軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

戦略環境の変化に注目しよう

「餃子事件」について、今朝の産経抄は「中国がやっと中国らしくなった!」と皮肉っている。「都合の悪いことには一切口をつぐむという、これまでの中国に戻った」というのだが、国内対策上、彼らは「口をつぐんでいる」かのように見えるだけで、外交上はしたたかな水面下の交渉をしているのである。靖国問題では中曽根首相がまんまとその手に嵌ったが、今回は訪日行事、オリンピックを成功させるために、日本側と裏取引する可能性が十分にある。日本側が「黙れば」、それなりの見返りを匂わす手である。真相隠しの最たるものとして、産経抄は「1971年の林彪事件」を例に挙げたが、文化大革命という恐るべき大虐殺の真相も隠しているし、天安門事件もそうである。「現在の中国政府も、8月の北京五輪までギョーザ事件を封印し『安全な国』を装い通そうというのであろうか。案外それは『成功』するかのかもしれない。何しろ被害国の日本の福田首相が公安当局の発表を『非常に前向き』と評価しているのである」と産経抄は結んだが、やはり政府間に何らかの“裏取引”がありそうである。
 27日に会談した上海国際問題研究所一行の露払い的来日も、「胡錦濤主席の四月訪日成功」が最大の眼目だと察せられたが、おそらく関係官庁との“調整”も終えてきたのであろう。
 会議では、表向きは東シナ海のガス田問題を提言したが、日本側が考えているようにやすやすとは解決出来まい。軍事力行使の手を自ら縛っている国との外交なんて、素人にも出来そうな一方的なものである。聊か気になったのが、日米関係と日本の国連常任理事国入りに対する彼らの見解であった。
 まず日米同盟については、「極めてアンバランスな関係で完全に対等な立場ではない」といい、常任理事国入りについては「常任理事国の5カ国は核保有国である。日本は独立した大国の役割を果たせると思っているのか。常任理事国入りしてどんな役割を果たせると思っているのか」と言った。
つまり、「入るのが目的なのか、入ってから何をやろうとしているのか」、日本政府の「世界に対する責任感が伺えない」というのである。
 これに対して私は「常任理事国5カ国は核保有国であるという発言は、核を保有していない日本には資格がないということか?。ならば日本はすぐにでも核を保有するがどうか」と質問すると、彼はあわてて「あくまでも独立した大国としての果たすべき役割をどう考えているか、ということであり、核保有は二の次である。核保有国もそれぞれ矛盾を抱えている」と補足した。
 しかし私は「核も持たず、米国の庇護下にある日本の出番ではない」というのが彼の本音だったろうと思っている。
 それにしても「常任理事国入りする目的は何か?独立した大国としての責任を果たす意思があるか」と云う質問は、戦略なき日本外交の弱点をついている様に思う。
 台湾問題については、あくまでも「核心問題」と位置づけてはいるものの、総統選で国民党が勝利することを確信しているように感じられた。私が過去の対話で感じてきた「熟柿戦略」が日の目を見るのも近いように感じたが、そうなれば東アジアの戦略環境は一変する。我が国にその備えはあるのか?
 昨日は米国研究者らと昼食会を持って忌憚無い意見交換をしたが、米国の軍部から見た日本の実体は、かって私が三沢基地司令時代に感じた危機感がまさに当たっていて極めて残念に感じた。
 日米安保の最先端である両国軍のたゆみない研鑽努力の成果は評価するものの、彼らが“期待”している?旧帝国陸海軍軍人的強靭さが、今の自衛官に感じられないというのである。つまり、共同訓練に参加する若手自衛官に「日本代表だというやせ我慢」が感じられず、「あたご事件」についても異常な軍事軽視報道に驚いているそうだが、日本国家全体の軍事無関心さに同盟軍として聊か頼りなさを感じ始めている、というのである。
 台湾については、今後どう動くかについて最大級の関心を持っているようだが、直接的には台湾への武器輸出が、そのまま中国への“提供”になることを恐れている、という見解には同感である。
 勿論、機密保護法もなく、警察の支配下?にある“軍隊”への「機密提供」も、今後は相当制限されるのではなかろうか?空自が熱望しているF−Xも暗礁に乗り上げている。
 3時間に及ぶ「昼食会」を通じて、今後の日米関係の不透明さと東アジアの戦略環境の変化は、予想を超えるものになりかねない、と危惧を覚えた。

 そんなところに、沖縄での少女暴行事件が不起訴になったことが報じられた。私も書いたように、日本のメディアは、被害者の少女のためを思って大々的な報道をしていたのではなかったのであり、反米、反日、反政府活動に利用された事件だったと私は思っているが、強姦容疑で沖縄県警に逮捕された海兵隊軍曹は、いまだに「暴行」の事実を認めていないといわれていた。DNA鑑定をすれば明白だろうに、おかしなことだと思っていたが、いずれにせよ県警によれば「被害を受けた中学生が『もうそっとしてほしい』と思っている」そうで、「被害者の感情を考えれば(起訴は)適当ではないと判断した」からだそうである。
 この事件も「あたご」事件も、当事者双方に問題があったのであって、勿論米軍は規律遵守を徹底させねばならぬが、沖縄教育委員会も子供たちの「夜遊び」を制限する指導に欠けていたと思わざるを得ない。私がいたころは、未成年者には「シンデレラタイム」が定められていて「深夜零時」に帰宅すればいいことになっていて驚いたものである。
 昔、自衛隊ではこれを「深夜徘徊」といって厳重に取り締まった。子供達の躾から再教育するのが沖縄県の最優先事項ではなかろうか。
「あたご事件」でも、海自だけを一方的に「再教育」しても、漁協の漁民教育も徹底してもらわねばこの種事故は防げまい。友人の猟師さんたちからも「同じ漁民として大型船を回避せず直前を突っ切ったことがどうにも理解できない」と電話があった。
 マスコミにとっては反軍活動に利用できなくなるので面白くないかもしれないが、「弱者」の悲しみを利用する偽善報道だけは止めたほうがよい。
 偽善の最たる政治家については広告に紹介する「自民党は何故潰れないのか(幻冬舎新書)」を一読されると理解できるであろう。ご一読をお勧めしたい。ついでに昨日届いた「やばいぞ日本産経新聞社)」もご紹介しておく。

やばいぞ日本

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