軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

何が起きても不思議じゃない年・・

11日夕刻、浜松で「今年の国際情勢予測」と題して講演したが、「政治的注目点」としては、米国大統領選の行方、パナマ文書の影響。「軍事的注目点」としてはロシア・イスラエルの動きと北朝鮮核兵器小型化の動き⇒テロリストの手に渡る可能性!などについて語ったが、その結語は「いずれにせよ、今年は、天変地異はじめテロ、紛争、各種事故など何が起きてもおかしくはない『混沌としたリーダー無き世界』になる!」と結んだ。


そして14日夜、熊本地方で震度7の大地震が発生して、現在も継続している。「天変地異」が起きたのだ。

被災された方々にはお悔みの申し上げようもないが、夜間であったにもかかわらず、各種救援隊が動き出しているのは頼もしい限りだ。

今回は三大名城の誉れ高かった熊本城もついに“落城”したようで誠に残念だが、一段落したら1日も早く復興することを期待したい。


最近の主な地震を比較してみると、そこには何等かの関連があるように思えてならない。

今回の熊本は震度7マグニチュード 6・5 震源の深さは11km、1995年1月17日の阪神淡路大震災震度7マグニチュード 7・3、震源の深さは16kmに並ぶものであったが、参考までに1923年9月1日の関東大震災も、震度7マグニチュード7・9、震源の深さは15kmという同類の地震だったが、東京はほぼ壊滅状態だった。


今回は倒壊家屋も多く、山崩れ、橋梁などのインフラの被害は大きかったが、比較的人的被害が少ないのは、きっと普段から地震発生について、何らかの関心を抱いて危機感を持ってきたからだろう。


ところで、5年前の東日本大震災は、大津波を伴う悲劇的な災害だったからか、肝心な「地殻変動」については、ややなおざりにされていたのではないか?と私は気になっている。
勿論地震専門家や政府が、その対策を熱心に広報してきたせいか、それとも九州というお国柄か、はたまた戦中戦後を生き抜いてきた御老人が多かったからか?今回も被害の割に国民は比較的冷静に対処しているように見え、逆に慌てふためいているのがメディアのように感じる。


次の日本列島の震度図(インターネットから)を比較すると、地下のプレートに与える刺激は、どれもほぼ「全国規模」だったことがわかるであろう。


1、阪神淡路大震災時の震度図

1995年1月17日の阪神淡路大震災に並ぶ震度7マグニチュード 7・3、震源の深さは16kmであった。これもエネルギーが大きかったが、深度が浅かったので被害が拡大したものだろう。
この影響で、東日本沖のプレートが刺激されてひずみができ、やがて3・11で“放出”されたのではないか?


2、東日本大震災の震度図

2011年3月11日の東日本大震災震度7マグニチュード9、震源の深さは24kmという最大規模のものだった。

これから明らかなように、3・11の地殻変動は、地上で想像するほど“ヤワ”じゃなかったと思われる。
東日本大震災の巨大地震による地殻変動で、日本列島は東西に引き延ばされただけでなく、地球上の位置も一部が東へずれたことが判明し、「国内に4カ所ある電波望遠鏡のうち、つくば市では巨大地震の発生直後に約65センチ、その後2年でさらに約23センチ東へずれ、移動幅は計約88センチに上った」と報じられたのだったが、すでに昔のことになっている。
石巻地方では地盤沈下も大きく、旧北上川の堤防周辺には、いつまでも土嚢が積まれていた。
それほどこの地震のエネルギーは巨大だったのだから、プレートが大きくゆがんだとしてもおかしくはなかった。


3、日本列島下のプレート図

言うまでもなく日本列島は巨大なプレートが重なり合って、常にエネルギーがぶっつかりあう微妙な構造になっている。
東日本大震災で放出されたエネルギーで、列島の地下深くで重なり合っているプレートの構造に変化が起きていたとしてもおかしくはない。
であるとすれば、重なり合って巨大なひずみが出来たプレートの接触面に対して元に戻ろうとする応力が常に働いていると考えるべきで、そのエネルギー溜まりが何らかの刺激で“放出”されたのだろう。


次の図は、中央構造線を表すものである。

確かに地震は徐々に東北側に移動しているように見える。今回の熊本地震で、構造線が刺激されたのだとしたら、たしかに「一過性の地震」ではなくなる公算が高い。
いずれにせよ、南海トラフに起因する大型地震は既に予測されているのだから、政府はその対策を怠るべきではなかろうし、国民もそれに備える覚悟が求められる。


今回の地震について、産経はこう書いた。
≪【熊本地震】「一過性のものではない」専門家指摘 南海トラフ巨大地震につながる内陸地震続発 西日本中心にこの20年。
 震度7を記録した熊本地震について、地震研究者からは、将来発生が想定されている南海トラフ巨大地震との関連性を指摘する声があがっている。過去にも巨大津波を引き起こした東南海、南海地震の前には、内陸型の大地震が発生しており、研究者らは「今回の地震を一過性のものと考えるべきではなく、警戒が必要だ」と呼びかけている。


「今後続けて内陸地震が起きる恐れがある」
 尾池和夫・京都造形芸術大学長(地震学)は、今回の熊本地震の影響について、こう警鐘を鳴らす。尾池氏は、熊本地震震源地の付近には、複数の大規模な断層帯が確認されているほか、日向灘では過去にも頻繁に地震が起きていることから、特に九州での内陸地震の発生を警戒する。
 さらに尾池氏は、「紀伊半島や四国の北部を通る中央構造線断層帯での地震の発生にも警戒が必要だ」としており、内陸地震が続発する可能性を示唆する。
 国内では、内陸地震の後には、西日本の沖合を震源とする南海トラフ地震が100〜200年周期で発生し、津波により大勢の死者を出す-という歴史を繰り返してきた。
 南海トラフ地震となった昭和19年東南海地震、21年の南海地震の前には、鳥取地震(18年)、三河地震(20年)など1千〜3千人が犠牲となる内陸地震が発生。尾池氏が「南海地震につながる内陸地震の始まり」と位置づける明治24年濃尾地震では、約7千人が亡くなっている。
 梅田康弘・京都大名誉教授(同)も「過去の事例でも、南海トラフ地震の前には、前兆のように内陸地震が活発化している」と指摘。一方、今月1日には三重県南東沖地震が起きており、「昭和の東南海、南海地震と同じメカニズムとみられ、南海トラフでの巨大地震を誘発した可能性もあった」と主張する。
 平成7年の阪神大震災以降、内陸地震が続いており、防災科学技術研究所茨城県つくば市)研究員の高橋成実氏は「将来の地震の発生時期を示すのは困難だが、南海トラフ巨大地震が起きることは分かっている。さまざまな機会をとらえ、備える姿勢を高めるべきだ」としている≫


今回は、伊勢志摩サミットを控えている。
次は東京五輪を控えた時期に、今回と同様な形で“放出”されることを予測し、“万全”とはいかぬまでも、被害極限を図る準備を怠るべきではないと思う。レベルの低い“野盗等”の“騒音”にかかわっていては、「想定外の事態」に彼らと同様、右往左往する結果を招きかねない。

大災害時には、何時も自衛隊や警察、消防という「実力組織」が尻拭いさせられているが、少しはバッジをつけている政治家らもその責任を自覚してほしいものだ。

今夜から九州地方は悪天候が予報されている。
被災者の方々が、厳しい試練を無事に乗り越えられることを祈っている。


届いた本のPR(今回は解説省略)
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