軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

不穏な中国情勢

今朝の産経8面に「尖閣衝突、船長は監視の毎日」という短信が出た。
昨年9月の尖閣衝突事件でわが巡視船に“体当たり”してVIP待遇で帰国した、セン其雄船長が「事故後漁に出ず、地元当局の監視を受ける毎日」でほとんど自宅で過ごしていると報じている。どういうわけか“英雄だった”ハズの彼は「誰から電話がかかってきたか政府は全て知っている」「(漁は)また日本人(の船)に遭遇したら国に迷惑をかけるので、行きたくない」と語り、「帰国直後に寄せられた見舞金は使い果たし、借金して目の不自由な母親と妻子を養っている」そうだが、かっての英雄は今や罪人よろしく監禁生活を送っているのである。
私はすでに2か月以上前にこの情報を得ていたが、それによると毎日彼は酒びたりで夫婦げんかが絶えないから、「そのうち気が狂うよ」ともっぱら近所の評判らしい。この政府の処置が何を意味するか分析すると面白いだろう。


四川大地震の時には、日本国内からの人的支援は頑強に断ったはずの中国から、温家宝首相が来日して現地を訪問した。恩首相と李韓国大統領と嬉しそうに握手する菅首相は○○丸出しだが、恩首相がもったいぶって輸入禁止リストから「山形、群馬」を除外したと大喜び。しかしこの2県と中国との取引量はたかが知れていることに気が付いていない。北関東から東北一帯を禁止しておいて揺さぶり、大した影響がない2件を除外して恩に着せる、これが国際間の平均的外交交渉術なのだが、菅首相にはそれがわかっていないから何とも無様である。

≪サクランボを試食する3首脳…koLnetから≫


旧ソ連に不法占領されている北方領土についても、私の故郷・樺太初め占守島に至る列島は、国際的には依然として日本領だが、なぜか初めから「4島だけ」に絞って交渉するから今でも返還されないのである。「全てを返せ!」と交渉し、最後の手段として4島に絞るのが国際常識、しかも相手が連邦解体‥で政情不安な時に“脅迫”して初めて意味があるのに、お人よしのわが国は1999年の絶好の機会を逸してしまった。


ところで温家宝首相の目標は、2012年危機に対処する第一歩である様に私には見える。尖閣、沖縄併合の第一歩を震災直後の東北地方に定めた。つまりここでもお人よし日本人の善意をくすぐる戦術に出たのである。


2008年7月に、胡錦濤主席は党の秘密会議で、台湾問題解決のための大前提として、6項目からなる「対日外交策略計画」を決定した。
その1は、東シナ海の海底油田問題で日本に重大な譲歩を行う。その2は、北方4島問題で、日本の主権要求を支持してみせる。その3は、日韓の竹島問題で日本の立場を支持してみせる。その4は、エネルギーとレアメタルなどの戦略資源の日中貿易問題で、日本に有利に手配してみせる。その5は、尖閣問題で限定的な譲歩を行う。その6は、日本が国連常任理事国になる方向を支持してみせる、というもので、核心的問題である台湾併合を邪魔させない意図があった。


しかしその裏では、日本に対する北の軍事的威嚇を適宜利用する。中国人民の中に定着している「反日感情」が、日本の中国に対する投資、および他の経済的利益に損失を与えていると分析、これを抑えつつ日本の各種企業の進出を促進させようと企んだ。今回、特に東北地方の中小企業に対して、現地での復旧をあきらめ、大陸に進出させようとする戦略が見え隠れしている。すでに中国国内では失業者を2億5千万も抱え、6月までに6万8千社の中小企業が倒産するとみられている。
その穴埋めの第一歩として、震災で再起不可能になった日本の中小企業を中国へ誘致する…。大きく報道された温家宝首相の「被災地での献花」はそのための第一歩だとみて差し支えあるまい。

≪宮城で。個人的感情は別だが…=読売オンラインから≫


≪この図との関係が気にかかる…≫


中国は日米中3国間の立場を、米国とは「政治商人との取引」であり、日本とは闇社会でいう「親分子分の関係」だとする。もちろん中国が“親分”である。

原発事故問題でわが政府は右往左往しており、メディアもかかりっきりだが、その隙をついて恐るべき対日工作が進行していると考えるべきだろう。


一方、北朝鮮金正日総書記が極めて異例な長期?訪中を続けている。
金正日総書記は、20日明け方に豆満江を渡り黒竜江省牧丹江を訪れた。金日成前主席ゆかりの地を回ったと報じる向きがあるが、私には金策のゆかりの地に思える。長春に移動した総書記は中国2位の自動車メーカー一汽を訪問し、再び列車で2000キロ離れた江沢民前中国国家主席の故郷である江蘇省揚州に到着した。
ここで2泊してショッピングセンターと太陽光発電設備工場の2カ所を訪問したというが、最大の目的は江沢民に会うことであった。

日が当たらなくなった彼が存在感を示すための行動だろうが、彼の行程を見る限りにおいては、2012年以降の安定した中朝関係を確保すべく、長躯江沢民前主席を訪問することにあった。何故か?
習近平・次期中国主席は江沢民前主席の愛弟子である。彼と後継者と言われる金正恩の関係をつなぐためだろう。
次いで彼が密接な関係を築いてきた胡錦濤主席と北京で会うとすれば、何を話すのか? 双方とも、後継者問題では相当頭が痛いに違いない。

金正日特別列車・南京出発=聯合ニュースから≫

天候異変、水不足、食の危険、三峡ダム問題、毛沢東派の勃興=農民の支持、デモの多発などなど、中国国内情勢は必ずしも安定していない。胡錦濤温家宝体制も、解放を唱え始めている温家宝首相の動静を巡って2012年の交代期を前に極めて微妙である。大陸の政権は動乱で変化してきた。権力闘争が進行している隣国情勢から目を離してはならないだろう。

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