軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中国漫遊記8「討議その6」

 17日、空模様は濃いスモッグで変わらない。朝食時に、人民解放軍兵士の制服を着た男と合席になったが、その食欲の旺盛なこと、皿に山盛りの「饅頭」を二皿、3回ほど料理を取りに席を立ったが、スープを音を立てて飲むのに閉口した。しかも両手で饅頭をむしりながら、口だけお椀に近づけてスープをすするのである。私の方が食欲が減退したが、オリンピックまでにマナーが「修正」出来るのか心配になった。
 会議は9時から、王女史と金田氏の司会で始まった。第4セッションの題は「東アジアにおける“地域協力”問題」である。
 金熙徳・対外関係研究室主任が「中日関係と朝鮮半島の問題」について発表した。金氏は、7〜8回訪日してシンポジウムに参加した経験があると前置きして、中米関係は冷静な関係にある。例えば例の「中国大使館爆撃事件」があったが、関係は悪化していないことを挙げ、日中双方は優越感と劣等感の関係にある。近代史の問題であって、もはや「歴史問題」ではない。日本が中国をどう見ているか。まだまだ近代化が不足していると見ているが、中国としては「大進歩」なのである。1990年と比較すると人民元は36倍の変動をした。
 高度成長比は、中国の1に対して日本は10だったが、1:3となったように進歩は目に見えている。故に人民は政権を支えている。以前は「毛」の一声だったが、今は国民世論が出来ている。日本は、このように中国が民間世論を無視できないことを知らない。
その根拠として、
(1) 民営化の進展・・・国営センターの狭小化。
(2) 生活が豊かになった・・・人民が政治、国際問題に参加した。日本問題は面白いから皆参加したがっている。
(3) 中国にはサイレントマジョリティは存在しない・・・反日デモ参加者の4万人は「僅少」なのに、日本人はショックを受けた。数千万人は反日ではない。
(4) 一人っ子世代が25歳を超えた。彼らは怖いものなしである。政府にも日本にも「反発」する。
日中関係は今や真の転換期にある。
(1) 豊かな層が反日デモをした。
(2) 南方(上海、深圳)地区がそうだが、上海人は「親日に反対」である。嫌がる。
(3) 非国営企業から参加している。
(4) 非学生、つまりサラリーマンが参加したのは始めてである。
中国に来ている「特派員」が悪い。マスコミは問題、日本の報道は真実ではない。
未だ、5〜10年はこのような状態が続くだろう。中国は日本を攻めては(攻撃しようとはして)いない。なぜならば中国は高度成長期にあるからである。日本は「政治的姿勢」を確保しようとし、中国は「経済的姿勢」を確保しようとしている。
問題発言をした劉亜州中将や朱成虎少将は主流ではない。
台湾は中国の領土である。アモイは台湾民族と同一である。
中国は、日本との戦争を望まない。
続いて阿久津氏が「朝鮮半島の現状」について分析し「米韓同盟の弱体化は、その分日米同盟の強化に繋がること、歴史問題を政治問題化しないこと」を、中韓間の高句麗問題を例に挙げて述べた。
続いて彭光謙・軍事科学院教授(陸軍少将)が、「東アジアの区域安全戦略」と題して発表した。冷戦時代は考えられなかったが、21世紀に入ってから直面した考えるべき問題であり、(1)経済の一体化、(2)共通の安全問題に直面し、共通の利益と安全のため、新体制、今までにない経済体制をアジアにおいては互いに必要としている。
例えば、中韓間も900億ドル超、中日間は1600億ドル超、互いに浸透している。経済においては切っても切れない関係にあるので、新しい安全体制が必要である。
二つのグループは存在しない(米国を意識か?)
テロや国家分裂主義・・・環境問題など、国際的犯罪などが周辺諸国に影響を及ぼしている。中国には「象が暴れだしたら周りが迷惑する」と言う諺がある。日米安保は冷戦時代の排他的なものであり、ソ連崩壊とともにW/Pが解体したように不要となっているが、逆に日米安保は強化されている。古い体制は新しい体制、間接的なもので閉鎖的なものではない、相互安全、協力安全、特定なものをさすものではなく、皆の協力を得て成り立つもの、対抗的なものではないものに変わるべきである。御互いの信頼を必要としている。
「歴史を正しく認識し、未来を新しい方向へ」互いに利益をもたらすようにし、相手に損害を与えない事が大事。安全協力では「千里の道も一歩から」という。東アジアの知恵は東アジアで解決すべきであり、東アジア人は知恵を持っていると思う。

彼の発言は「要するに日米安保」を無効化し、日米を離間させることを意識したものであることは明白であるが、十分に検討する余地がありそうである。
続いて潮氏が「東アジアの軍事協力」について、*日中首脳会談、*反日デモ、*東シナ海での権益衝突と中国の軍事行動、*新しい歴史教科書、*尖閣諸島、*ODA、*知的所有権問題、*靖国問題についてパワーポイントを使って、日本の態度は極めて「抑制的」であることを明快に発表した。
次に劉世龍・対外関係研究室副主任が、「日米関係」について「日米は北朝鮮を脅威と考えている。6者協議は良い方法である。『北の核の平和利用』を認めない限り、階段は前進しない」と、北朝鮮寄りの発言をし、続いて白如純・対外研究室助理研究員が「区域協力」について、(1)東アジアの概念、(2)東アジア協力メカニズム、(3)協力形式・・・日中で牽引することを模索、(4)中日の役割分担・・・ODAからはかなりの国が卒業した。中国も2008年に卒業する。日本の役割は終わる。中国がこれに積極的に参加している。(5)日中関係史・・・1970年代は「友好(乾杯)」、80年代は「合作」、90年代は「摩擦・合作(併存)」、新世紀は「新しい方策を模索する時代」だと「発表」した。                 (続く)