軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中国漫遊記7「討議その5」

 10分遅れの16時20分から、第3セッション「日本政局と中日の政治関係」が開始された。司会は張季風氏と阿久津氏が担当した。
 まず日本研究所政治研究室副主任の王屏女史が、「日本政界の再編及び中日政治関係に対しての影響」と題して、パワーポイントを使用して滔々と所信を述べ始めたが、私には単なる日本政治関連新聞記事を纏めたレポートにしか感じられなかった。
最初に9・11総選挙に対する分析を述べたが、上層部にどのような分析結果を報告しているのか気になった。新憲法論議については「突出“愛国心”」という文字が躍る。
「“自衛隊”改称“自衛軍”」は未だしも「小泉“清党”」と出たから通訳に尋ねると、「清党」とは「粛清」のことだと言う。反対した党員を「除名した」ことを指すらしいが、なんとも大げさである。こんな論文が中国国内に出まわれば、一応字が読める階層の中国人民や学生達は、日本でも自民党の政策に反対する人間は「粛清」され、“銃殺?”されていると勘違いするのではないか?
「2006中日政治関係歩入“臨界点”」とは、要するに次期首相の呼び声が高い安倍晋三官房長官を牽制する意図がアリアリであったから、今後は日本国内で、新華社通信社やニューヨークタイムズ社を同居させていることで有名な朝日新聞が、彼らと連携して大々的なキャンペーンを張る事が予測される。
続いて午後から参加した鈴木女史がパワーポイントを使って「9・11選挙後の日本政局」と題して、日本の選挙制度の概括説明や、今回の選挙結果の分析などを発表した。
私は、こんな「生々しい」意見交換の場では、美人女性の発表者は“得”をするなァといつも思うのだが、鈴木女史が発表を始めると、案の定会場はシーンとなった。
発表内容は一党独裁国家に対する厳しいものなのだが、優しく穏やかな発言振りは、参加者に好感を与えるのである。中国側参加者は相当な関心を持って熱心にメモしていた。
とにかく彼らは「日本は間違っている」「誤った認識を改めるべきである」などと、日本側を“教育”しようとし“強要する”傾向が強い。そして自分に都合の良いような日本国内政治の「安定」を要求する。一日も早く「対日政治対策」を立てたいのであろう。
日本大使館も、中国の対策に負けないように大いに頑張って欲しいものだが・・・
既に計画上の発表時間帯は終わりであったが、中国側から特に若手の発言をさせて欲しいと要望があり、若手の焸(カ)宇女史が、「東海問題」について発表した。
彼女は「海洋発展戦略研究所」に所属しているというが、これまた「学生の研究発表会」であった。つまり尖閣問題は「管制海域問題」であり、ガス田での共同開発の提案は中国側が先に言い出したものであること、法律問題が関わっているので、日本側は国際法をよく研究して欲しい、と言うのである。面白かったのはわが国では「国際連合」と表記されている組織を「連合国」と正しく表現していたことである。「聯合国主叉与国陳(?)協調」(中国文字がない)と書くらしいが、ストロー効果は「吸管効广(?)」だから判読しやすい。
最後の発表者は若い孫伶冷・政治研究室助理研究員で、「改憲問題」がテーマであったが、既に夕方5時を過ぎていた。
彼女もまた、どこかの大学?の文化祭における研究発表会風で、今回の対話は、蒋所長が冒頭で述べたとおり、中国社会科学院日本研究所の「若手育成」を主眼にした会合であったことは間違いない。「集団的自衛権」について、また、改憲後に日本がどのような政策を採っていくのか「心配」の様子であったが、米国一辺倒が問題だと言うのである。
彼女達「若手研究者」の質がどうであるかはさておき、日本の新聞・雑誌記事の集大成で「報告書」を作っているのではないか?と思われ、日本国内での「論議」が中国にかなり影響しているように感じた。私は、常々「日中問題」は日本と中国のそれぞれの「国内問題」に過ぎない、と思っているのだが、その一面が裏付けられたように思われた。日本の偏向新聞を基礎にした「報告書」を読んでいれば、胡錦濤主席も「判断ミス」をすることは間違いない。
