軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

あきれた情報漏えい事件

 今朝の産経新聞トップに、大きく「イージスシステム漏洩」「警察当局、立件を視野」と出ていたが、実に情けない。海上自衛隊はこのところ“たるんでいる”としか思えない。未だにインド洋上では、350人の海自隊員と護衛艦給油艦が国際協力活動を通じて国のために体を張っているというのに、その仲間の2曹の保全意識欠如にはあきれてものが言えない。海上自衛隊は、潜水艦内での大麻所持事件、上海への無断渡航で、ハニートラップに引っかかっていた隊員、潜水艦衝突事件・・・と、このところ実に低次元な問題で国民の信頼を失っているように感じる。
 日米間が“アジア周辺国”の離間工作によって、ギクシャクしているさなか、実に不愉快である。
 今回の「イージスシステム情報」は、中国海軍にとっては喉から手が出るほど欲しい情報であって、将来の対米戦略はもとより、近々控えている台湾との紛争、尖閣列島問題で有利な地位を確保するための、重要工作の一環である。
 今回の事件は“同盟国”米国にとっても、不愉快極まりない事件であったろう。このような情報漏洩が続けば、日米軍事関係にもヒビが入るのは当然だが、今まさに航空自衛隊が取り組んでいるF-X選定作業にも影響が出ることは必至である。
 今中国空軍が懸命になっているのは、空軍力と海軍力の戦力向上であり、空軍はSU-27,30の配備と、C−10の配備を急ぎ台湾空軍を圧倒しようと懸命である。海軍も空母建造を急ピッチで進めていて、艦載機50機をロシアに既に発注している。そんな我が国周辺のミリタリーバランスの変化をかろうじて抑止しているのが、日米海・空軍の近代システムであって、その機密情報が相手に抜けたとなるとバランスは崩れてしまう。
 F−Xの有力候補機であるF−22Aは機体全体が「ステルス設計」という機密機だから、今までのように「機密機器」を「ブラックボックス」とするか、はずして「ドンガラ」だけを売ることが出来ないものである。米国防総省は、この機体を日本に売った時に、どのようにして対露、対中に機密が守れるか、について、秘密保護法も無い日本の現状を分析しスタディ中だが、この機体を整備、管理することになるであろうメーカー内に、共産党の組織が厳然と控えていて、過去、航空自衛隊のF−15、F−4戦闘機の定期整備で、明らかに「サボタージュ」と推定できる電纜切断事件が起きたことを重視しているという。

 2等海曹にまでなってその程度の「情報意識」「保全意識」も無いのが情けない。海自の幹部は、隊員達にどのような「保全教育」をしているのか?
 
 この際、防衛省にも言っておきたい。自衛隊員の採用時の「身分」に関しては、かなり厳しい条件が適用されていて、保全上の配慮が加えられているはずである。訓令には、少なくとも「2等陸、海、空士の応募資格を有するものは、日本国籍を有する男子」と定められている。勿論結婚は「両性の合意」に基づくものだから、夫人(あるいは夫)が外国人であっても、退役させるという強権発動は出来ないことはわかる。しかし、今の日本国で、これ以上の「強大な武力組織」は無い。つまり「最新式の武器を自由に扱える個人」が、自衛隊という組織を構成しているということを忘れてはなるまい。その意味で、この2曹夫人が“中国人”であったということは、まさに対日工作が海上自衛隊内部で急速に進行している証と受け取られる。既に国内の「外国人登録者数」は「南北朝鮮半島」約60万人、「中国」約52万人など、総計201万人を超え、これ以外に不法滞在者が約20万人いるという。万一の際に24万人の自衛隊で対処可能だろうか?
 防衛省には、このような点も含めて「盲点」を速やかに解決して欲しいと思う。

 神奈川県警は、この「中国人妻の“奇行”に関心」を寄せているというが、今回の事件発覚の発端になったその“奇行”というのが、「中国籍の妻(33)の入管難民法違反事件」であり、「妻は自ら入国管理当局に出頭し、強制退去を求めた」というものであった。つまり、「米国が同盟国のうちごく一部だけに供与しているイージスの“心臓部”とも言える」情報を手にした彼女は、ぬけぬけと、強制送還という「旅費のかからない方法」で国外に脱出し、次はこの情報を国内で高く売りつける?魂胆だったのだろうか?いや、かってこの国の最高指揮官自らが、その手に引っかかったように、彼女は紛れも無く“工作員”だった可能性が高い。
 あのときの最高指揮官は単なる好色な「政治家」だったが、自衛官は、彼とは違って軍事情報に直接関与する「責任者」であることを忘れてはならない。それにしても今回は、本人も組織もあまりにも自覚がなさ過ぎる!
 公安当局によると彼女はこれまでに「少なくとも2回、不正入国している」という。我々の現役時代とは打って変わって「個人情報保護」だとか、「プライバシー保護」だとか、「われ関せず関係法」が制定され、確かに部下統率がやりにくくなっていることは認めるが、だからといって武器を持つ集団としては、外国人妻に対する“配慮不足”で、同盟関係はおろか、自国民を裏切ってならないことは自明であろう。
 真相は、今後の県警の捜査に待つほか無いが、軍事組織であるはずの海自の内部組織の「保全意識」が欠如しているのは明白であり、これは国民に対する裏切り行為である。防大出の一OBとして「海上幕僚長以下、頭を丸めて出直せ!」と叱責しておく。