軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

朝日“文化人”の堕落論

 週末から昨日にかけて忙しかったからブログを開ける暇がなかったが、読者間で「炎上?」していて思わず苦笑い、「あまり熱くならないように」と助言したい。とにかく「匿名同士」で非難しあっても解決はしまい。
 さて、月曜日はチャンネル桜で井上キャスターと恒例の「防衛漫談」をしたのだが、この日は朝日新聞の「オピニオン欄」の「ポリティカにっぽん」を取り上げた。
 今日は紙面の一部を提示し要旨をかいつまんで書いておくことにするが、これをご覧になった読者の皆さんはどうお感じになるだろうか?

 文章は「堕落の果て希望はあるか」という坂口安吾の「堕落論」を模したものだが、コラムニストの早野徹氏は「私は一個の政治記者として、現代の世相に思いを運ぶ。中国ギョーザ事件、沖縄の米海兵隊員の少女暴行、そしてイージス艦『あたご』の漁船衝突。これらは、戦後日本の『平和と繁栄』の虚飾がはがれ落ちて、新たなる『堕落』が始まったということではないか。
 『繁栄』の行き着く果て、日本の食糧自給率は40%を割る。中国の低賃金労働者を貪って安く手に入れる。冷凍ギョーザのメタミドホス残留農薬の相次ぐ検出。誰が悪いとかは別に、もっと大きな国家の堕落を感じないか。 一体日米安保条約で守られる『平和』とは何なのか。・・・その夜少女は『そっとしておいて欲しい』と告訴を取り下げ、海兵隊員が釈放されるというやるせなさ
 石破防衛相が『ハイテクの極致』とたたえるイージス艦、ハワイのミサイル防衛の訓練に疲れ、艦長が居眠りしている間に千分の一の『親子船』を撃沈してしまうとは!・・・ 石破氏は『ゆるみか慣れか疲れか。普通の国の軍隊は最高の栄誉があればこそ、厳しい規律で国の独立に身命を賭す』と述べ、自衛隊のもっと栄誉を、今度の事件も本来なら軍事法廷で裁くべきだ、と言いたげな発言もした。そうじゃあるまい、防衛省は『省』を返上して、『庁』に戻って顔を洗って出直しますというべきではないか。 以上、坂口安吾が生きていれば、こんな風に現代の『堕落論』を書いたかもしれない」と書き、第2回『安吾賞』の催しで受賞したアルピニストの野口氏の話で結んでいるのだが、理科系の私には実に難解な文章である。その上写真(コラージュ)をご覧になるがよい。「あたご」が、まるで人食いざめの「ジョーズ」のように岸辺に迫り、群集が逃げまどっている中に坂口安吾の顔写真がダブっている。実はこれが言いたかったのであろう。坂口安吾がこんな文章を書くかどうかは知らないが、少なくとも安吾にとっては迷惑な話ではないか?責任逃れも甚だしい。
 問題になれば朝日幹部は「3日“月曜日”のコラムだから、きっと上司の『校閲』は受けずに書いたものだろう」と逃れる気なのだろう。それにしてもおひな祭りに相応しからぬ文章である、これが「進歩人ぶった朝日文化人の正体か」というのが我々の感想だったのである。

 ところで今朝の産経新聞は一面トップで先日発刊された「トウ小平秘録」が中国税関当局に『輸入禁止図書』に指定されて日本に返送されたという。これほどかの国は『天安門事件』を気にしているのであり人民に隠しているのである。
 4月の胡錦濤主席来日にあわせて、中国政府は日本側と懸命な“調整”をしている最中のようだが、四月来日を成功させ、オリンピックを成功させないと政権が崩壊する恐れさえあるからであろう。とにかく、全ての機関がその目的達成に向けての『統一行動』を取っているのであり、毒入りギョーザ事件は共産党政権維持のためには「起きてはならない事件」であり「起きるはずのない事件」なのである。「トウ小平秘録」返送問題もこの時期に人民に知られては極めて都合が悪いから、下級官僚は指示どうりに「拒否」する。
 おそらく4月の訪日の主眼は「皇太子ご夫妻の開会式へのご招待」にあり、既に水面下の外交交渉では決められているのかもしれない。しかし、毒入り食品で酷い目にあった国民としては「ギョーザ事件未解決のまま」での訪日を歓迎する気にはなれないのではないか?
 真相解明とその結果にもとづいた謝罪がない限りは、今後一切の「中国食品の輸入禁止」はもとより、皇太子ご夫妻の訪中も「拒否」しなければならない。たたでさえも皇太子妃は「ご病弱なお体」である!おそらく福田首相にはその勇気はあるまいが、万一うやむやのままこれらの問題を闇に葬り、中国側の言いなりに終始したら、民主党の絶好の攻撃材料となり、有権者に見捨てられ、福田氏が一番恐れているといわれる「安倍首相よりも短命な政権」に終わるであろう。
 とにかく、我が国周辺ではロシア政権はプーチンの計算どうりに動き、「不安定の弧」の不安定さは一段と増してきている。何よりも今月22日の「台湾総統選挙」は、結果次第では我が国の安全保障上由々しい事態を招きかねない。
 こんな国家一大事が控えたときに、いつも言うことだが永田町は「コップの中の嵐」に現を抜かしすぎてはいないか?
 長くなったので、今日は最後に盟友・宗像隆幸氏の「台湾建国(まどか出版:¥1800+税)」という著書の紹介だけに留めておくが、宗像氏は「存亡の危機に瀕した台湾」という項目の中で、立法院選挙で大敗した民進党が、総統までも失えば、やがて「国共合作」して台湾を基地化した中国は、台湾海峡を領海とし南シナ海を内海化する。そうなれば「日本から南シナ海に面する東南アジア諸国、更にはインド洋を通って日本がオイルの大部分を依存している中東諸国、その先はヨーロッパやアフリカに通じるシーレーンは、全て中国が領海と主張している南シナ海の真ん中を通っている。一旦領海として実効支配してしまえば、外国船にも無害通行権があるといっても、いくらでも通航を妨害できるのである」と警告している。「トウ小平秘録」の輸入拒否程度では済まされないのである。
 空母建造を急いでいるのも、南シナ海支配が目的なのだが、軍艦よりも漁船の通行権を重視する我が国の政府には、そんな発想は絶対に浮かんで来ることはあるまい。政治家には期待できないから、せめて我がブログの読者の皆様方にだけでも是非この本を読んでいただきたいと思う。

やばいぞ日本

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