軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

ホリエモンより防衛意識向上を!

世は挙げて「ホリエモン事件」で持ちきりであるが、以前ここで書いた様に問題は「拝金主義」が蔓延して、若者達が「時給いくら?」の感覚で生活していることにある。
「楽して儲ける主義」が、子供たちばかりか、いい大人たちの心まで蝕んで久しい。
戦後の食糧事情が悪いとき、両親から「一粒の米も無駄にしないように」躾けられ、御百姓さんに感謝させられたものであり、「額に汗して働く」事の尊さを叩き込まれたものであった。この世に「物」が実在するのは、それを作る人がいるからであり、汗水たらして働く人がいるからである。ペンだけで「妄想」をたくましくして稼ぐ人は「実業家」ではなく「虚業家」であるからこんな混乱期には余り役にはたたないものだ、と教えられた。
確かに北朝鮮には見るべき「文化」は育ってはいない。平和で繁栄していて始めて人々は「小説」を読む暇が出来るのであろう。
今回の事件の背景には、その「虚業家たち」を「実業家・起業家」ともてはやした連中が多くいて、政治家も、経済人も、評論家も、特に「マスコミ」も、彼が株の「時間外取引」をして、「法律で禁止されていないから」と言った時でさえもそれを肯定して憚らなかった。それがどうだ、事件が発覚するや「若手起業家!」と持て囃したことには口を噤んで、今や「悪人扱い」に躍起になっている。今ではぐるになってホリエモンを叩きのめそうと必死である。人倫、地に落ちるとはこの事を言う。

ところで、こんな幼稚な騒ぎに隠れて、国の根幹を揺るがす重大事件が起きている事の方が遥かに恐ろしい。それは陸上自衛隊のミサイルデータが「ソフト会社」から朝鮮総連に関係ある会社を通じて流失していたこと。ヤマハ発動機製の無人ヘリが、不正に中国に輸出され、軍事転用されていたというニュースである。
ミサイルデータ流出については、防衛庁から「研究試作」を受託していた三菱電機が、報告資料作成を三菱総研に発注、三菱総研はそれを「ソフト会社」に下請け発注したものだという。これで思い出したのだが、数年前、三菱重工で、定期整備を委託された航空自衛隊の戦闘機10数機の電纜(ケーブル)が意図的に切断されていた事件である。確か主力戦闘機のF-4とF-15だったはずだ。それとほぼ時期を同じくして、英国から受注していた豪華フェリーが長崎造船所で炎上したが、私は、これらの“事件”は「サボタージュ」臭いと感じていた。その理由は、前述した環境下に育った日本人が「3K」を嫌うので、「現場に派遣される作業員」の中に外国人労働者が入り込む可能性が高い事を知っていたからである。もちろん、それには「特別に許可された証明書」が必要なのだが、親会社がどこまで責任を持って監視しているかは疑問のあるところであった・・・。
ヤマハ発動機の場合は、私が浜松勤務時代にOBに連れられて技術者が話を聞きに来た事がある。私が幹部学校時代に「日本防空ハリネズミ論」なる、漫画的発想の論文を書いた事を知っていた先輩が、今後の航空戦力のあり方について「話」を聞かせてやって欲しい、というのである。私は、今でいう「MD構想」や、「無人機構想」について熱く?語った事を覚えている。浜松は、機械メーカーが多く趣味のラジコングループも多かった。知人の中には豪華な「ラジコンヘリ」を飛ばしている方もいて、やがてこれらの無人機が大活躍するときが来る、というのが私の話の中心であった。
当時、聞いたところではヤマハ発動機は、バイクやモーターボート用の発動機が多量に余ってしまいその活路を求めていたという。その後この会社は「無人ヘリ」の一大メーカーに成長したので、私は密かに喜んでいたのだが・・・
要は「モラル」と「愛国心」の欠如にある。世代が変わると、商売人の本性が現れ、なりふりかまわず「金」にしがみつくようになる。もちろん商売の基本は金であり「儲け」にある事はいうまでもない。しかし,愛国心を忘れた行動は,「死の商人」に他ならない。
仮にヤマハ製の無人ヘリが撒き散らす「サリン」で、反政府活動をする人民達ばかりか、前線の自衛隊員たちが死ぬことになる事をヤマハの幹部はどう思うのか?
三菱総研のチョンボで「わが国が開発したミサイル技術」で、防衛の第一線に立った自衛官が殺されることを三菱は想像した事があるのか?
政府は、一日も早く「スパイ防止法」を整備すべきである。そうしなければ、三菱が主となるであろうF-X選定事業で、米国が新技術を移管してはくれないであろう。
今朝の産経新聞の主張欄には、「日本企業の安全保障問題への感度の鈍さはどうしたことだろう。・・・ヤマハ発だけではなく、全ての日本企業は今一度、自社の技術や製品の持つ軍事的な意義、輸出先などにもっと神経を使わねばならない」と書いたが、「**研究所」も「**コンサルタント会社」も「**大学の研究室」も同じであり猛省を促したい。
しかし、国内に、異常なほどの拝金主義が蔓延している現状では、産経がいくら説得しても困難ではなかろうか?と私は正直悲観的にならざるを得ない。