軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

盧前韓国大統領の自殺と半島情勢

 昨日、横浜で講演して帰宅途中に、電車内の乗客の新聞見出しでこのニュースを知った。感想は「やはりそうか・・・」であったが、この国の歴代大統領の末路は実に異常である。彼も「北朝鮮」と「親北グループ」に利用され、担がれて大統領になったのだろうが、「キジも鳴かずば撃たれなかった」であろうにと哀れに思った。


 終戦で日本から「解放」されたこの国は、45年10月に長らく米国で暮らしていて、当時既に70歳であった李承晩が帰国する。アメリカの意を受けて反共統一を掲げた彼は、1948年8月13日にアメリカの後押しで大韓民国が建国されるや初代大統領に就任した。三選を禁止した憲法を無視して三選されたが、1960年に四選を狙って大統領選挙に出馬、野党の大統領候補・趙炳玉がアメリカで病気療養が長引いている(同年2月に客死)ことを見計らって李承晩は選挙期間を早めたりしている。1960年3月15日、大統領李承晩、副大統領李起鵬が当選すると、国内で猛反発が起き、即座に不正選挙を糾弾するデモへと発展して市民も参加する。
 そこで李承晩は「デモは共産党主義者の扇動」と発砲させ、8人死亡50人以上が怪我する惨事になった。抗議デモは韓国中に飛び火し、4月18日には高麗大学とソウル市立大学の学生が国会前で座り込み、翌4月19日にはソウルで数万人規模のデモが行われた。各主要都市でも学生と警察隊が衝突し186人の死者を出した「4・19学生革命」事件も起きる。ここに来て米国大使が李承晩に事実上の最後通牒を突きつけ、頼みの綱だったアメリカにまで見放された彼は、「行政責任者の地位を去り、元首の地位だけにとどまる」と完全に地位から退くことを否定する発言をしたため、民衆の怒りは最高潮に達する。
「李承晩退陣」を要求する抗議デモにソウル市民が立ち上がり、韓国全土に一気に退陣要求の声が広がったため、ついに彼は大統領職を辞任し、5月29日にフランチェスカ夫人を引き連れハワイに亡命、その後90年の生涯に幕を閉じた。この時副大統領の李起鵬は一家心中している。李承晩は「反共」であるとともに「反日」でもあったから、李承晩ラインを引いて日本に報復し、勝手に竹島を取り込んだ。

 第4代大統領は尹潽善で約1年半勤め、第5〜9代を朴正熙、第10代を崔圭夏が8か月つなぎ、第11〜12代に全斗煥、第13代が盧泰愚、第14代が金泳三、第15代が金大中、そしてその後を継いだのが盧武鉉氏であった。


 今朝の産経に歴代大統領と出来事が一覧表になっているが、亡命した李承晩、暗殺された朴正熙、反乱罪で逮捕され無期懲役刑の全斗煥収賄容疑で逮捕、懲役17年の盧泰愚、不正融資で次男が逮捕された金泳三、次男らが斡旋収賄容疑で逮捕された金大中大統領と、それぞれ「華々しい過去」に輝いている。

 平成12年8月に、日韓安保対話で韓国を訪問したとき、直前の6月に行われた金正日金大中会談の目的を聞いたら、「大統領のノーベル賞狙いですよ」という素っ気無い答えが返ってきたので面食らったものだが、大統領降任後、歴代逮捕されているのだから、金大中氏は国際的な保護を求めたのだと後で悟った。アノ国らしい出来事だが、それにしても“アジアらしい?”と思ったのか、CNNもBBCも関心を持って放映している。

 北朝鮮の指導者も戦後ソ連主導で帰国して首領様になった。そしていまや2代目だが、そろそろ3代目との噂もある。指導者に恵まれない韓国と北朝鮮の国民がお気の毒だが、「それは日本が大東亜戦争に負けたからだ!」といわれそうなのでこれ以上追求しないことにする。

「SAPIO」から
 日本の政治家もあまり褒められてものではないが、それにしても特定アジア諸国の指導者の末路はお気の毒である。「縁故主義」の結果であり、「法よりも人情」の社会だからだと産経は書いているが、民族性の問題だろう。
こんな国々を相手にする外交官は疲れるだろうな、とお気の毒に思った次第。


 ところで、23日の産経新聞一面下に気になる記事が出ていた。「北、ミサイル発射も」という記事によると、北朝鮮が「沿岸海域航行警報」を出したそうだが、「海保によると、航行警報が出されているのは、北朝鮮金策沖約130キロの海域」だとある。「金策」といえば、朝鮮戦争時代に勇名をはせた将軍の名前で、その名を取った町である。
 平成11年3月に能登半島沖に出現した「不審船」を海自が“追い払った”事案があったが、その後の9月4日に、日本海に「金策」と船尾に書かれた不審船が現れた。海自P-3Cがこれを撮影して写真が防衛庁からインターネットで公開されたが、「金策」号のなぞめいた動きをめぐって憶測が飛んだものである。
 そして平成14年9月17日の日朝首脳会談へと続き、金総書記が「拉致」を認めたのだが、今回は「人工衛星発射」事案直後の金策沖の「警報」である。総書記の健康状態も不安定と言われ、後継者問題が浮上している。そんな最中、何かのシグナルでは?と考えると、“事実は小説より奇なり”を地で行きそう。分析は「SAPIO」編集部にお任せしよう!

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