軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

第一次世界大戦終結90周年慰霊式典

 田母神前空幕長が出席した参院安保防衛委員会の中継がなかったのには失望した。与野党間で田母神氏の言論を制限するため「取引」があったというが、両者共によほど「公表されては困る」ことがあったのかもしれない。
 インターネットで見ることにしたのだが、「メンテナンス中」で視聴不能。何と無く「言論弾圧」もここまで進んだか!と気味が悪くなったが、500通以上アクセスすると「自動的?」に見れなくなるのだという。
 日本の総人口がいかほどか知った上での「設定」なのだろうか?それとも「国会中継」何ぞ国民は見ない、と決め付けて設定したのだろうか?

 夕方になって一部のTVが細切れにニュース報道したが全容は分からない。個人的に「見学」した方から「見事な対応振り!しかし肝心の問題点はしゃべらないように旨く封鎖されていて、田母神氏も不満そうだった」と報告が来たが、詳細は議事録を見てからにしようと思っている。


 そんなことで昨日はTVの各チャンネルを操作してこれを見ようとしていたのだが、BBCの「表記式典」にかかわるLIVEを最後まで見てしまった。

 第一次大戦でヴェルダン(有名な要塞があった)は激戦地となり、9つの町や村は消滅してしまった。このドイツ国境に近い場所に慰霊のための廟が立っている。はじめは住民達有志による慰霊だったのだが、国がこれを管理して毎年荘厳な慰霊祭をしている。
 90周年を迎えた11日、この地にサルコジ仏大統領夫妻、チャールズ英皇太子ご夫妻、それにEU代表が打ち揃って、寒風吹く中で荘厳な慰霊祭が行われた。その実況中継だったのだが、ドイツのメルケル首相は多忙で欠席したものの、欧州議会のペテリング議長(独)、ドイツ連邦参院議員のミュラー議長が出席した。まさに「恩讐のかなたに」である。サルコジ大統領は男女二人の生徒と共に、戦没者の十字架に花輪を捧げ、サルコジ夫人はそっと涙を拭いていた。

 イギリスでも同時刻に慰霊祭が行われ、こちらには生き残りの勇士3人が出席して花束を捧げた。108歳、110歳、112歳という、第一次、第二次大戦を生き抜いた、強運の持ち主であったが、現代の勇士(イラク・アフガンに参戦した兵士)に車椅子を押してもらって献花した。
 最後に112歳のヘンリー・アリンガム氏が前に出たとき、車椅子から立ち上がって自ら献花しようとしたらしく、兵士がしゃがんで気遣っていたが、勿論立てるはずは無く、車椅子から降りようとしたのか両足を突っ張っただけだったが、彼は花輪に顔をうずめて泣き、しばし献花が遅れたので式典は2分ほど遅れた。
 しかし、介添えの兵士は彼の行動をじっと支え、神父も参列者も彼をじっと見守っていた。彼の思いは万感胸に迫ったことであったろう。老い先を考えた彼は、何とかして自ら先に逝った戦友に花輪を捧げたかったに違いない。思わず涙が出たのだが、そんな彼を「式典スケジュール上」強制的?に花輪を取り上げて彼に代わって祭壇に捧げることをしなかった、兵士や関係者、参列者には頭が下がった。

 サルコジ大統領も、神父も、その自己犠牲と奉仕の精神を称え、サルコジ大統領は、第一次大戦に駆けつけてくれた同盟国・米、英はじめ、インド、ニュージランド、中国、ギリシャ・・・など関係各国名を挙げて感謝することを忘れなかった。
 そして「ただただ兵士達への尊敬の念だけである。恐ろしい戦争から人間の良心に訴える教訓を学ぶべきである。いつの日か人間性が勝ることを信じつつ逝った勇敢な、人間性豊かな兵士達であった」と追悼の辞を述べたが、今の日本の「生き残り兵士達」や遺族達が、戦後はあたかも極悪非道な殺人鬼であったかのように喧伝され「肩身の狭い」余生を送ってきたこととあわせ、ただただその落差の激しさに言葉も無かった。



 全国戦没者慰霊祭で、現役衆院議長が両陛下の前で、戦没者達を“非難”するのだから、勇士やご遺族にとっては無念この上なかったことだろう。
 西欧諸国は、戦争慣れしているとはいえ、やはり「先進国」で、アジアはまだそこまで至っていないと痛感した。日本国内でもそうであるから、大東亜戦争で「心無くも」戦いあった日中両国が、このような式典を南京と靖国神社で挙行して、双方の指導者が「不戦の誓い」を立てるような、そんな機運には悲しいながら“絶対に”なれないのだろう。
日中友好」の掛け声は、何とも虚しい「政治的スローガン」に過ぎない、と思う。

 少なくとも日本側からは幾度と無く、卑屈なほど「謝罪」し、天皇自らも「過去の不幸な戦争」について弔意を表されたが、相手はそれを受け止める気はまったく無いように感じられる。社会党員だった村山首相による「談話」もその一環だが、未だに呪縛となって、真相はさておき中国の顔色ばかり伺う風潮が日本全土を覆っているように感じる。
 それよりもまず、敵国人によってではなく、日本人自らの手で、非難?されている大戦経験者や遺族達に対する態度を改めることが必要だろう。そうでなければ、後に続くものは出てくるはずが無い。
 BBCのLIVEを見ながら、孤独な“戦い”を強いられた田母神君の胸中と、それに対応する保身大臣達、なかんずく「ホッケ(魚)の開き」問答で盛り上がったというわが国閣僚達の程度を見て、癪だけれども「欧州は大人」「アジアは子供」「日本は幼児」だと思ったのだが、その根底には確たる宗教心があるか無いかの違いだろう、「ホッケ談義」に盛り上がった日本の閣僚たちが信じている宗教は何なのだろう?とも思った次第。


 今から都心に出て会合、午後は「チャンネル桜」の収録。明日夜の8時から30分間スカパー216チャンネル(無料)で放映されるとの事。全編はインターネットで。