軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

外敵と“内なる敵”と!

 昨日は雨の中都心に出て、史料調査会の研究会に参加し、異業種交流会では「アジア情勢」について講演をしてきた。
 史料調査会では半島情勢研究の専門家・重村智計早大教授が、「韓国新政権と今後の日韓関係」と題して、半島の裏事情について興味深い話をしてくれた。半島情勢を左右している「6者協議」が進展しないのは、ヒル次官補の“うそつき外交?”に振り回されているからだ、という重村教授の話は興味深かったが、今朝のCNNで、ライス国務長官が、北の核施設破棄が出来た時点で「テロ指定国家」を解除する予定だと発言していたが、何らかの進展?があったのだろうか?
 重村教授が言うように、北の最大の目的は「テロ支援国家解除」にある。指定されている間は「国際融資」が受けられないために北の収入は危機に瀕しているからである。
 それにしてもライス長官の記者会見を見ていて、軍事力に自信を失った米国の“惨状”を見る思いがする。冷戦終結で4分の1の兵力を削減した米国は、皮肉にも中東でアフガン戦争、イラク戦争を戦う羽目になり、今や戦力不足で1・5戦略など遠い昔話、戦力のやりくりでイラクだけで四苦八苦している。台湾海峡や半島で“勝手に”紛争を起こされてはかなわないところまで来ている。ロシアや中国、北朝鮮やイランなどは、テロリスト同様今が「絶好の機会だ」ととらえている。ついにノーベル平和賞受賞者「カーター」氏までが動員され、ハマス説得に乗り出した。ダライ・ラマ氏も受賞者だが、半島で受賞した金大中氏の動きが全くないのは何故だろう?
 米国は現役戦力が減退したため、予備役や州兵を動員してアフガン、イラクに対応しているが、それでも追いつかず、外人を“傭兵?”として採用する有様だから、米国市民権獲得が目的の“流入”者は、キツイ軍務から当然脱走する。その結果、横須賀でタクシー運転手が惨殺された。米国大使や海軍高官たちは腸が煮えくり返る気持ちだろう。
 それはさておき、拉致問題について重村教授は、最大の障害は2002・9・17の日朝首脳会談で、日本側が慎重さを欠いて「拉致被害者の“安否情報”を教えてくれ」と要求したことにあるという。北側は日本からの1兆円の経済支援が欲しいため、「5人生存、8人死亡」と答えたのだが、拉致を認めた失敗もさることながら、日本の世論が激高し、全員戻せ!となったことであり、日本政府の「安否情報要求」を信じて答えた結果がこれだったから態度を硬化させたのであり、日本政府が最初に何故「全員返せ!」と要求しなかったか?という。それは時の小泉首相は「支持率回復」が目的で訪朝しただけから、そこまで深く考えていなかったのだという説には考えさせられた。日本の政治家にとっては、国民の生命よりも「支持率」が重要なのか!
 北は過去の例から「追い詰められれば“応じる”のであり、暴発することはない」という説には同感だが、追い詰めることの出来ないわが外交の欠点は「力=軍事力」がないからである。
 今後この問題の解決はかなり厳しかろうが、話を聞いていてフト思ったのは、北を動かせるのは中国政府以外にはなかろうから、この際胡錦濤主席に一肌脱いでもらったらどうか?ということである。つまり、胡主席が5月に来日しても、毒入りギョーザ問題や、チベット人権問題に反発を感じている日本国民が歓迎することはまずありえない。福田首相も「支持率回復」が狙いだろうから、小泉元首相同様、単なるパフォーマンスで終わりかねない。
 そこで、毒ギョーザ事件の「おわび」を兼ねて、北から拉致被害者を“奪還”してくれることを提案したい。そうすれば、真の日中友好の兆しが生まれるのではないか?勿論、福田首相の支持率も“高騰”するだろうから願ったり適ったりであろう!
 実はこの考えは、数年前の日中安保対話の席上で「そうすれば(拉致問題解決に協力)中国に対する日本国民の考えも変わる」と、私が中国側に発言したことでもあるのだが・・・
 いずれにせよ、北は拉致被害者を送還すれば、極秘情報が漏れるので渋るだろうが・・・
 そんな中、金正日の影武者(今は4人だそうだが)に教授が会った話は面白かった。少なくとも、小泉、胡錦濤プーチンに会った「金正日」は“影武者”だったことがばれているのだそうで、錚々たる国家指導者が影武者に騙された!となればメンツがないから、金正日生存説が続いているのだというが、「事実は小説より奇なり」とでもいうべきか?

 さて、コメントにもあったが、今朝の産経一面トップの「空自イラク活動違憲」判決は「又か」という気持ちにさせられる。元レバノン大使までもが「自衛隊イラクでの活動は外国軍の武力行使と一体化し、武力の保持や交戦権の行使を認めない憲法9条に違反した」とする原告側だそうだから、「だから、憲法を破棄、又は改正して、全うな武力行使が出来るようにせよ」というのかと思いきや、「平和的生存権を侵害された」と云うのだから何をかいわんやである。変な裁判官や外交官が増えたものである。
 自衛官は、任務に邁進すればするほど、こんな国民から「違憲行為」だとして槍玉に挙げられる。しかし、有事には、自衛隊が彼らをも“結果的には守ること”になるのである。何と言う矛盾であろうか!
 大東亜戦争で、身命を賭して戦った日本軍人が、こともあろうに戦後沖縄では「鬼畜同様」な扱いを受け、住民を保護せず「集団自決を強要した」といわれる独特な反戦心理に酷似している。日本人も落ちたものだ・・・
 先日、あたご事件などで「時事評論」から意見を求められ、「戦えぬ武力集団の悲哀」として17枚書いた。その最後に「仏作って魂入れず」との小見出しで、「『教育』と『納税』、それに『国防』は国民の三大義務である。・・・国防は『誰かがやらねばならぬ』崇高な使命であると自覚して、隊員たちは身を犠牲にして訓練に励んできた。厳しい訓練では勿論、災害派遣などでの殉職者は創設以来800名近い。・・・自衛官といえども人の子、正当な評価を受けられないことに耐えられる聖人君子ではないことは当然だが耐えなければならないのである。それは自衛隊の“目標”は外敵だからである・・・」と私は書いたが、今回の裁判で『内なる敵』が存在することも明白になった。そんな非難の中、「迷わず、うろたえず、信じる道を突き進んで欲しい」と私は書いたのだが、年老いた一OBの無責任な独りよがりだと後輩達から言われそうである。


 ところで色々な書籍などをブログで紹介して欲しいと送ってくださる方が多い。今日は2冊の書籍をご紹介するに留めたいが、最初の『魔都の封印を解け』は、94年ミス日本国際親善大使を務め、チャンネル桜でも活躍している女性ジャーナリスト、大高未貴さんの体験的『世界見聞記』であり、実に面白い!

 次の『日本の核論議はこれだ』は、郷友研究所で専門的研究をしているグループによる「核脅威下における日本の国防政策への提言」であり、その中の一人倉田英世氏は防大2期生陸自出身であり、私が外務省に出向していたとき、我が国の化学兵器専門家としてジュネーブ軍縮委員会(当時)で大活躍された方である。日本核武装に関心がある方々にご一読をお勧めする。

中国はいかにチベットを侵略したか

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