軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

水面下で何が?

 日本海を試験航行中の、ロシアの「アクラ級」潜水艦が、消火装置の故障?で20人死亡、21人が負傷するという重大事故を引き起こし、港に自力で帰港したが、原子炉などの被害は無く、放射能漏れは無い、という。

洋泉社MOOKから」


 先だって、米海軍の潜水艦で微量な放射能漏れがあったことを通知されたわが国の「平和愛好家達」が米軍と日本政府に厳重抗議したことは記憶に新しいが、今回はどうするのだろうか?放射能漏れは無い、というロシアの発表を信じて?一切ロシア大使館にも抗議しないとしたら些か不公平だろう。それとも日本海のかなただから「関係ない!」と思っているのか、しかし両者公平にやってもらいたいものである。
 ロシアの潜水艦は良く事故を起こす。冷戦の緊張時であった1980年8月に、火災を起こしたソ連潜水艦が、2度にわたってわが国の領海を「侵犯」したが、当時の政府は、事後協議した結果「無害航行事案」として、ソ連に抗議することもなくこれを処理したので、同盟国などから顰蹙を買ったことがあった。


 1985年8月にはソ連海軍は「北海道上陸を想定した」演習をオホーツク海で実施したので自衛隊は緊張したが、国民はあまり知らなかった。



 その年の12月に、ソ連潜水艦の動きが活発だ、という記事を産経が書いたが、販売部数が少ない?からか、国民の目に触れることもなかったようでさほど話題にもならなかった。


 先日は横須賀から米海軍原潜「オハイオ」がどこかに向けて出航していった。


 地球温暖化の影響で、氷が溶け出した北極海では海軍の戦略上の拠点争いと、資源獲得紛争が続いている。


 今、わが国周辺の海中では、日本国民が知らない間に「何か」が進行している。先日の四国南方の不審潜水艦事件?も気にかかる。

 勿論、今回事故を起こしたこの「アクラ級」原潜は、開発が中断されていたものを“リフォーム”して、インド海軍に売りつける予定だったというから、原子力発電協定などで、米国とインドが親密になりつつあるのを警戒したロシアが、軍事力支援でインドとの関係改善を図っているように思える。


 ところでわが「同盟軍」の中から、そんな周辺情勢にお構いなく、緊張感も無くメディアが騒いでいる今回の防衛省の田母神空幕長更迭“事件”に関する意見が聞こえてきた。

 米国では、軍のトップが作戦指揮関係で大統領との意見が合わず更迭されることはあるが、思想信条で更迭されることはまずありえない。軍人といえども米国民、共和党支持者だけではなく民主党支持者だって多い。そんなことでいちいち気に食わないからと更迭していたら、誰も軍人にはならないだろう。
 それよりも、今現実に中東で、インド洋で動いている共同作戦では、例えばP-3を派遣して欲しいとか、給油を続けて欲しいとか言う要望には、だらだらと時間をかけて結論を出すのを渋る日本政府が、クウェートから空自部隊を引き上げるとか、今回のような問題では即日意思決定する豹変振りが理解できない。オバマ政権は、アフガンに自衛隊の派遣を要請するだろう。さて、そのときが見物である、というのだが、自衛隊中国人民解放軍のように国民の軍隊ではなく党の軍隊か?という意見には言葉も無い。

 外国軍がなんと評価しようとかまわないが、それでもやはり情けなく感じるのは私だけだろうか。
 創設以来この方、政争の具にされ続けてきた自衛隊の現実が、国民の目に直接触れることになる明日の国会が見物だが、メディアにも変な小細工をすることなく、公平に放映して欲しいと要望しておきたい。

世界軍事情勢 2008年版 (2008)

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