軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

北の核実験宣言

 今朝の産経新聞は読み応えがあった。特に中国の「内紛?」報道は秀逸で、今まで私が勝手に分析してきた情報がつながりだした予感がする。
 一方、北朝鮮の核実験宣言は、世界中に波紋を投げかけているが、報道のとおり、韓国はショックだろう。前大統領がもらったノーべル平和賞は一体なんだったのだろうか?「金大中前政権から引き継いだ対話路線で約3兆ウォン(約3800億円)に上る大規模支援を行ってきたが、核実験のため支援をしてきたとの批判は避けられない」と、久保田特派員は書いた。盗人に追い銭とはこのこと、今頃気がついても遅いのではないか?
 中国も劉建超報道官が「冷静さと自制心を」と北朝鮮に呼びかけたらしいが、同時に「関係方面が対話と協議を通じて平和的に解決、緊張が増加するような行動をとらないように望む」とて、「日米両国による制裁強化や、国連での北朝鮮非難決議などをめぐる動きを牽制した」らしいが、このようなあいまいな態度をとらざるを得ないのが中国外交の弱点であろう。6者協議の議長国が、全くイニシアティブを発揮できていないのだから、「牽制」は聊か無責任である。
 以前、中国研究者たちとの対話の場で「絶好の場を与えられたのだから、議長国として結果を出すように」と“激励”し、「この際、北朝鮮から拉致被害者を取り返して関係各国に送還させ、核開発を断念させて米国に恩を売るが良い。そうすれば、日本人からは感謝され、ODAが減ることはなし、米国からもアジアの大国として認められる」と“助言”しておいたのだが、今回の北朝鮮の「宣言」で、全く議長国としても打つ手がなかったことを証明してしまった。つまり、アジアの大国としての「実力」を露呈したのである。中国の劉報道官は、「冷静さと自制心」を北朝鮮に求めたが、彼らに本当に「冷静さと自制心がある」と思っているのだろうか?
 共産主義国には「サービス」という概念がないので、モスクワや樺太を旅行してひどい目にあったものだが、ミサイルを連発し、他国民を拉致し、自国民を飢えて死なせ、見せしめに公開銃殺するような国に、「自制心や冷静さ」を求めるほうがどうかしている。単なる「外交辞令」だとしたら、そんな程度だから北朝鮮に舐められて「6者協議の運営」もままならないのである。
 日中会談で、その辺の「助言」を安倍首相に率直に求めればよい。韓国もそうである。その意味では、今回の“3者面談”は興味がある。安倍首相の健闘を期待したい。

 ところで、わが国内にも、まだまだ北朝鮮との“因縁”を抱えた方々がおいでになる。その意味では、何も中国ばかりに“助言する”資格はないのだが、たとえば2002年9月17日に日朝首脳会談で、金書記が小泉首相に対して「拉致」を認めたとき(最もあの時は「一部の部下が勝手にやった」などと責任回避し、しかもめぐみさんたちは死亡したなどと嘘の発表をしたが)、この非人道極まりない「拉致」行為を金主席自らが「認めた」その背景について分析した人がいる。

 それによると、「1990年の金丸・田辺の自社訪朝団、95年の渡辺美智雄・コメ支援訪朝団(加藤紘一が折衝役)、97年の森喜朗自民党総務会長(当時)訪朝団、99年の村山富一元総理訪朝団など、過去10年余の間に与野党問わず、我が国の大物政治家が多く訪朝している。野中広務小沢一郎、中山正輝、堂本暁子などもこれら訪朝団に加わっている。先日逮捕された、社民党辻元清美などが設立したNGO「ピースボート」は、「北朝鮮ベトナム」との往来を行うための団体で、その運営管理会社である「株式会社ピース・イン・ツアー」の社長は赤軍派北川明、役員は小田実、若松孝次、灰谷健二郎など、事務所スタッフはほとんど朝鮮総連からの派遣者だった。赤軍派よど号グループの柴田泰博が北朝鮮から日本へ密入国したのを手助けしたのは、ピース・ボートの船だったといわれている。筑紫哲也もピース・ボートの支援者で、船上講師を務めていた。土井たか子も当初よりの辻元の後見人だった。
 北朝鮮の日本人大量拉致、という犯罪行為が一方で行われている中、我が国政界はもとより、マスコミ、小説家、評論家などがこぞって北朝鮮にすりより、その寵を競い、これを北朝鮮側に利用されてきた。
 死亡した金丸、渡辺はともかく、現存する森、野中、中山、土井などは、少なくとも昨年の9月17日、拉致事件の真相が明るみに出た時点で、自載するべきであり、それが政治家としての責任の取り方である。
「知らなかった」「否定された」という言い訳は通じない。外国に騙され、国民の生命の危機を放置した罪は、通常の国家であれば通敵罪、スパイ罪として裁かれるべき破廉恥行為であり、自殺が許されるのはむしろ名誉と考えるべきである。
 金正日は、拉致問題の存在を認め、謝罪することの意味を正確に計っていた筈だ。自民党、旧社会党公明党など政党関係者、これに付随するマスコミ、言論人、朝鮮総連等、日本人拉致を陰に陽に手引きし、見てみぬふりをして黙認してきた連中に、大きな混乱と衝撃を与えるということを、金正日は判っていた。日本における北朝鮮の支援者・協力者を何故窮地に陥れるようなことを、金正日は敢えてしたのだろう。こうした連中を切り捨ててでも得られる対価とは何であったのだろうか」と結んでいる。
 2003年10月に発表されたものだが、文章は、その後もCIAと北朝鮮の関係、冷戦体制の清算金正日の出自と真意は?などという独特な分析が続いていて興味深い。
 いずれにせよ、今回、拉致事件解決を胸に、一筋縄ではいかぬ国に飛び込む安倍首相の心労を察するが、わが国内もこの文が指摘したような状況は変わっていないのだから、物事は一挙に解決し難いことを国民は理解しておく必要があろう。
 今回の首脳会談で、目に見える成果は得られなくとも、今後「戦後政治の総決算」に邁進するであろう首相に期待したい。