1日の産経抄子は、「坂の上の雲」をひきつつ「無料の学校」の意義について書いている。
「明治維新で没落して貧窮にあえぐ氏族の家に生まれた少年は、小学校にも中学校にも通えなかった。『学問をしたい』と念じながら、銭湯の風呂焚きをしていた16歳の頃、耳寄りなうわさを聞く。『大阪に無料の学校が出来た』」という書き出しである。
「主人公の秋山好古は、大阪の師範学校を経て、東京の陸軍士官学校に入る。好古を頼って上京した弟の真之は海軍兵学校に進んだ。いずれの学校も『無料』でなかったら、秋山兄弟の日露戦争での活躍はありえなかった」
更に産経抄子は「今でも、防衛大学校などがあるものの、そうした戦前の学校をモデルにした、授業料一切無料の国公立学校(高校・大学・大学院)を設立してはどうか」と提案しているが全く同感である。
民主党は大衆に阿ねて『児童手当優先』のようだが、おそらく成果は上がらないだろう。親が使ってしまうに違いないからである。それよりも、産経抄子が提案したような『無料の国立学校』を建てるべきである。
「将来の日本を託するに足る気概と能力がありながら、機会に恵まれない若者を選別して、集中的に投資する国家戦略もない」と産経抄子は慨嘆し、「かっての日本には、学業優秀な貧乏学生を救う、もうひとつの手だてがあった。学費の面倒を見る地元の資産家や、『書生』として、東京の自宅に引き取って、学校に通わせてくれる政治家や財界人の存在だ」と書いた。
鳩山首相の87歳になる母親は、息子に10億円を超える「貸付」をして政権を支えているようだが、ご自分も九州の大資産家で何不自由なく育った方だから、産経抄子のような感覚はお持ちにならないらしい。
韓国経済発展の祖「国父」といわれている朴大統領も、日本人の先生に才能を認められ、陸軍士官学校に通って大成している。異論はあるだろうが、中国国民党の蒋介石総統も、戦前来日して、陸軍士官学校の教育を受け(22期相当)約一年間新潟・高田連隊で隊付き教育を体験しているが、これがその後の蒋介石の人生に多大の影響を与えたことは、産経新聞が昭和49年に連載した「蒋介石秘録(その後単行本になった)」に詳しい。明治維新後の近代化に取り組みつつあった日本は、教育を最重要視していた。大東亜戦争には敗れたりといえども、今もその遺産で食っているようなものである。
ところが現代日本の『大学』の実情は、巨大化した施設の維持と経営が最優先で、学生の人格陶冶や教育よりも収益に重点が置かれているように感じられる。
豊かな社会に育った学生自身も、入学試験に通りさえすれば後は『お遊び』、学内でやっていることは一部を除いてほとんど『おままごと』状態。能力も気概もある青年達さえも、ふやけたキャンバス生活に飼いならされて、京都教育大学でおきたような淫らな交わりを起こして恥じない有様である。
理工学、経済学系の主力は、いまや「外国人留学生」に占拠され、時代の最先端を行く研究はどんどん流出しているから、日本の科学力が急降下するのも時間の問題である。人的資源の確保と育成こそが、21世紀の国家戦略を支える指標になるだろうに、今の政権もその科学力を落としめんとして躍起の様に見える。
尤も、顧みれば、1967年から1977年までお隣の中国で起きた『文化大革命』の影響で、わが国でも1968年の東大、1969年の京大等、学園紛争が盛んな時期があった。この頃学生であった方々は、勉強しようにも全く教えられないで卒業証書だけを戴いた方々が多いようだから、現在丁度50歳代から60歳代半ばの一部の方々に、教育の重要性を唱える方が少ないのも道理であろう。「教えざるの罪」ならぬ『教えられざるの罪』とでも言うべきか。
明日12月3日、『桜井よし子が若者に日本の将来を語る』という講演会が九段会館で催される。「一人でも多くの若い世代の人々と情報を共有し、価値観を育み、日本の未来を明るくしていく力になりたい」という試みの第一歩である。
今の若い世代の女性たちが「歴女」と呼ばれ、日本の昔の出来事、武士の生き様に関心を示しているというが、学校では教えられない『日本の歴史』はじめ、人間としての生き様に疑問を感じ始めているのではないか?
われわれ長い人生を経過した大人たちは、これから生きていく若者達に、少しでも体験してきた『知恵』を授けるべきだろうと思う。
話は変わるが、『闇社会の守護神と呼ばれて』と云うベストセラーを書いた元検事で弁護士・田中森一氏は、長崎県平戸出身の“苦労人”であった。やり手検事から弁護士に転進し、今や“罪人”として獄につながれている波乱万丈の身だが、彼は昨日の産経抄子と同じことを考えていた。
ある日彼は私に『勉強したくても貧乏で学校にも通えない真面目な青年たちの力になりたい』といい、『一人前の寿司職人になりたい』『一流の大工になりたい』『先生になりたい』などという夢と希望を持ちながら、貧乏故に道を踏み外していく青年を救いたい、というのである。一人につき、月10万円程度の補助を彼の印税から出す構想だったが、私に『人物査定』に協力して欲しいといった。元戦闘機操縦教官だったから人物評定に期待したい、というのだが・・・。
おそらく出所してきたら、彼はそれに準じる活動を始めるのだろうが、豊かな中で育ったものには浮かばない発想だろう。その志を高く評価したい。
そうはいっても個人の活動には限界がある。国が率先して『無料の学校』を設立すべきなのだが、手っ取り早いのは、自衛官や警察官、海上保安官等の募集を倍増することであろう。『徴兵制復活』などと左派が騒ぐだろうから、名目は『団体生活研修』でも何でもいい。規律と団体生活から学ぶ上下関係、そして日本人の魂の復活を目指すこと、それを急がなければ、20年後には自信喪失した3流国が太平洋に漂うことになること間違いない。
国家再生は青少年の再教育にかかっている。鳩山家もそれに投資していれば『贈与税逃れ』と非難されることも無かっただろうに・・・、と息子可愛さのあまりに道を間違えた母の愛?が哀れに思えてくるのである。
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