軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

盛りを過ぎた国

 産経新聞によると、毒入りギョーザ事件は中国が「内部犯行で捜査」中だという。「犯行動機は反日と無関係で、「労働条件や工場幹部に対する不満」だというから、中国国内の捜査も漸く軌道に乗ったようだ。胡錦濤主席の訪日前に解決したいそうだが、何も訪日に合わせる必要はない。一日も早く解決すべきであるが、かの国にとっては国内の不満分子対策が急務なのだろう。福田首相のこれに対する対応が見物である。
 沖縄で「少女暴行事件」が発生して反米勢力が一気に立ち上がった。「13年前の事件の反省がない・・・」という人がいたが、そう、前回の暴行事件から13年も経ったのだ。
 私が沖縄に“急遽”着任したのは、この件で日米関係がギクシャクしていて危険な状態だったのだが、前任者は交代して栄転し、その後任に内示されていた者が“嫌だ!”と言って逃げたから、私が「余人持って替えがたし!」とか何とか理屈をつけて急遽赴任先を変更され、取るものもとりあえず赴任したのだが、今では着任してよい体験をしたと思っている。
 退官後既に11年、沖縄の反戦活動は少しも変わっていない。あの時もそうであったが、不幸な少女をまるで自分達の“看板?”のように扱って、人道的発言をしつつ実は彼女達の犠牲を利用する、そんな形の活動であったから、マスコミに出ない大方の沖縄県人の顰蹙を買っていた。勿論、海兵隊員の暴挙は許されたものではないが、それにしても犯人が「米軍」だから騒いでいるように見えるのは私だけだろうか?これが「アジア系外国人」だったらどうだったのだろう?
 5面のコラムに花岡編集委員が「『反基地』勢力が叫ぶいかがわしさ」として書いているから、これ以上書かないが、政府も聊か感情的にすぎるのではないか? ギョーザ事件やごみ漂着事件についても、これくらいの『対応』を示して欲しいと思う。相手が民主主義国「米国」だと、嵩にかかって文句言う癖が日本人にあるが、何をするか分からない「共産主義専制主義国」には、腰が引けてものも言わないでは困る。
 ところで、9日にロシアのTU-95が領空侵犯した。外務省は厳重抗議したそうだが、ロシアは否定しているという。盗人猛々しいのがこの国の特徴で、いつもこうである。恐れることなく徹底して追及してもらいたい。通称「東京急行」が進出するのは、横須賀の第7艦隊の動きを偵察するためである。産経7面下に、今回は西太平洋を航行していた空母「ニミッツ」の飛行甲板上空600mを飛行して挑発したという。この日飛来したTU-95は4機で、明らかに米海軍の行動を観察しに出てきたものと思われる。

 任務を終了したキティホークは、3月に横須賀を出航してハワイに向かい、空母「ワシントン」と交代する予定である。極東ロシア軍はこれらの米軍再編の動きを偵察してアジア戦略を再構築しているのだろうが、この一件を見ても、オホーツク海を聖域化してSLBMを配備しているロシアが、北方4島を如何に重視しているかが伺えよう。もしも4島を返還してしまえば今回のTU-95も、相当遠回りしなければ東京湾口まで進出できないのであって、下手すれば、日本に返還した択捉島から空自にスクランブルされることさえ考えられるからである。勿論、オホーツク海の聖域化も崩れる。
 同様に、南西方面の下地島に空自が進出すれば、東シナ海航空優勢は大きくわがほうに有利になるから、中国は機会があるたびにそれを阻止している。
 例えば、尖閣を日本領だとした日本人学校向けの教科書を突き返したのも、日本のメーカーに台湾を「台湾島」に変更させたのも、全ては一貫したかの国の戦略なのだが、軍事的考察が出来ない「お人よし日本人」は気がついていない様に思われる。

 ところで話は大きく変わるが、昨日は浜松の戦闘機教官時代にご指導を受けたA団司令に再会して、懐かしいひと時を過ごしてきた。不思議なご縁で「同じ町内」のケアハウスにご夫妻揃って入居されたので、挨拶に行ったのである。
 陸士53期のパイロット、88歳とは思えない記憶力と体力、毅然とした姿は若いころと少しも変わらなかったが、雫石事件当時の団司令だったから、苦労話と裏話で時間が経つのも忘れたほどであった。昔話については機会をとらえて「取材」することにしているが、今日は「ケアハウス」体験談を少し書いておきたい。
 テレビなどではこの手の施設をよく見ていたが、老人介護は老人主体?の社会になるこの国の象徴的な存在であり深く考えさせられた。訪問したのは個人経営の施設だが、田舎の特性からか、実にアットホームで設備も完備している。60人ほどが入居しているそうだが、私も皆さんと共に昼食を頂いて、何と無く“入居した気分”になった。メニューはけんちんうどんだったが実に美味しく、皆さん静かに召し上がっている。車椅子の方が三人、入居者の何組かはご夫婦だという。
 軽度の?認知症の方もいて、ケアする方も大変かと思ったが、明るく親切で、食後に「薬〜」と手を挙げる方がいれば、介護人は「はいはい」と定められた薬を飲ませるのである。
 食堂には電子ピアノもあり、書道クラブもある。それぞれが好きな時間を過ごすそうだが、3時にお暇する時には食堂では「詩吟教室」が始まっていた。
 A司令が「ここは実に設備もよく親切で気に入ったから即断して決めた。君もそろそろ老後を考えておいた方がよい。どうだ、契約して行ったら!」と私をからかった。
 戦後の苦しい時期を懸命に働いて今の我が国の基礎作りをされた方々のこれが現実の姿である。後はお迎えを待つばかり・・・。諸行無常を実感したが、舛添厚労相はその経験者、是非とも充実するよう手腕を振るって欲しいものである。
 ビジネスホテルのようなA司令の個室を拝見して、依然として読書に励み、勉強を続けておられる姿に感動した。「今、宇垣纏、大西滝治郎を読んでいるが、大したものだ」とA司令は言う。机上には「文芸春秋」などの総合誌が置かれていて読書に余念がないようだ。年を取っても、頭を使うことが如何に大切かを悟ったのだが、音楽を聴きながら携帯電話を操作し、漫画雑誌に熱中している身の回りの若者達やサラリーマンの姿に重ね合わせてみて、この国は間違いなく「最盛期を過ぎた!」ことも実感した。
 この施設の入居時の預かり金は350万円、所得に応じて月額91710円からだという。そろそろ「頭金」でも蓄え始めるとするか!と思った次第。

これだけは伝えたい 武士道のこころ

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政治武士道

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