軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中央アジアが動いている

 今朝の産経新聞によると,ウズペクで反政府活動が拡大の様相を呈しているという.
カリモク政権は,13日,東部のアンディジャンで起きた大規模な反政府活動を軍事力で鎮圧した.しかし,長期の貧困問題と,カリモク独裁体制に対する反発の封じこめは,事実上困難で,群集の反政府活動は広がる様相を呈している』そうだが,地図を見れば明らかなように,3月に反政府行動で大統領が国外に脱出した『キルギス』の隣の国の出来事である.
 そしてこのキルギスには,『反テロ』を名目にした米軍が展開しており,首都・ビシケクの北西30キロのマナス国際空港では、1日に平均15機の米空軍の大型輸送機が離発着している.
 駐留の理由は「アフガンでの反テロ作戦」だが.長期的には「中国封じこめ作戦」の一環である事は間違いないであろう.
 キルギスは中国と国境を接しているし,何よりも接している地方が中国にとっては『異教徒』であるイスラム教徒が占めるウイグル自治区である.中国にとっては不安である事は間違いない.

 他方中国は,懸案だった『台湾』との関係を良好に保つため,かっての敵『国民党』の連戦・宋蘇愈両氏を招待して,台湾海峡問題をなんとか安定させようとしている.

 そして案外見落とされているが,中国は中南米諸国に『急接近』している.
5月2日にワシントンで『国際評価戦略センター』主催の『中国の中南米への戦略的着手』というシンポジウムが開かれたが、同センターのサントリ会長によれば,「中国のここ数年の中南米諸国とのきづなの強化は,サイバー戦争の能力強化や遠洋海軍の建設,さらには大陸間弾道ミサイルの増強などと呼応しており,中国の軍事面での米国をにらんでの野望を印象付けている]という.

 米ソが対立した冷戦時代,フルシチョフキューバにIRBMをコッソリ搬入しようとして,ケネディ大統領の強固な阻止に会い,それが元で失脚した.
 中国も,米国の『封じこめ』を破ろうと懸命になっているようだが,米国の『内懐』であるキューバ中南米に,下手に手を出すと『とてつもないしっぺ返し』を食らう事を忘れてはならない.
 我国が,北朝鮮の核に気を取られている間に,米・中間の対立構造は,間違いなく『米ソ』冷戦時代に似てきているように感じるのだが、もっとも,中国が旧ソ連ほどの軍事力を保持しているとは思わない。しかし,この国は、人命を軽視した「人海戦術」という,近代国家には想像できない『非人道性』を持っている事を忘れてはなるまい.
 今後,中央アジアの動きには注目しておく必要がある.