軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

世界が辟易する口先だけの「平和国家」

 昨日は史料調査会に出て、斉藤元秀・杏林大学教授の「プーチン・メドベージェフ双頭体制のロシア」と題する話を聞いてきた。
 北京五輪と台湾新総統誕生等、どちらかと言うと中国問題が中心になっていた感があったが、ロシアの新体制も着々と勢力を拡大しつつあることに注意すべきであろう。
 1965年9月生まれの非常に若いメドベージェフ新大統領が、KGB出身のベテラン・プーチン新首相にたてつくことが出来ない以上、当面「スーパー首相・プーチン」体制が継続するのは当然だが、そのプーチンは引き続き「強いロシアの復活」を狙っている。
 経済面では、10%程度に過ぎない中小企業の育成を図り、産業立国への脱皮を狙っているそうだが、その手法は伝統的に“荒っぽく”、外国企業買収を積極的に進めると言うから油断できない。2度訪問したサハリンでそれを目の当たりにしたし、わが企業も「サハリン・2」で煮え湯を飲まされたことを忘れてはなるまい。
 ロシアも中国同様に「汚職と腐敗」が蔓延し、その取締りで苦労しているそうだが、基本的に「法律は守るもの」という“お人よし日本人”とは裏腹に、彼らは「法律とはすり抜けるもの」として行動する。スターリンは「条約は破るためにある」といって、日ソ不可侵条約を破って侵略し、私の生地・樺太を含む北方4島を奪った。そんな国と「交渉」で解決を図ろうとするむなしさを、少しは日本人も感じたほうが良い。国際関係は未だに弱肉強食、「力こそ正義」であり「勝てば官軍」なのである。
 ロシアと中国の接点「中央アジア」は、今後の注目点になろうが、対中武器貿易などで、ロシアの本音が確認できたのは有意義だった。

 さて、国際関係は急激に変化しつつあるが、今朝の産経「正論」欄に伊藤憲一氏が「米国への『依存心』を払拭せよ」と題して、ブッシュ大統領が北をテロ支援国家指定から解除する旨発表したことについて「日本国内には対米不信感が盛り上がった」が、「米国がその意思決定で常に対日配慮を最優先するとの保証はもともとない話であり、ここで対米不信感を募らせるのは、日本人の甘えであり、リアリズムの欠如である。ここで、本当に気づくべきことは、自分自身の立ち姿であろう。相手が誰であれ、アメとムチ、防御と攻撃の両方が揃っていなくては、外交交渉も、ましてや軍事力の行使も成立しない。それなのに日本人は、憲法第9条の名において、ムチや攻撃手段を放棄し、その役割を米国に押し付けて、『日本は平和国家だ』と、はしゃいできたのではなったのか」と書いたが全く同感である。
 そして「少なくとも米国への無意識の依存心を前提にした日本の『平和主義』は、本物の平和主義かと、問い直したいのである。そのような『平和国家』日本には、米国だけでなく、世界全体が辟易としている。そのことに日本人はそろそろ気づくべきである』と書いたが、この『辟易』という言葉に実は私は『ぎょっ』としたのである。
 それは今まで誰にも言わなかったけれども、三沢でも沖縄でも、現役時代に付き合った米軍関係者の多くが『辟易し始めていた』と実感していたからである。
 言い換えれば「米国など、西欧諸国の“友人”は辟易する程度で済むが、ロシアはじめ、近隣アジア諸国などの“反日”分子にとっては、辟易するどころか『これ幸い』とばかりに『侮蔑』することになる」から極めて危険である。1920年代にシナ大陸は混乱を極めていたが、やがて『侮日工作』が蔓延して、泥沼に引きずり込まれた経験がある日本としては、『辟易』されて『侮日』に繋がらない様に“工作”しなければならない筈だが、ムチを使う意思がない以上、困難であろう。
 伊藤氏は、ならず者国家である北朝鮮の暴発は「戦争」ではなく「犯罪」と位置づけるもので、今後ともアメとムチを駆使して、国際社会はならず者を善導していかねばならないのだが、「その時日本は国際社会の一員として積極的な役割を果たすことが出来るのか。日本がアメだけではなく、ムチを持ち、発動する用意のある国となることは、21世紀の『不戦共同体』にとってどうでもよいことではない」と結んだ。
「ムチを持ち、発動する決意」がない「平和国家」が、如何にきれいごとをいっても世界は信用しないし、軽蔑するだけである。
 昭和34年に防大に入校し、健全な国家になることを信じて38年間制服を身につけ、念願かなって戦闘機乗りとして防空に明け暮れたが、期待に反して環境が改善されることはなく、むしろ不健康で救いようがないメタボ国家に転落しているのでは?と考えさせられた。そんな希望のない生活にピリオドを打ち、“民間人”となって既に11年たったが、この国は未だに憲法ひとつ変えられず、集団的自衛権の解釈変更さえ放置し、『専守防衛』『平和国家』を一つ覚えのように唱えている、そんな姿に私も『辟易』している。 考えてみるがよい。30年間放置したままだった拉致被害者救出さえも、日比谷公会堂での全国集会開催後10年を経過するも未だに進展が見られない。こんないい加減な国に「辟易しない」同盟国があるとは到底思えない。

 たまたま、米海軍で教鞭をとっている北村淳氏から、「海の生命線:日本に原油天然ガスが届かなくなる日」という写真のようなハンドブックが届いた。国民が知らない間に、徐々に「大動脈」が締め付けられていく様が、明快に示されていて「ショック「」を受けられる方もあるかもしれないが、世界の海を制する米海軍の中にある北村氏らしい資料がふんだんに提示されていて読みやすい。ムチを持たない国、持っても使う気がない国の末路を示しているようでもある。是非とも御一読願いたい。


 又、梯久美子女史からも「世紀のラブレター」という著書が届いた。「気恥ずかしくなるほど正直で、それゆえに胸を打たれる」数々の「ラブレター」が収録してある。これまた日本人として一服の清涼剤、嫌なことを忘れるにはうってつけ!是非御一読をお勧めしたい。

対日工作の回想

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「反日」以前―中国対日工作者たちの回想

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シナ大陸の真相―1931‐1938

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世界は「憲法前文」をどう作っているか

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憲法の常識 常識の憲法 (文春新書)

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