軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

蒋介石日記から何を読みとるか

 ファントム戦闘機時代の体験談・50枚を仕上げていて、ブログに書き込む暇がなかった。
この4日間、愛知県警を始め、この国が直面していることに関する、熱心なコメントを頂き大変勉強になった。残念なのは、海自のイージス艦情報漏洩事件であったが、成り行きに任せるほかはあるまい。どんな再発防止策が取られているかが気になるが・・・。
 この間、男子ゴルフツアーで史上最年少優勝を果たした15歳の石川遼選手の笑顔は、実にすがすがしかった。“金に目がくらんでか?荒んだ大人たちの人相”と並列だったからかもしれない。早稲田の“ハンカチ王子”同様、10代の未成年達には希望が持てる、ということか!
 何時までもこのままの笑顔で!などとは言わないが、せめて目の輝きを失わないで貰いたいものだ。

 23日から、産経新聞で「蒋介石日記」の西安事件の部分が連載されている。米国のスタンフォード大学で新たに公開された中から見つかったものだという。たまたま私は今、平河総研のメルマガにこの頃のことを連載しているのだが、産経新聞社が「蒋介石秘録」を出版したのは昭和50年であった。8巻まで購入したが、その後は転勤転勤でつい購入できず、今になって残念に思っているが、その記録を見ても、蒋介石が当時のこの件に関して「真実」を書いているとは思えない。「西安事件」は、“軍人たる”彼の名誉を著しく傷つけた事件であって、その後国共合作を強いられて、日本軍を戦闘に引っ張り込み、日中戦争を惹起したのだから、日中戦争の最大の原因は、軍人たる彼の「油断と失策」「情勢判断不良」にあったといっても過言ではない、と私は思っている。
 その結果、彼の意に反して、まんまとコミンテルンの罠に嵌って日本と戦い、挙句の果てに「油揚げ」を毛沢東にさらわれて天下を奪われ、部下を捨てて台湾に逃げ込んだのである。彼が如何に悔しかったか想像に難くない。
その点を考慮しつつこの連載を楽しみに読もうと思っている。

 ところで、中国大陸で意外なことが頻発しているようだ。産経新聞23日7面下段に「一人っ子政策で一万人暴動」と小さく出ていたが、24日の3面上段に詳しい記事が出ている。「一人っ子政策“暴走”」「不妊手術強制、法外な罰金」「中国・住民抗議、高まる緊張」と見出しにあるが、中国江西省チワン族自治区での話である。
 2000年秋、私はここを訪れたが、貧困な寒村で、バケツに入れた川魚、雑草のような野菜を売る婦人たちが、人通りの少ない道端に立っていて、ガイド君が「この魚がうまいのです。夕食に食べましょう」といって買い取った。すると他の婦人たちが寄ってきて、自分の商品を勧めるのである。彼女達の表情には、明らかに生活苦がにじんでいた。彼女達にとっては、このように川魚を取る子供は生活のための“必需品”なのである。にもかかわらず政府は一律に「一人っ子政策」を押し付けている。この施策の大きな問題点は、裕福な家庭では、罰金を払って2人3人を育てているという不公平さにある。北京で、いまや年金生活で何不自由ない生活を送っている老婦人を訪ねたが、彼女は党の幹部だったそうで、自ら「一人っ子政策に反して子供を産んだ女性を捕えるのが仕事だった」と自慢した。
「妊娠?」していたと見られる女性が町から消えると、彼女は徹底的に捜索し「江西省チワン族部落まで逃げた彼女を追いかけて見つけ出し、泣き叫ぶ彼女を強制的に堕胎させた!」と得意だった。同行したガイドの若い女性達がこの話を聞くや「毛沢東婆!」と小声で言ったから、それ以降我々は彼女のことを「毛沢東ばあさん」と呼ぶことにした。私は「毛沢東ばあさん」に「生命を宿す同じ女性として、罪悪感は感じなかったか?」と質問したが、彼女は悪びれる様子もなく「私は党の命令を実行しただけで、全く罪悪感はない」と言ったから、ガイドの女性達は通訳した後「この毛沢東婆」と明らかに彼女を軽蔑した。
 更に私は「一人っ子政策は失敗だったから、政府は変えようと検討している」と研究者に聞いていたので、「万一、一人っ子政策が中止になったとき、あなたが捕まえて堕胎させた女性に会った時にも罪悪感は覚えないか?」と質問すると、「全然!」と意気揚々と応えたから、ガイド嬢たちは彼女を睨みつけた。
 中国では「一人っ子政策」のため、子供が生まれた場合、父親方の両親、母親方の両親のいずれもその一人の孫が面倒見なければならないことになる。万一離婚すれば、子供は父方の所有になり、産みの母親の面倒を見るものはいなくなる、という深刻な問題があるのだという。
 万里の長城を見学したとき、わがままで傲慢な子供達が、親にチヤホヤされている姿が多く目に付いた。それは「金属バット少年」を誕生させた我が国の情勢と酷似した風景だったから、同行した先輩に「中国に金属バットを輸出すれば儲かるかも・・・」と言ったら「そうだ、いっちょうやるか!」と笑われた。
 記事には「当局に臨時に雇用された数十人から100人以上の規模の取り締まりチームが、鉄パイプを手にトラックで各戸を廻り、連れ去った女性に不妊手術を強制的に受けさせていた。乱暴された女性もいた。一人っ子政策を破ったとして『男達は200元から1万元(一元約15円)の罰金を住民に支払わせていた』という」とあるから、十年前に「毛沢東ばあさん」が忠実に実行した人道無視の極悪非道行為は今でも続いているのである。
 更に記事には「罰金の支払いに応じなければ『台所用品やテレビ、オートバイなど家財一式、牛や豚など家畜を持ち去る』のは日常茶飯事で、『通学中の女子高生を連行し不妊手術を実施した』という情報さえある」とあるから、“南京大虐殺”の本家だけの事はある。
 米国では、“従軍慰安婦問題”審議は延期されたそうだが、60年以上も前の「金銭授受下に商売として行われた行為」を、マイケル・ホンダ氏始め、針小棒大に歪めて伝える韓国系、中国系の人たちは、21世紀の今、このような“蛮行”が白昼堂々と行われている中国の“事実”にどう答える気であろうか?
 現在も続いている人権無視の実態と、70年前の西安事件の真実を、「蒋介石日記」からどう読み取るべきか?
 隣国の、同じ?アジア人たる我々日本人が、重大な関心を持つべき話題ではある。