軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

前哨戦は始まっている!

 産経新聞1面の「北京五輪・聖火、台湾も巡回」という記事には、「台湾、受け入れ拒否」と続けて出ている。3面に「ベトナムホーチミン―台湾―香港―マカオ―中国大陸に抜ける聖火リレーのルートは中国が名を捨てて実を取った結果だ」そうだが、「台湾側はこれを拒否し、五輪本番で胡錦濤政権の唱える『和諧(調和)』を世界にアピールする狙いに狂いが生じた」という。
「特殊な国と国の関係」にある台湾としては、中国の「一部」であるかのようなこのコースが承服できる筈がない。「儀礼だから、友好第一だから」とて、温家宝首相の「厳命」に無批判にスタンディングオベーションして、熱烈歓迎の意を表して恥じない、どこかの国会議員とは、その精神構造は全く違うのである。
「中国側が譲歩した聖火リレーのルートを台湾側が拒否したことで、中国側の思惑は大きく揺らぎ、戦略の練り直しを迫られそうだ」と産経は締めくくったが、オリンピックを「平和の祭典」だと勘違いしている日本人には理解できまい。
 他方、7面下の国際情報欄には中国外務省の劉報道官が「チベット自治区で米国人4人を拘束して取り調べ、処理を進めていること」を認め、「いかなる外国公民も中国を訪れた場合、中国の法律を遵守する責任と義務があり、国家の主権や領土統一に危害を与える行動を取ってはいけない」と批判したと言う。
 AFPによると「米国籍の亡命チベット人を含む3人は世界最高峰チョモランマ(エベレスト)のベースキャンプで、『一つの世界、一つの夢、自由チベット2008』という北京五輪のスローガンをもじった横断幕を掲げた」というのだが、そんな程度の「抗議活動」は中国はじめ、共産主義国家以外の国では日常茶飯の瑣末な出来事に過ぎない。現に我が国では、日本人を殺害したり拉致すると言う明らかな違法行為をした朝鮮総連を捜査しようとした警察官に向かって、周到に準備された「プラカード」を掲げた在日朝鮮人約120人が、警察の捜査活動を妨害したが、全員を『拘束』して取り調べるような『非人道的措置』はとってはいない。 しかも日本国には、殺人や拉致を指示したと思われる朝鮮総連の幹部が“記者会見”までして、自分の立場を公表する自由まである。中国だったらどうだろう?しかも笑わせることに「日本政府は、30年も前のことを今頃取り上げて我々を取り締まる・・・」などと愚痴を言ったが、冗談じゃない。自分達とその“同胞達”は「6〜70年前の“従軍慰安婦”や、更に以前の日本統治時代を問題にして声高に批判」しているではないか!厚顔無恥、「ああいえばジョウユウ」とはこのことを言う。
 彼らは、自分達が快適な生活?をおくっている日本国で、日本人が“やさしいこと”をいいことに、凶悪犯罪を含むやりたい放題ではないか。そんな彼らが我が国を激しく批判しているのだが、日本人は「不快感」は持っているものの、「日本国の法律を遵守する責任と義務があり、国家の主権や“治安”に危害を加える行動を取ってはいけない」として、彼らを一斉に拘束するような“非人道的行為”はしない。この点が中国と決定的に異なった「国家体制」であることの証明だが、これについて是非とも報道官のコメントを伺いたいものである。
 それに何より、チョモランマのベースキャンプは、チベットとネパール国境に近いはずであって、そんな僻地で外国人たちが横断幕を掲げただけで「拘束され“処理を進め”られること」自体、全く理解に苦しむ。
 誰も気にしない、目にもつかないだろう高地での、たかが4人くらいの抵抗活動に、大国・中国外務省が「ぴりぴり」していることのほうが、よほどニュース性に富んでいるから、このニュースが世界中に流れたことで、逆に4人の活動は目的を達することになった。おおらかにやらせておけばよかったのに・・・
「台湾独立」と「チベット独立」活動、加えるに「五輪妨害」活動は、現政権のアキレス腱であることが世界中に知られることになった。
その上、外国だけでなく、身内からの「妨害活動」も相当あるようだから、2008年危機の前哨戦は既に始まっているのである。