解決に当たらねばならない「天王山」だと思う。