軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

「警戒態勢」から『人命救助』へ!!

今朝の産経新聞を広げて驚いた.海上保安庁が全面見開き広告で『海上保安官の使命』について広報していたからである.一瞬海自主役の映画『幻のイージス』に対抗したのか?と思ったほどだったが,海の日を記念したものらしい.
曰く,『海上保安庁の任務は,我国の海上の安全及び治安の確保を図る事』であるが、『広大な日本の領海を見つめて業務は益々多様化する一方』である.
海上自衛隊と組織の比較図が掲げられているが,海自の4万5000人に対して保安庁は僅かに1万2000人に過ぎない.以前私はこのブログで『テロに備えよ』と題して,警察官や海上保安官の増員を提案したが,今朝の産経紙を読まれた方々は理解できたに違いない.
もっとも,テロ特措法やPKOなどで,海外に展開した,又は展開中の海自部隊も同様,文句こそ言わないが,ぎりぎりの人員で対応しているのであるが,自衛隊の方は,憲法改正国防省設置?など,今後の展開ではかなりの機構改革が期待されるからさて置くとして,平時に我国を取り巻く海の守りについている,海保の戦力はあまりにも少ない.
平成8年9月,私は当時沖縄で任務についていたが,尖閣列島の帰属を巡って台湾,香港などの活動家が押し寄せ,沖縄は『戦闘状態』が続いたものであった.
特に『保釣号』という貨物船をチャーターして尖閣に侵入した香港の活動家達が,「中国の領海で水泳する」と称して身体にロープを巻きつけて飛び込むという、マスコミ向けのパフォーマンスを決行したのは良かったが,飛び込んだ4人のうちの2人が溺れ,45歳のリーダーが死亡,他の1名が重傷で石垣市民病院に収容される事件が起きたことがあった.この時第11管区海上保安本部は、警備中であった部隊を直ちに『人命救助』に切り替える措置を取ったのだが,そこまでやるか!と言われたものである.
この時定員18人の保釣号に乗船していたのは,乗組員6人の外,運動家18人,そして何と報道関係者44人の,合計68人が乗っていたのであった.その報道陣の内40人が香港の新聞・テレビで,日本からは日本電波ニュース香港支局長の島氏が乗っていた.彼によると『運動家たちは日本の右翼団体が立てた灯台のある島に上陸する事にしていたが保安庁の船・15隻の厳しい監視を受け断念,船長は香港帰港を決めた.『突撃上陸』を期待していた報道陣にとっては『記事にならない』旅になりそうだった.抗議行動はそのさなかで起こされた」という.島氏によると『何かをやって欲しい、と言うジャーナリスト達の無言の圧力はあった.しかし,やった事は無謀だ,と現場の記者は皆わかっていた』。それなのに香港の新聞やテレビは一斉に〈日本の軍艦に囲まれた〉〈事故の責任は日本にある〉〈英雄の死を無駄にするな〉などと書きたてた』という.(朝日新聞平成8年10月3日…天声人語