軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

気になる「与党幹部の北京詣で」

 昨日は靖国会館で講演をしてきた。二宮報徳会という二宮尊徳の偉業を現代に生かそうという趣旨で集まった方々の会合だが、回を重ねるごとに活動が活発になっていることが嬉しい。会員の方々に接していると、日本人の原点に触れたような瞬間が感じられほっとする。
 日曜日お昼の靖国神社も、参拝者が途切れることなく続いていたことが嬉しかった。特に若い二人連れが目立ったが嬉しい事である。
 今回もいつものことながら私の持論である「2008年危機説」を解説したのだが、聴衆の中に某新聞社の編集委員がいて、極めて要点を着いた質問を受けた。質問者は元台北支局長だっただけあって、台湾問題とわが沖縄、それも八重山地区の実情に明るく、下地島の飛行場問題など、現地の実情を知るものの強みを感じた。
 私が言う「2008年危機」とは、つまり今年がその天下分け目の年になるということなのだが、その辺の自覚は日本人一般には不足している様に感じる。
 タイミングよく、今朝の産経新聞には中国が独自に?国産開発した「殲10」戦闘機を大量に配備したと報じていたが、あわてることはない。空軍力というのは、人機一体化して初めて戦力になるのであって、問題はパイロットの養成状況とその錬度である。ところで私が中国空軍の現状について不思議に思っていることは、ロシアから大量に輸入した筈の「新鋭戦闘機・SU−27、SU−30」の戦力化に関するニュースがその後さっぱり聞こえてこないことである。私がニュースを見逃しているのかもしれないが、台湾威嚇のためなら、海のものとも山のものとも評価できない「殲10」よりも、「SU」の方が戦力化されているはずである。なかなか戦力化できないので中国軍の一部に「SUは欠陥機だ!」という声があるという情報もあるが、真相は謎である。
 問題は我が国の対応であって、着々と軍備を進めている周辺国があるのに、全くそのための対応をとらない“不思議さ”である。
 台湾周辺で事が起きた場合に、わが国が得意とする「外交力」で解決できる、と高をくくっているのだろうか?
 昨日の質問にも、与那国を含む八重山地方では、頼りにならない本国政府に反抗して、独自に台湾と「経済特区の関係を結びたいという声が高い」という質問があった。昨年訪問した八重山地方の青年男女たちも「自分のふるさとは自分たちで守ろう!」と真剣だった。
 そんな中、何を思ったか与党幹部たちの中国詣でが急増しているという。中国は「小泉前政権時代とは態度を一変させ、訪問客を幹部がもてなす『微笑外交』を繰り広げ、日中友好ムードを演出している」という。自民党の二階氏や、公明党の漆原氏は23日まで北京に滞在するそうだが、JALの会長、ANAの社長、JR東日本の会長、全国旅行業協会副会長らも同行しているというから、中国観光で経営不振を立て直そうという魂胆だろう。経営者が儲け様というのは一向に構わないが、そのために「靖国神社参拝」という我が国の国家行事を取引材料にされてはかなわない。
 中国は2008年の北京オリンピックを是が非でも成功させなければ胡錦濤現政権自体が危機に瀕するという最大の弱点を持っていることを忘れては困る。上海閥との暗闘は未だに継続中であり、国内問題以外でも、仮に今年、イランに対する核施設破壊行動が、米国かイスラエルによって始められた場合、中国とロシアは米国に対抗せざるを得ないだろう。我が国はイランに石油で縛られているが、そんなあやふやな日本に対して米国は「踏み絵」を強行するだろう。その場合は「戦後世界」のことを考えれば、我が国は米国に「協力」せざるを得ない。そうなれば当然中国との「友好」なんぞ吹き飛んでしまう。北京オリンピックもボイコット国が出るだろう。中国が動きが取れないことを知っている台湾が、仮に憲法改正を実行した場合、中国は難癖をつけて介入したいであろうが、少なくとも2008年11月までは共和党出身のブッシュ大統領が実権を握っているのであり、彼は今や失うものはないから敢然として自由主義諸国のリーダーとして台湾防衛のための行動に出る公算が高い。中国が頼りにしている?ヒラリー女史が、仮に大統領になるにしても2009年1月以降である。
 以上は仮定の話に過ぎないが、今年から来年にかけての国際情勢は予断を許さない、という自覚がわが政府関係者にはあるのだろうか?いや、国民自体にあるのだろうか?と不安になる。ことは宮崎県知事選程度の低次元の話ではないのである。
 国民は、やがて身近に迫りつつある危機について、台湾に近接している八重山地方の青年男女と同じく、真剣に考えておかなければ、来年、いや今年の秋?くらいから、信じられない様な事態に直面することになろう。杞憂に終わればいいのだが・・・