軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

災害は忘れた頃にやってくる!

 昨日の能登半島地震は、比較的人的損害が少なかったのは不幸中の幸いだった。今朝のニュースでは家屋などの被害状況が報じられているが、土地柄か、日本家屋の“古民家”の被害が多いようで、それが逆に人的被害を少なくしたと思われる。コンクリートのビルだったら、瓦礫の下で窒息する人が出てもおかしくなかったろうが、木造建築の利で負傷者が少なく阪神淡路大震災のような火災が出なかったのも幸いした。しかし、被災地ではこれからの復興が大変だろう。ご老人方が目立つ様でもあり国の支援を期待したい。

 ところで、書斎整理中の私は出てくる過去の思わぬ“古物”の整理に時間ばかりかかっている始末。昭和40年代の新聞切抜きには「歴史は繰り返す」ことを証明している様な記事が目立ち思わず日付を確認する。雑誌や週刊誌の切り抜きも同じである。案外人間の進歩は遅い?のか同じ地点で廻り続けているのかもしれない。
 
 ところで今朝の「産経抄」は、日米関係がギクシャクし始めたことを憂い、先日亡くなった椎名素夫氏の日米関係修復のエピソードを書いているが、世の中には、表に出ることなく裏で国家に貢献して消えて行った方々がいかほどいることか思い知らされる。過去の日米関係もそうであった。70年ほど前の、日米関係、日中関係を読む限りにおいても、多くの人たちが「犠牲」になっていることが分かる。
 当時の日本は、そんな人々の努力にもかかわらず、回避すべき「日米開戦」に踏み切って、血みどろの戦いをした挙句、東京始め主要各都市を焼き払われ、広島、長崎で“原爆実験”をされ、1945年8月、ついに天皇のご聖断で矛を収めるに至った。そしてその直後、大陸を占領していた日本軍の武装解除に成功した中国国内では連綿として継続されていた国共内戦が復活し、ソ連の支持を得ていた毛沢東が大陸統一に成功、1949年、蒋介石は台湾に逃げた。余勢を駆って毛沢東は引き続きチベットなどを侵略するが、1950年にその間隙を突いた金日成朝鮮半島統一に踏み出した。最初は不意を突かれた米軍は釜山近辺まで追い詰められたが、マッカーサーの反撃で再び38度線以北まで追い返した。ここで漸く米国は「日本を無力化したこと」の間違いに気付き、日本再軍備を命令するが、疲弊した日本は「警察予備隊7万人」の創設でお茶を濁し経済復興に全力を挙げた・・・。簡潔に第二次世界大戦終結後の国際情勢を書けばこんなストーリーになるのだろう。
 つまり、米国は、国際共産主義の「ワナ」に嵌っていたことに気付くのが遅かったのである。日本もそうであった。そして米国は、甚大な人的被害を出した第二次世界大戦は、ソ連共産主義の建設に貢献しただけであったことに漸く気がついた。 しかし、戦後、世界のリーダーに“昇格”した米国は、それまでの「不干渉主義」「孤立主義」を忘れて“世界の警察官”を意識して各地の紛争に介入する。そして「昨日の敵は今日の友」、日米関係は太平洋を挟んだ絶対的な安定基盤として、戦後60年間機能することになる。しかし、日本だけは占領下で与えられた「新憲法」にしがみつき、時代の変化をまともに見ようとはしなかった。その結果、友好国・米国民から「安保ただ乗り」の「ダーティ“ジャップ”」とみなされ、事あるごとに「摩擦」を生んできた。
「その後も日米関係にほころびが見つかるたびに、修復に奔走した」椎名氏はもう居ない。米国側にも椎名氏の秘書であったグリーン氏や、アーミテージ氏らのような「長年の友人達がブッシュ政権から離れたことが、現在の事態を生んだともいえる」と産経抄子は書いた。
 この事態が続けば「今日の友は明日の敵」になりかねない。歴史は繰り返す!災害は忘れた頃にやってくる!
 70年前も、コミンテルンは日中間の戦争拡大を、中国国民党内に潜入させた共産分子に指令し、ついに「盧溝橋事件」で日中開戦に成功した。それでもわが身に危険が迫ることを避けるため、用心深いスターリンは日米間の戦争をけしかけた。そして、あろうことか、近衛政権はその罠にまんまと嵌り、日本政府は、米国政権内に潜入していた共産分子の手による「ハルノート」で、コミンテルンの思いどうりに「日米開戦」に踏み切った。その結果、スターリンが喜んだのは当然だが、毛沢東もほくそ笑んだ。そして念願かなって大陸統一に成功する。朝鮮戦争では、何時寝返られるか分からない降伏した「国民党軍将兵」を、「中国義勇軍」という名目で参加させ、「人海作戦」で米軍の手によって「合法的?」に始末させ、国内の脅威を取り除いた。
 いま、産経抄子が心配するように、日米間の亀裂を喜ぶのは、中国であることは疑う余地は無い。米国下院で問題になっている「従軍慰安婦」問題は、中国工作員の手になる「ハルノート」であろう。それに手を貸しているのが、尾崎秀美・ゾルゲを支援して「日米開戦」に寄与した朝日新聞であるという構造が、まさに70年前の「歴史が繰り返す」事の証明である。
 4月には中国の温家宝首相が来日する。その前の今月末に、ブッシュ大統領の「黒子」であるといわれているキッシンジャー氏が来日し、日本のテレビにも出演するという。彼の来日は何を意味しているのか? 多分、4月末から訪米する安倍首相に何らかのアドヴァイス?をするのであろうが、察するところ、それは「日本再軍備」ならぬ「核武装進言」なのかも知れない。
 6者協議の進展も、北朝鮮如きに振り回されて「大国・米国」のメンツ丸つぶれ、その上、60年間以上も緊密な「安定基盤」であった日米関係がぐらつく要因にもなっている。それならば、いっそその実力も信頼もある日本に「核武装」させて、東アジアのミリタリーバランスを維持させるのが効果的だ、と判断してもおかしくは無い。案外、中国も、対ロシア戦略上からも「黙認?」するやも知れぬ。
 キシンジャー氏来日、温家宝首相来日、そしてその仕上げとしての安倍総理の訪米・・・。こう考えてみると、ぬるま湯につかったような状態であった我が国周辺にも、戦後構造の大きな変化の予兆がするが、こればかりは能登半島地震のように、「忘れた頃にやってくる災害」にしてはならない。