5時半から、質疑に入った。まず江新風女史が、日中軍事力を比較し、中国海軍拡張の意図も意思もない。軍事費の透明度についても増しつつあると思う、として、中国の軍事白書を例に挙げたが、金田氏から内容について鋭く突っ込まれた。蒋所長(だったと思う)が、民主党が政権を取ると、台湾問題で摩擦が大きくなることに、日本の青年は気づいていない、と発言したのが興味があった。かれらの「民主党」に対する評価が気になるところである。
集団的自衛権について「中国は同盟国を持っていない。日本は米国と同盟すれば、集団的自衛権がついてくると考えているのではないか?」と言う孫女史の発言も理解に苦しむ。
安保常任理事国についても「戦勝国間の権利と理解している」と言うなど、どうも「集団的自衛権」や「常任理事国」については、かなり誤解しているように見受けられた。
予定をはるかにオーバーして、6時10分に本日の会議終了が告げられ、我々はホテルに戻った。
午後9時前に夕食を終えて、部屋に戻る前にロビーの売店でミネラル水を買うと「東白氏(ROBUST)」550mlが一本3元、缶ビールの「燕京碑酒」355mlが同じく3元、部屋でテレビを見ながら飲むことにした。部屋に「サービス」のミネラル水は置いてないのである。
風呂に入ってビールを飲みながら、50チャンネルもある中からニュースを伝えているらしいCCTV4を選んでつけると、ASESNに出席した胡錦濤主席が、韓国で会議をしたこと、閲兵式に臨んだ事などが大々的に報じられていた。
「韓国併行国事訪問」と言うタイトルだが、韓国内の華僑たちが熱烈歓迎しているシーンも出た。キムチ戦争中のはずだが・・・
次に大きなテーマは「防控禽流感」、つまり「鳥インフルエンザ問題」であった。なぜか「台湾」も防疫していると報じている。
「日本参院副議長・角田又一、呉邦国会見」報道では、抗日記念館で発言しているところが報じられたから、謝罪したのだろう。翌日、記念館を見たが、入り口正面の大ホールに、幅広の赤い布に大きく「角田又一・日本参院副議長」と名前が書かれた大きな花が、これ見よがしに置かれていた。角田氏は、靖国神社に参拝する「議員」であったかどうかは知らないが、もしも参拝拒否組みだったとしたら奇妙であろう。
「16日発生大爆発」は、吉林省での化学工場大爆発を伝えるニュースである。温家宝首相が現地に飛び、メガホン片手に、現地役人達に「きれいな水を給水しなさい!」と叫んで指示しているところが印象的だった。これはロシアとの関係にひびが入る大問題になるのではないか?
中国中央電視台」は夜のニュースで、「加強美日同盟」と言うニュース番組で、国際戦略研究所の研究員たちが解説していたが、「日米同盟が強化されることが中国にとっての最大の関心事」であることは間違いない。
日美関係は「互相借力秘神从一而終」と出たが、画面左半分に「小泉首相ブッシュ大統領が仲良く京都の庭を散歩しているところ」を流し、右半分には上段に「沖縄の反米活動デモ(何時のものか不明)」を、下段には「ワシントンでのイラク反対デモ」光景を流している。
陸上自衛隊の「火力展示」も報道され、キティホークの後にニミッツ級か?とも。
新聞も「2+2」を注目していて、「政治算盤各不相国」?とか字幕に出た。
とにかくブッシュ大統領小泉首相が「親しい」のが悔しいらしい。
「小泉遭遇、布什(ブッシュ)熱腧?和邠?国冷湯腧?」(字がない)などと字幕に出たが、内容は2003年5月23日に小泉首相が訪米し、この時安倍晋三氏が随行したこと。2005年11月16日にブッシュ大統領が訪日したことを織り交ぜて報道しているのだが、安倍氏に関心があるのは良いとしても、なんとなく「やきもち?」のように思えた。
そしてお決まりの「布什(ブッシュ)訪日、加強日米同盟」で締めくくるのだが、いかに気にしているかが良く分かる。                (続く)