軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

北朝鮮の“絶体絶命”

 26日は史料調査会の理事会、27日は岡崎研で、来日した中国研究員との意見交換会で都心に出かけたが、春休みとあって不景気風もどこへやら電車も駅もデパートも子供連れで賑わっている。

 国際情勢と軍事問題の研究で由緒ある史料調査会も残すところ後4年強、平成25年にはメンバーの高齢化によって「閉店」予定である。毎月一度、「3木会」と称して(財)水交会で研究会を開催してきたが、毎回平均65名の入場者がある軍事研究会は珍しいのではないか?
 ちなみに4月16日は「ガザ戦争と米オバマ政権の中東和平政策」という題で、森戸幸次・静岡産業大教授が講演する。(問い合わせは03−3441−5330)


 中国研究員との意見交換も実に有意義だった。中国と北朝鮮の関係について質問が集中したが、なかなか微妙な問題がありそうだ。空母建造についても同様、中国内でも専門家の意見は「報道」とはいささか違っている。

 国内暴動については「暴動」の定義を問題にしていたが、いわゆる「デモ」や「抗議」を入れると相当な数に上るようで、6月の「天安門広場“記念日”」などなど、予断を許さないものがありそうで、緊張感が伺える。
 地方の公安(警察)や、官僚たちを北京に集合させて「相当な教育」をしているのも興味がある。

 何よりも報道統制をしても、「インターネット」を通じて情報が流れるのは防ぎようがないが、それを「高々13億のうちの2%に過ぎない」という解釈が「大国」らしい。


 さて、北朝鮮の「ミサイル発射」のタイムリミットが近づくにつれて、日本は「臨戦態勢?」に入ったが、戦後60年以上も「平和なうちに」経過したのだから仕方がないとはいえ、「手の内をさらけ出すような」大本営発表や、国内情勢報道には失笑を禁じえない。最も、「なだしお」事故の時に、潜水艦の性能を公開で実施したような「軍事非常識」はさすがに減ったが、「防衛出動事態」ではないにせよ、MDシステムの配備や、PAC−3の移動状況が克明に報道されて、何と無く“お祭り気分”のように感じる。ところでそんな「おおらかな」報道に混じって、PAC−3が国道を移動するのに「陸運局に届出がなされた」という報道があったのだが国民は気がついただろうか?
「当たる、当たらない」の稚拙な論議もさることながら、国家防衛の基本をもう少し国民に“指導”する必要があろうし、国民も我がことだとして真剣に取り組む必要があるのではないか?
いずれにしても「テポドン一発」で日本人の国防意識が変わる!と歓迎するムキには、大いに期待が高まっているに違いない!


 それにしても現役自衛官たちは本当にご苦労なことだと気の毒になる。海上自衛隊の2隻の護衛艦の「海賊退治出動」、インド洋での給油支援活動、今回のイージス艦日本海出動など等、予算と人員削減の中、国はまるで自衛隊が「打ち出の小槌」でもあるかのように、次々に命令を下しているが、24万しかいない自衛官も人間、限界がある。
 シビリアンの方々は、選挙資金調達に全力を捧げるだけではなく、今までの防衛力整備の実態を改めて分析する必要があろう。シビリアン・コントロールを徹底するのであれば、まず自衛隊という組織の実態を掌握するのが基本である。

 しかしTVなどの報道を見る限り、隊員たちは文句も言わずに“粛々と”行動を開始しているようで頼もしい。文句は私と田母神君に任せてくれ!とは言わないまでも、どこかの党首のように「当たるも八卦、当たらぬも八卦!」と揶揄する気持ちは毛頭ない。通常通り、諸官は黙々・整斉と訓練の成果を発揮して、任務を果たして欲しいと思う。


 ところで問題は北朝鮮である。ここまできたら「発射しないわけにはいかない」。そこで発射後の問題は次のようになる。
1、発射成功!
 世界のどこが「評価してくれる?」パキスタン?イラン?アルカイーダ?
2、発射失敗!=世界中へ「恥さらし」
 国内:責任は誰が取る?関係者はびくびくものだろう!
 国外:誰の責任にする?まさか日本のMDのせいにはできまいに。ロシアと中国が支えてくれる?
 米、英、仏は明確に安保理で問題にすると宣言した。様子を見ていたロシアも、27日にボロダフキン外務次官が「北東アジア地域の情勢は緊張しており、発射を自制したほうが良い」と発射を思いとどまるように北に促した。

 先日北の首相が訪中して温家宝首相と会談したが、温家宝首相の“説得”が5日間に及んだことはわが国ではあまり報じられていない。一国の首相同士の会談で「5日間」と云うのは尋常ではない。温家宝首相は「打ち上げ中止」を粘り強く説得したのではないか?と私は思っているのだが、北はそれを無視することになる。両首相の会談裏話はいずれ表に出てくるのだろうが、そのとき温家宝首相は「悍然」という言葉を使ったという。「悍」は「勇ましい」と云う意味もあるが、「猛々しい。荒々しい。乱暴。気短か。せっかち。激しい」等、「悍馬」のように「暴れ馬、荒馬」を表現する。

 それが事実とすれば、中国も今回の打ち上げには「不快感」を表す可能性がある。打ち上げ後の国連安保理事会がどう動くか、大いに興味深い。
 それでも「実行せざるを得ない」北朝鮮の孤立振りが良く表れていると思うのだが、おそらく首領様の病気で、内部統制が機能不十分な状況になっているのではないか?
 さて、朝鮮半島専門家の方々のご意見が伺いたいものである。

本当はどうなの?今の北朝鮮 (中経の文庫)

本当はどうなの?今の北朝鮮 (中経の文庫)

北朝鮮はなぜ潰れないのか (ベスト新書)

北朝鮮はなぜ潰れないのか (ベスト新書)

世界軍事情勢〈2009年版〉

世界軍事情勢〈2009年版〉

世界軍事情勢 2008年版 (2008)

世界軍事情勢 2008年版 (2008)