軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

入院日記 第2幕「極楽篇(その1)」

【登場人物】
1、 Sさん(54歳:トラック運転手。外科「膿腫」で右足を切開手術。入院2ヶ月目のリハビリ中)
2、 Yさん(70歳:職業など不明。内科)
3、 おふくろさん(80歳:毎日見舞いに来るS氏の母親)
4、 Kさん(91歳:食中毒?で303号室の私の右隣に緊急入院してきた方)
5、 老女A(85歳:別室に入院中)
6、 老女B(83歳:上に同じ)
7、 看護師A、B,C・・・

【場所】某市内の個人病院:3階の緊急治療室から4階の病室へ移動
1、 病室401号室は入り口から見て右側と左側にベッドがそれぞれ3列づつの6人部屋
* 左側:入り口からSさん、Yさん、眼鏡をかけた青年
* 右側:入り口からKさん、私、午後退院して空きベッド
* 各自のベッド足側には小型テレビ(カード使用の有料式)が設置されている。
* ベッドは薄いカーテンで仕切られているだけ。昼間はほとんどオープン状態
2、4階の間取りは、中央のナースステーション(夜間は無人)を廊下が囲み、その外側に病室、洗面所、便所、などがあり、南側に、テーブル4つの食堂(飲料水の自動販売機とテレビ(無料))、食堂の隣の小部屋が「喫煙室」である。
5、廊下の隅にはトレーニング(リハビリ用)器材数基放置


 401号室の入り口で看護婦さんが「Kさん、佐藤さんも今日から一緒ですよ」と声を掛けると、白髪の大柄な男性が片目を開けて私を見たので、「303号室で隣に寝ていた佐藤です」と挨拶すると、「ああ、あの煩かった人?」と言った。
私「いや、あれは私の左隣のおばあさんです」
Kさん「おばあさん?」
看護婦「3階は女性専用なので、おばあさんです。佐藤さんとKさんは緊急だったからあそこに入ったのです」
Kさん「そうだったの、あの煩い人は爺さんとばかり思っていた・・・煩くて寝られたもんじゃなかった」
私「私も煩くて・・・」
Kさん「そうでしょ、隣じゃ私より大変だ、私も枕抱えて耳を塞いでいたがだめだったよ」
 ベッドに落ち着くと、反対側から声がかかった。
Sさん「Sで〜す、よろしく願います」
Yさん「Yです」
私「佐藤です。新入りです、どうぞよろしく」
 まるで刑務所の雰囲気である。
Sさん「佐藤さんは何で入院したんですか?」
私「出血性十二指腸潰瘍です」
Sさん「私は右足を膿腫で手術してもう2ヶ月目、今リハビリ中で杖ついて歩き回るので、煩いでしょうが我慢して・・・」
私「膿腫って?」
Sさん「急に右足ひざが痛くなって近くの病院に入院したけど、ますます悪くなって、腿から下が2倍に腫れ上がって処置なし、ここに救急車で運ばれ4日かけて検査したけどここでは手術できないというので、医療センターで手術、そこに一ヶ月入院。ところが毎日見舞いに来るおふくろがバスを乗り継ぎ時間がかかるので、家から近いここに変えてもらった。ここでも既に2ヶ月目、右太ももを50センチ以上も切り開いて膿を出したものだから、なかなか切り口がくっつかないらしい。先生は毎日歩いて筋力をつけるようにというが、何せ今は梅雨時でしょう。院内の階段じゃ物足りないし、外来は迷惑だろうし・・・、天気がよければ毎日午前と午後に病院を出て周辺を歩いています。だいぶよくなったが、まだ杖は取れないの。俺、声がでかくて迷惑かけるが、スンマセン・・・
 俺、トラックの運ちゃんやってるから、 医療センターでは右足切り落とされるんじゃないかって、本当に心配した!今のダンプはみんなオートマだから、左足切られても何とかなるが、右足切られるとすべてパ〜。俺みたいなバカはすぐに生きていかれなくなる。右足切り落とされなくて本当によかったョ。でももう入院3ヶ月以上だぜ。早くトラックに戻りたい、社長に悪いもん」
Yさん「保険は利くの?」
Sさん「それがさあ〜産廃運ぶ小さなトラック運搬会社だけどさ、社長が気利かせてみんな保険に入れてくれていたので、その方は心配なし。社長に感謝したよ」
Yさん「そりゃよかったね。下手すると自分で払うことになるじゃん」
Sさん「ホントホント、それだけは助かったよ。でもよ、3ヶ月だぜ、これ以上は社長に迷惑かけられねーよ。俺のトラックさ〜今臨時のアルバイトの爺さんが乗っているらしいんだけど、65歳で耳が遠く運動神経も悪いらしいから壊されたらやばいよ。社長が早く戻って来いって言うのもわかるよ」
Yさん「しかし、その足じゃまだ運転は無理だろう?医者の言いつけ守って完全に直るのが先じゃ・・・」
Sさん「それは分かっているけどさ、毎日退屈でしょうがね〜よ。それに飯が足りないので、母ちゃんが毎日コンビニで買ってきてくれているんよ。お袋もう80だぜ、申し訳ねーよ」

 看護婦が食前薬を持って入ってきた。既に11時過ぎ、やがて手際よく食事が運ばれてくるが、私以外は皆「普通食」。 私の昼の献立は「糊状のかゆ、具のない味噌汁、コーンスープ、豆乳」
 なんだか童話「舌切り雀」の主人公になったみたいだが、完全管理されたメニューに従い、一日も早くここから“脱出”しなければならない!と考えた。     (続く)

ところで今朝の産経によると、中国で少女暴行事件に抗議して「暴動」が起きているという。
たまたま「中国が崩壊する日」という特集が組まれた「撃論ムック」が届いた。退院直後だったが、私も「『四川大地震』のもううひとつの視点」と題して、中国の核問題について一文を書かせていただいた。前回の『撃論ムック』、「中国の日本解体シナリオ」特集号とあわせてご笑覧いただきたい。来月の洞爺湖サミット、8月の北京五輪・・・2008年危機は継続中である・・・


戦場の名言―指揮官たちの決断

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