軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

安倍総理の所信表明演説

 戦後生まれの若々しい“新総理”の所信表明演説は、今までにない新鮮さがあった。今朝の産経新聞に全文掲載されているが、石井記者も「政論」欄で、カタカナ表現が多かったのは、首相の頭に「『自分の訴えを聞いてもらいたいのは、主に若い世代だ』という考えがあったのなら、役所用語や漢字の羅列が目立ちがちな国会演説に比べて、この方がふさわしいのだろう」と書いたが同感である。
 演説終了直後の各党党首の談話が、それを明白に物語っている。民主党の菅氏は、「とにかく批判ありき」の態度だったが、ほとんど新首相の演説内容が理解できていない様に感じる。やはり考え方が“古い”からだろう。共産党社民党は、語るに落ちるから批評する気にもなれないが、確かに「世代交代」の始まりを強く感じる。
「政論欄」も、「勿論、すべてを所信表明で語りつくすのは無理というもの。今後は国会論戦に加え、マスコミとの活発な対話を通じて、その胸の内の詳細に国民に示してほしい」と結んでいるが、マスコミは「あら捜し」で懸命だから、その昔、防衛政務次官に着任早々、週刊誌の“わな”に引っかかって辞職を余儀なくされた、西村議員のようにならないよう、警戒が必要だと思う。特にNHKや朝日新聞は、安倍、中川両議員を貶めようとした例の問題が未解決のままのはずだ。TBSも画像操作して安倍氏に悪印象を植え付けようとしたばかりである。総裁選前後の朝日新聞のように、しゃかりきに酷評する新聞などは、反日組織であるという“正体”が既にバレバレだというべきだろう。更に、閣僚の中には「不発弾?らしき」者も混ざっているようだから、マスコミはその「外堀」を埋めてくるに違いないから油断は禁物である。
 しかし、時を経るにしたがって、安倍新政権の評価は次第に定まってくるだろうから、2008年に備えてしっかりした体制を確立してほしいと思う。
 中でも現時点で私が注目しているのは「拉致問題」に対する姿勢である。
 昭和60年の時点で、「拉致は金正日書記が直接指示したものだ」と、「北朝鮮スパイ事件・主犯の辛が供述」と報道されていたにもかかわらず、政府は手をこまねいて何もしてこなかった。この時期、国内では「日本人になりすまして6年・対韓工作員か」、旅券不法入手の韓国人と内妻を逮捕などと、北朝鮮スパイ関連記事は多かった。その上、不審船事件も続発していたのに、政府はそれを「意図的に逃がし」たりしていたという。あれから既に20年以上もたつ。
そんな「無責任政府」の後始末を、戦後生まれの新総理が始めるのだから、一筋縄ではいくまい。現職や元国会議員の中にも、それらの事件に絡んでいる議員がいないとも限らないから、国会内外での抵抗は大きいであろう。
 それにもかかわらず、安倍新総理は、拉致問題解決への強い決意を示し、予定を変更してまで家族会メンバーと会見した。今までの総理には見られなかったことで、その意気や良し!大いに期待したい。

 安全保障の原点は、自国民の「保護」にある。中には『北朝鮮問題の中心は「核問題」であり、拉致問題に優先する」という者もいるが、核問題も国民の「安全確保」が焦点なのであって、不法に拉致されている国民を救出する戦いと「国民保護」という点では同列であろう。しかも、核問題が浮上する以前の、既に30年前から「放置」され続けてきた問題なのである。
これに並行して「集団的自衛権問題の解決、憲法教育基本法などの改正問題」を進めなければならないのだから、安倍総理は体がいくつあっても足りないだろう。
国民は一致団結してそれを支える必要があると思う。

 今日は午後から、拓殖大学の公開シンポジウムに参加する。課題は「朝鮮半島アポリア(難問)」で、パネラーは、井尻千男、荒木和博、遠藤浩一黄文雄、それに私である。私の受け持ちは『朝鮮半島の軍事情勢分析』だが、丁度実業之日本社から発売された私の監修本が、店頭に並んだばかりなので、「PR」を兼ねて解説してこようと思っている!
いずれにせよ、拉致問題が年内に大きく解決に向かって“変動”することを期待したい。