軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中国漫遊記19「蘇州会議その8」

 20日の日曜日は、9時から最終ラウンド「海上安全保障与中日両国的安全合作」が、夏・戦略研究室主任の司会で開かれた。
 まず、陳・元海軍大佐が、「海峡の安全について」と題して次のような意見を発表した。
1、 中日共に安全確保は重要である。日本は島国であるから、海上輸送ルートは生命線であり、国の安全保障がかかっている。それは中国にとっても同じである。中国の沿岸地方の発展にとって重要である。鄭和の言葉に「国富は洋上にある。富は海から、巨利も海から」というのがある。
2、 海上の安全確保は、中日にとって必要であり重要である。双方ともアジアの大国であり、経済で相互に依存しているパートナーである。中日関係の方が、日米関係よりも大きい。
3、 地理的に一衣帯水である。軍事力が共に高度な国である。故に海上の安全推進は双方の課題である。
4、 中日関係のギクシャクしていることは、海上の分野でも同じである。ギクシャクしている要素は、a 歴史認識、b 日米同盟が中国を想定している。c 領土紛争、e 海洋の権益、f 台湾問題・・・これは中国にとっては中核的国益である。
将来、衝突の可能性は薄いが、現実的対応が必要である。もし中日が衝突するとすれば、海上が予想される。
5、 いかにしてこれを防止するか。a 政治関係の改善が最優先、b 安保推進のため「中核的国益」に挑戦しないこと。(台湾を支援するなということ)
* 中国にとっては主権の問題であり国家統一行為
* 日本は海上輸送戦の確保
6、 そのためには新しいコンセプトが必要である。
* 相互信頼・・・相手の国を信頼する。
* 自国の安保を他国の不安全にしない。日米同盟強化は理解できる。
* 平等・・・域内のリーダーシップを双方が取りたいのわかるが、相手を押さえつけてはならない。
* 協力・・・対話の継続、入りやすい分野から入っていくこと

続いて金田氏が「地域有志協盟の実現に向けて」と題して「今までは上流ばかり論じてきたが、上流からも下流からも出来ることから交流を始めよう」という意見を述べた。中国艦艇の訪日はいつでも歓迎すると言っているのに、靖国問題を理由に断ってきたが、来日すれば日本国民は「旗を振って」歓迎する。地域秩序維持のための対テロ、対海賊訓練も必要。中国のアフリカ進出の様子は、かってのソ連進出を想起する。正義と公平を掲げる米国の介入を招きやすいと思う。
呉寄南氏は、提出した論文にアドリブを加えると前置きして、まず金田氏の意見に賛成だとして次の様にコメントした。
「良い提案だが、しかしながら政治関係が冷却している。相手に誤った判断をさせることになる。首脳交流が5年間ストップしているのは珍しいことである。政治家が何故対立しているのか?有識者は対話の場を通じて理解を広げていくべきである。
温家宝首相は3つの提案をした。外務次官の戦略対話は両国間のみならず、東アジアを含む広範な対話が進められたという話を聞いている。これは明るいニュースである。
安全対話も自然に増加してきた。例えば、中日韓、3カ国の安保対話、自衛隊現役将校との対話が挙げられる。一つの行動は、多くの情報よりも重要である。入りやすい分野から如何に進めるかが重要である。
a 安保対話のための政治的基盤の構築
b 一日も早く中日間での危機管理メカニズムを構築すること
 例えば、海上衝突予防メカニズムなど、信頼醸成になることには喜んで協力する。不信を増加する事をやらぬこと。敏感なところへ軍艦、航空機が入らないこと。会場安保の対話の場で早急にメカニズム構築の対話を始めること。その基盤の上に両国の海上保安庁間にホットラインを設置すること。
c 海上の安保確保のために努力を向けること。海軍の相互訪問は一気には無理かもしれないが必要なことである。両国の国防白書執筆者の意見交換。中共軍と自衛隊でPKOに参加し対話の場にする。中国は1992年からカンボジアから参加し、13年前に「奮闘記」を出した。
d 非対称(テロ)に対する安全対話を進める。中日韓でシーレーンが重複している。これは日中の生命線であり両国が協力して対応すべき。港湾の安全確保については、上海港は世界第二のコンテナ基地を建設中であり、午後に見学していただく予定である。上海がテロに急襲されたら被害は莫大である。訓練には日本の海上保安庁も参加すべきである」
続いて川村氏が大意次のような意見発表をした。 
「双方とも海がVAであり、共通の利益があるということに賛同する。同時に利益が衝突する場所でもある。
1、 紛争可能性のある場所にどう対応するか。
2、 中日両国の協力を如何に進めるか。東シナ海の危険性排除は出来ない。しかし航空機、軍艦の立ち入り禁止提案は面白い。
3、 日中協力のためには東シナ海での衝突は絶対に避けるべきである。しかし中国の軍艦が行動しているし日本側はP-3で警戒をしている。双方の海軍間に通信手段がない。取極めもない。人命事故、捜索などの協定もない。
4、 それが出来るまでの間、誤解を防止するため情報交換が必要である。例えば日韓空軍間のようにホットラインを設置する事が望ましい。また、事故防止のため双方に例えば「米ソ間のホットライン協定」のようなものが必要である。捜索のための協定や手順も必要である。
5、 協力の分野では、
6、 シーレーン確保のための日中間の協力、対海賊追跡などの協力、情報交換が必要。

 以上で意見発表は終了し、私と趙・学術公室長がコメント(講評)した。  (続く)