軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

マスコミの報道を正す会

16日土曜日は、靖国会館で行われた、標記会合に招かれ、一時間ほど話をしてきた。『マスコミを正す』というのだから、マスコミとの昔の『体験談』かと思っていたが、私に与えられた題目は「これでいいのか日本の防衛」であったから、聊か面食らった。
会長の外交評論家・加瀬英明氏が挨拶した後、元朝日新聞社常務の青山昌史氏が、昭和史を通じて、朝日新聞がわが国の政治に与えた影響と問題点について、具体的事例を挙げて述べたが、やはりこの新聞社は「時流に乗る」のがうまかったようだ。勿論、尾崎秀美とゾルゲという、大東亜戦争に重大な影響を与えたコミンテルンの回し者たちの動きについても、その周辺にたむろした社の幹部たちの行動も挙げつつ解説されたから、大変参考になった。
終戦直後に小学校に入学した私は、軍艦や飛行機の絵を墨で消した、尋常小学校国定教科書で「アカイ、アカイ、アサヒガノボル」と最初に習った記憶があるが、やはり「アカイアカイアサヒはアカイ」ことを確認した!
次いで私は2008年の危機?にわが国はどう対処するのか!という問題について、「防衛漫談」をしたのだが、ご老人が多かったせいもあって、かなりの方々から質問を受けた。
つまり、2008年には、台湾の陳総統に代わって誰が総統になるのか?ロシアでも大統領選挙である。韓国大統領は交代する可能性が大きいが、果たしてどうなるか?インドネシアも大統領選挙である。このようにわが国周辺は、指導者の交代時期が重なり、政情不安定に陥る可能性があることを述べたのだが、最も気になるのが米国で、共和党が政権を維持できるのか、それとも民主党が取り返すのか?CNNなどでは、民主党のキャンペーン?が始まっているような番組が増えているが、万一の場合にわが国に与える影響は??。あのカーター氏や、クリントン氏などがご夫妻で登場しているし、学者などと「ブッシュ大統領イラク戦争は間違っている」と強調している。
その上、中国では北京オリンピックである。わが国が、この混乱?の時期をうまく切り抜けるには「挙国一致体制」が必要だろう。
若い安倍政権誕生は、大いに期待感を持たせてくれるが、参院選挙の結果次第では、わが国自体も混迷に陥るかもしれない。何とか、本来の「真の保守政権」が、強力な指導性を発揮するような政治環境になってほしいものである。

ところで、実業之日本社から22日(店頭に並ぶのは25日になるそうだが)に発売になる私の『監修本』について、コメンテーターの方々が期待感?を持っておられることはありがたいことであるが、表紙の図柄などについて、若干の違和感?をお持ちの方もいるようだから、敢えて触れておきたい。
この本の発行目的は、若い学生たちや、サラリーマンたちに、気軽に防衛問題に関心を持ってもらえるように、図表や解説をふんだんにつけ、気軽に楽しく眺められるように編集されたもので、決して『学術書』ではないので間違いなさらぬようにしてほしい。
そこで今日は発行目的を理解していただくため、この本に私が書いた『序文』を掲載しておきたい。


「はじめに」
 自衛隊イラクに派遣されたせいか、北朝鮮のミサイルや中国との東シナ海問題が浮上したからか、日本人の「軍事」に対する関心はこのところ非常に高くなってきた。日ごろは無関心な存在であった自衛隊という「軍事組織」に国民が目を向け始めたことは、OBの一人として嬉しいことではあるが、国民の大半は「正常な」軍事知識を持ち合わせていないし、一部のマスコミは、未だに「軍事=悪」として取り上げ、国民に不要な危機感を煽る報道に明け暮れている。
 私は航空自衛隊の戦闘機パイロットとして34年間、食うか食われるかの「実戦的訓練」に明け暮れてきたが、ソ連と対峙していた冷戦下においてさえも、わが国は一方的に日米同盟に依存して、ひたすら経済発展に没頭しているように思え、残念に思っていた。軍事力を国家戦略の基本に据えて外交、経済問題を進めている諸外国と、一人「軍事抜き」で取り組んでいるわが国とでは勝負にならないから、やがて行き詰る時が来るのではないか?と憂えたのである。
軍事常識を欠いたままでは、軍事優先国家と同じ土俵で相撲を取れないからである。そして予想通りほぼ完敗してきた。国連の場を始め、領土交渉も、不審船による領海侵犯や拉致事件などなど、金では解決出来ないものがあることを漸く学び始めた感がある。その原因の根幹には、国家戦略や戦争史(戦史)を含む「軍事学」、いわゆる「防衛学」を講座に持つ大学がほとんど無いということに起因しているように思われる。わが国に「国家戦略が無い」といわれるゆえんであろう。
 このたび、大平祥司氏から、「図解でわかる日本の戦争力」と題する原稿を見せられ、「専門的見地からアドヴァイスを」と依頼され喜んでお引き受けしたのだが、その内容は私が常々考えていた、「軍事を知ることが平和につながる」という基本的スタンスと合致していたから感動した。著者の大平氏は、「一般読者対象に、日本の軍事/安全保障問題の基本を無理なく理解できる本として企画した」と言ったが、まさに若者たちが気楽に目を通すことができて、理解がしやすい絶好の「入門書」だと思う。
 これを契機に、若者たちの間で、軍事についてのディスカッションが盛んになれば、これ以上の喜びは無い。そして願わくば、自衛隊各種学校は勿論、高校、大学などで、「副読本」的活用がなされることを期待してやまない。