軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

シンポジウム報告

 昨日午後、拓殖大学日本文化研究所主催の公開シンポジウムに参加した。「朝鮮半島アポリア(難問)」という主題で、司会は井尻千男所長、パネラーには、黄文雄遠藤浩一、荒木和博の諸氏と私、それに韓国から帰国したばかりの西岡力氏が参加した。
 黄文雄氏は主に韓半島の歴史的観点から、西岡氏は、安倍新政権と拉致問題の解決、遠藤氏は日本の戦後政治と在日問題、荒木氏は拉致問題全般、私は朝鮮半島の軍事的問題について、それぞれ20分ずつ話した後、さらに追加発言、討議を実施した。予定時間は14時から17時30分であったが、論客が多かったのと、井尻所長の各人に対する指摘が「的確」であったため、予定時間を少しオーバーする有様で、質問の時間は割愛された。絶好の秋晴れの行楽日和にもかかわらず、茗荷谷の拓大キャンパス内の講堂には、熱心な老若男女約200名が聴講してくれた。
 この記録は機関紙に掲載されるそうだが、錚々たる教授連中が居並ぶアカデミックな雰囲気の中に、ただ一人、元戦闘機乗りという“アトミック”な異物が混入していたから、聴衆は気になったことだろう。言語感覚に乏しい私は、「不適切用語」を乱発したから、機関紙の草稿から削除してほしいと思った。
 それぞれの主張は大いに納得いくものであったが、拉致被害者救出に関して「自衛隊が蚊帳の外にある異常さ」に関する発言には耳が痛かった。

 私は、今回のテーマ「北朝鮮というアポリア」は「実は日本国のアポリア」だと考えた方が手っ取り早い、と考えていたのだが、1、北朝鮮の軍事力の実態。2、韓国の軍事力。3、韓半島が統一された場合の脅威。4、米軍の状況。5、日本の軍事力、が主題として与えられたので、約20分で簡単に提言した。最後に一分間でまとめの発言を求められたが、私は「歴史に学べ」として、大略次のように結んだ。
1、大陸問題、半島問題に深入りするな。旧満州国建設の失敗に学べ。日本は、経済発展のため大陸に進出し、企業は軍や政府を都合がいいように利用した。その結果を見よ。現在の中国進出企業の中にも、その“雰囲気”が強く感じられるのは私の思い過ごしか?
2、自国の軍隊の「階級名」さえ知らない一般国民には、自衛隊の現状を良く知ってほしいが、他方、私の個人的感覚では、今後の戦争は、F-15戦闘機の大編隊、イージス艦の堂々たる大艦隊?での海戦よりも、間接侵略のほうが起きる公算はきわめて高い。いや、既に始まっていると認識すべきだろう。

 引き続いて行われた懇親会での「裏話」のほうが実に充実していた。黄氏は台湾から帰国したばかりであったし、西岡氏も韓国から帰国し空港から直行してきていた。
 さらに参加者の中には、色々な専門家がいて、私の「間接侵略」を裏付ける実例を示されたので、一同しゅんとなったのだが、その実例の大半が中国からの不法・密入国者関連であった。日本に密入国する中国人の大半は、国内の「あぶれ者」であり、「病気持ち」だという。
 それも各種「肝炎」や「結核」、原因不明の「熱病」「HIV」などなど、実例を詳細に挙げられると、弁の立つ教授連中?らしくなく、一同全く一言もなかった。しかも、彼ら密入国者たちは、怪我をしても病気になっても「公然と」日本での診療は受けられないから、「裏社会」で診療する。つまり、厚生省などの目が行き届かない範囲だから、病気の蔓延を防ぐことすら困難だという。その上、公的に入国している留学生たちにも「身体検査」は義務づけられていないというから驚きである。
 黄氏によれば、中国本土では、事故にあっても医療費は先払い、救急車で運び込まれる前に、救急車代を払えるか払えないかでひと悶着、「払えない」と分かると救急車は空で帰って行く。入院するにも前払い、だから、日本で事故にあって彼らが好まない?のに病院に担ぎ込まれると、治療を受けた後病院から夜逃げして「無銭治療」するから、医療機関は大損害、結局「密入国者の悪行の穴埋め」を、日本国民の血税でまかなっているのが実情だというから開いた口がふさがらなかった。北京政府はこれを知ったら、「出国を奨励?」するに違いない!
 東京都でも、学校給食代、PTA会費を滞納する父兄が増え、滞納額が巨額になって問題化しているが、医療のほうはそんな生易しいものではなさそうである。
 また、衛生観念に乏しい中国産の「割り箸」の恐ろしさ、食品の無知から来る不衛生さ…などなど、数え上げればきりがないが、「知っている人は知っている、知らない人は知ってない」などと、何かのコマーシャルみたいな裏社会の実情に、「ついにわが国もそこまできたか」と慨嘆した次第。


 ところで、ブログを書いているとき、電話情報が入った。フジテレビの「報道2001」で、竹村健一氏が、「中国の北京にある抗日記念館の展示物から、731部隊関連展示がはずされ、日中両軍が握手している?写真が展示されている」と語ったという。
 昨年11月に北京の抗日記念館を見学した時には、仇敵・蒋介石との友好関係と、米国など国際社会との連携を中心に展示変えされていたことは知っているが、今回の詳細な事実関係は知らない。
 しかし、それが事実だとすれば大変興味がある。南京の“本場”である抗日記念館では、ピースボート本多勝一氏などを表彰するそうだから、北京とは大いに異なっている証拠だから、私は「どうも『南北戦争北京閥上海閥との戦い)』は予想以上の進展を見せているように思える」と答えておいた。
 安倍新首相は、その点を良く確かめて行動してほしいと思う。1920年代のような、北方閥と南方閥との“国内革命戦争”に日本が利用されてはならないからである。
 それにしても今日の「報道2001」で、竹村氏が最後に解説した「米中国交回復時の視点」は聊か短絡的過ぎる。
 米・中・ソの当時の相関関係を、北極図法で見てほしい。中国が真に恐れていたのは何か?それは、米・ソが保有する核戦力である。当時の米ソ間の戦略兵器制限交渉など、核に伴う恐怖を毛沢東はどう処理しようとし、ニクソンはそれをどう活用しようとしたのか?その辺の解説が省略されていたのでは、誤解を生じる恐れがある。
 更に、この米中ソ3国関係を例に出して、「大の虫を生かすため、小の虫を殺す大戦略を、安倍首相が用いる腹があるか?」という内容のセリフだったと思うが、その例え話として、「大=中国との友好、小=靖国参拝問題」とはいかがなものか?
 最も靖国を「小」とはたとえが悪いが…と弁明していたが、例えそのものが悪い。
「小=韓国、ロシア」ならまだ分かるが、「靖国」を例に引きたいのであれば、「大=靖国参拝、小=中国との友好」とし『大の虫を生かすため…』とすべきであったろう。
竹村氏には悪いが、こんなところにも、古い世代の負け犬根性が垣間見えた気がした次第。