昨日は岡崎研の理事会に続いて、春のフォーラムが開かれた。丁度一年前の29日、私は出血性十二指腸潰瘍で緊急入院し、会合を「ドタキャン」したことを思い出した。あれから一年、おかげさまですっかり?元気になり、徐々に活動を再開しているが、わが国の安全保障環境の進展が遅々として進まないことに、再びストレスが溜まりつつあった。
会場をぎっしりと埋めた参会者も、やはり今の日本の状況を憂えている方が多く、政治家の「挨拶」には賛否両論が渦巻いていた。特に民主党に対しては厳しかった様に思う。それもそうで、国会での党首討論は、議員たちの行儀の悪い野次もさることながら、鳩山代表の歯切れの悪さが理解し難い印象を国民に与えたからだろう。
小沢代表が降板したといっても、民主党の体質が“不変”なことはロシアそっくりである。メドベージェフが大統領になっても、大統領のプーチンが首相になり「院政」を敷いているのと全く同様だからである。
案外読者のコメントにもあったように、この党は「民主」とは看板だけでやる事は「共産主義」なのかもしれない!くわばらくわばら!
しかし、世界情勢を見れば本当はこんな「朝まで生テレビ」程度の党首会談をしている暇はないのである。やむを得ないとはいえ、麻生首相には“友愛主義者達”との実りなき討論とは適度にお付き合いされて、残された時間を有効に使い、遅れている国家安全保障問題の解決に着々と取り組んでもらいたい。
会合の前に私は、北朝鮮関連の解説記事の参考にと外国通信社からの電話インタビューを受けたが、関心は「敵基地攻撃手段」に集中していた。「敵基地攻撃能力の保持は、効果的な抑止力なのでしょうか?」というがそれは当然だろう。
「日本の攻撃能力保持は、現実的な話ととらえて良いのか、それとも“机上を超えない議論”なのか?」と云う質問はいささか理解に苦しんだが、勘ぐれば「いつものように日本政府の口先だけの公約?」という意味だったのかもしれない。
誠心誠意答えたつもりだが、さて、電話だから意思が通じたかどうか。
昨日の産経によると、自民党が防衛大綱提案を了承したが、「海上発射型巡航ミサイルなどの保有を明記し、核実験の監視・情報収集能力の強化も盛り込んだ」そうで、「米国を狙った弾道ミサイルの迎撃など」「集団的自衛権の行使を認める方向性を示した」とある。しかし既に海賊退治に“出撃した”海自艦艇は、自国の反戦団体「ピースボート」だけではなく、広く護衛することを命じられたから、集団的自衛権行使問題は速やかに明確にされなければなるまい。
その他(1)武器輸出3原則の見直し、(2)公海上で活動する自衛隊艦船・航空機の安全確保や領空・公海上空における航空警備の法制化―などが盛り込まれた」そうだから、一歩前進ととらえてよかろう。
さて、今日の産経5面下に小さく《「防衛相補佐官」新設へ改正法案成立》と出ていた。「補佐官の設置は前事務次官による収賄事件など一連の同省不祥事を受けた省改革の一環。防衛相を補佐するスタッフに民間を含め幅広い人材を登用するのが目来で、定員は3人まで。これに伴い、内局幹部が兼務してきた従来の防衛参事官制度は廃止される」とある。これが事実ならば、補佐官にどんな“民間人ら”が選ばれるか知らないが、裁判員制度よりも少しは効果があるのか?と思う。問題は《シビリアン・コントロール》を、防衛事務官が制服の上位に立つかのように曲解して予算、人事権などを乱用してきた悪弊が解消されることになるが、だとすると一歩前進であろう。第一、他の省庁では、「外務事務官」「法務事務官」などの肩書きだが、防衛事務官には《部員》という独特の肩書きがあった。その根源は旧第本営の「海軍部員」とか、「参謀本部員」などの「部員」から来たもので、旧軍関係者には「旧内務官僚が軍の“部員”にいかに憧れていたかを示す名残だ」と失笑していた方もいた。つまり、“軍国主義時代”に、軍人の風下に置かれていた反動だ、と言うのである。こんな「呼称」があること等、国民はもとより他省庁の官僚も知らなかったに違いない。「部員」であろうとなかろうと、「防衛事務官」の中には当然愛国心に溢れている者は多い。同じ《自衛隊員》である以上、制服と力を合わせて国防に取り組んでもらいたいものである。
加えて7面上の「オピニオン」欄に、宮本邦彦氏が《「知日派」頼れる時代の終焉?》として、
1、「知日派」米国人までもが、日本の役割低下を公然と憂え始めたこと。
2、米国、特にワシントンで、日本の重要性低下に関する懸念を共有する層が急速に減少していること。
3、日本の政策決定者たちがこうした危険的状況を問題視すらしていないこと、
の3点を挙げている。
問題はここにあるのであって、その状況は日露戦争に勝利して以降の日米関係に酷似している。
私は、平河総研の《甦れ美しい日本》に「大東亜戦争の真実を求めて」と題して200回以上連載しているが、資料を分析すればするほど、日米蜜月時代から、黄禍論の台頭、排日ムードの発生とメディアの煽りから仮想敵国関係となり、やがて反日親中派のF・ルーズベルトの登場という歴史的経過に似ていると痛感する。
この時も、日本政府は、これらの《排日ムード》を意識していたにもかかわらず、有効な手立てを打っていたとはいい難い。そして支那事変にひきづり込まれ、日米開戦につながるのだが、そんな悲劇を繰り返してはなるまい、と私は感じている。
とまれ、北朝鮮の首領様の2度にわたる“危険なお遊び”で、日本政府も少しは「お目覚めか?」と思わされる記事が続いたので、今年は《出血性潰瘍》で緊急入院しなくてすみそうだ、と何と無く明るい気分になってきた。
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