軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

海自補給活動に謝意

 いやはや、ブログデザインを自分で“ぶっ壊して”しまった。これが飛行中だったら「ベイルアウト!」もの。カウンターも607万件から一挙に振り出しに戻ったので、友人からお怒りの電話があった・・・。こういうのを「パイロットミス?!」というべきか。
 中には(コメントにもあったが)「ステルス・F−22導入に感謝!」などと冷やかされて面目この上ない。最近、古い記事に、集中的に「英文などの長いコメント」が自動的に貼り付けられていたので、毎回消去していたのだが、中には消去できないコメントもあって、いよいよ中台紛争の前哨戦の「網軍」によるハッカー作戦か?と思ったのだが、所詮退役パイロット、相手にされている筈はないから、やはり今回は自分の手順ミスが原因だろう。今、はてな社の担当窓口に問い合わせているところ。今しばし、読みにくい点を御容赦いただきたい。

 さて、昨日の産経新聞によれば「11カ国駐日大使ら」が「海自補給に謝意」を表明したという。「米、英、独、仏、豪、伊、加、ギリシャニュージーランドパキスタンアフガニスタン」の大使だというが、中でもパキスタン、アフガンというのが光っている。
 その昔、湾岸戦争では巨額の資金を提供したにもかかわらず、クエートから感謝の声は聞かれなかった。今回は、国民は漸くテロとの戦いを続けるべきだ、と認識して海自の活動を支持しているのだが、民主党は「アフガン作戦のための給油なのに、補給を受けた米軍艦艇の中には、イラク戦争に関与しているから、“契約違反”だとのたまっている。
 湾岸戦争が開始された直後、三沢基地司令だった私は、ワシントンから来た大佐達を含む基地の主要幹部たちとの夕食会で、「何故世界の平和のために、自由を守るために、日本は今回の紛争解決に協力できないのだ。日本の憲法が海外派遣を禁じているというのがその理由か?」と真剣に聞かれ、「その通り、尊敬するマッカーサー将軍が作ってくれた憲法に、我々日本国民は忠実なのだ」と茶化したが通じず、「あれから既に40年、いつまでもマッカーサーのせいにするのはおかしい。憲法問題は日本人自身の問題だ。独立したのに何故自分達の憲法をつくろうとしないのだ?」と切り替えされた。そして「自国の憲法を理由に自衛隊を参加させない理屈は分かった。しかし、代わりに出した金の明細書を要求するのはどういうことだ?」と詰問された。
 思い上がった米国人め!というのはやさしい。原爆を落としやがって!というのも分かる。しかし、軍人として軍事的常識から考えると、彼らが明細書を出せという神経が分からない、という気持ちは良く分かる。
 今回のように、海自から補給を受けたある艦艇が、事態の変化に伴ってイラク紛争に関する作戦に出動したとき、海自から補給された燃料を一時抜いて、イラク作戦専用の燃料と積み替える、などという芸当は不可能である。如何に米軍といえども、艦艇数は限られている。
 例えば私が東北に墓参りに行くため、と称してガソリン代を「家内」から出してもらい給油したが、急に大阪にいくことになったからとて、家内は「東北用の燃料代なのだから、お代を私に返すか、それとも燃料を入れなおして頂戴!」とは言うまい。勿論給油以前にそれが分かっていながら「悪用」したとすれば論外ではある。
 この国は、例えば非核三原則を強調するあまり、我が国に寄港する米艦艇は、洋上で核兵器をつみ下ろしてから寄港している・・・などというまやかしが平気で通ってきた国柄、そんな非常識を民主党が問題視すればするだけ「普通の国から遠ざかっていく」という事実を、政治家の皆さんはどう考えているのだろう?御自分が関係している政治資金の流れの透明性を解決する方が先ではないか?

 ところで、同じ産経新聞の27日の「やばいぞ日本」に、中近東から油を運んでいる日本のタンカー「高鈴(28万トン)」が、2004年4月24日に自爆攻撃の標的になり、間一髪多国籍軍に阻止されたことが出ている。
「東京・丸の内の日本郵船本社には、現地から『本船がやられた』との無線連絡が入り衝撃が広がった」という。常時日本のタンカーだけでも4〜50隻がひしめき合っているこの海域だから、何が起きてもおかしくはない。
『日本は法的な制約から、ペルシャ湾の『戦闘海域』に海上自衛隊の艦船を出せない。そこで海自はより安全なインド洋上に補給艦を派遣し、多国籍軍に給油活動している。海自艦が直接的に海上テロを排除できないためにタンカーを守るのは他国依存にならざるを得ないのである」と産経は書いた。
 このような危険下でも黙々と日本のタンカーは油を日本に運んでいるのだが、『日本郵船の関根博さんは、テロ特措法がなくなって日本のタンカーが無防備になることを最も恐れる。『タンカーは危険地域でも行かねばならない。ペルシャ湾内も出来れば海自艦に守って欲しいがそれができないからインド洋で補給活動をしていると理解している』」と言ったが、外国大使が海自に『謝意』を表明する前に、どうして自国の海運関連会社が、海自部隊に謝意を表明する『全面広告』でも出さなかったのだろうか?と不思議でならない。自衛官といえども、懸命に国家のために尽くしているのに評価されないことに耐えられるほどの聖人君子ではない。ごく自然に『ご苦労様』『有難う』と自衛隊に対して言えない雰囲気が自国内にあることの方が私には理解出来ない。
 
 ミャンマーの暴動は、処理を誤ると拡大してアジアの危機に発展しかねない。しかも中国と親しい軍事政権は『僧侶』に発砲してかなりの死傷者を出し、日本人ジャーナリストの長井健司さんが死亡した。
 危険な中近東から油を運ぶ仕事も、暴動を取材する長井さんの活動も、『別に関係ないじゃん・・・』と云う感覚で政治をしてもらっては困ると思うのだが・・・。
 海自のみならず、危険地帯で活動する自国民に対して「尊敬と感謝の念」を忘れるようになったら、それは日本人ではないような気がする。