軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

どちらが“偽善”だ!

 このところ、急に原稿依頼が入って多忙になった。3日も記事を更新しないと、「体調不良では?」と電話が来るので恐縮するが、至って元気だからご安心を!

 昨日一本仕上げたので、後4本残っているが、そのうち2本は「長編」なのでこれからが大変。しかも今夜は「チャンネル桜」の収録である。6月から、以前の時間帯でのCS放映が再開になったので、「防人の道=今日の自衛隊」も今日がその最初の「防衛漫談」になる。何をテーマにするかは井上キャスターとの「現場合わせ」次第である。


 そういうことで今日は「馬鹿馬鹿しいお話」に「喝!」を入れておきたい。


 昨日の産経新聞5面に「クロマグロ食べないで!?」という環境団体の抗議記事が出ていた。英国の日本食レストランが「乱獲による絶滅の危険性を理由に環境保護団体の抗議を受け」クロマグロ料理が姿を消しつつある、と言うのである。「象徴的なターゲット」になったのが日本人シェフ・松久信幸氏が米俳優・ロバート・デ・ニーロさんらと世界展開している高級日本食レストラン「NOBU(ノブ)」だそうで、「国際環境保護団体グリーンピース(本部・オランダ)の抗議で、ロンドンの2店でクロマグロを使った『サシミ』『トロ』などのメニューに『クロマグロは環境上種の生存を脅かされています。店員に別のものを頼んでください』との注意書きを載せた。店員は代替魚としてキハダマグロを勧めている。ノブは世界10カ国に18店を出しているが、英国以外の店ではまだ注意書きは載せていない」という。

 ところがそれに対してグリーンピースは「偽善だ。ノブは絶滅寸前の種(クロマグロ)を販売していることを恥ずべきだ」と主張し、漁業資源保護を訴える映画でも『ノブ』を槍玉に挙げているという。「環境保護団体がクジラに続いてクロマグロの保護に力を入れ始めたことで、日本の食文化への風当たりがますます厳しくなっている」と産経は結んだが、冗談じゃない。これは「営業妨害」そのものではないか?

 では誰かが洋食レストランに行って「牛は優しい生き物、人間と共存していますが生存を脅かされています。店員に生き物以外の野菜だけを頼んでください」とメニューに書き込んだら、彼らはどう反応するだろう?自分らが食っている牛や豚や羊は良いが、魚類は駄目と言うのは独りよがりの『偽善』ではないのか?


 22面の「Re:社会部」欄に、海賊対策でソマリア沖に展開している海自艦艇が、五月中旬に「民間団体『ピースボート』の船を護衛した」ことに触れ、「ピースボートは海自派遣に反対していますが、隊員は淡々と護衛しました。団体事務局によると、護衛を受けた理由は「国土交通省から指導された」「地中海と北欧を巡るのが旅の目玉で、航路を変更できない」からだという。都合が悪くなるとすぐ「他人のせいにして」逃げるのが彼らの特徴である。
自衛隊の任務に反対ありきの主張には耳を疑うものも少なくありません。ピースボートを設立した辻元清美衆院議員が所属する社民党福島瑞穂党首の発言もその一つです。
「迎撃ミサイルが目標に当たったら、残骸が落ちる。市民に被害はないといえるのか」。先の北朝鮮弾道ミサイル発射に備えた政府の迎撃方針に福島氏はかみつきました。迎撃後の残骸より、ミサイルや部品がそのまま落下した場合の被害のほうが甚大であることをどう考えているのでしょうか」と記者は皮肉ったが、福島氏には「バカも休み休み」言ってほしいと思う。

 その昔、築城基地勤務時代にナイキミサイルを見学した付近住民が、「発射したブースターが○Km以内に落下するそうだが、物凄く危険だ。我が家もその範囲内にある。ナイキ部隊は撤去して欲しい」といってきたことがあった。

 私は「落下するブースターはいわば“ドンガラ”、ナイキを発射する時は、ソ連爆撃機が侵入して爆弾を落とすときだ。あなたの家に落ちてくるのがソ連の爆弾が良いか、それともブースターのドンガラのほうが良いか、どちらだ?」と問い返すと「そりゃ、ドンガラのほうが良い」と言った。
「その通り、万一ドンガラが屋根に落ちて瓦が破損しても、防衛庁は丁寧に修理してくれる。ソ連は絶対に直してはくれませんよ」というと、「班長さん、そうならないように頑張ってください」と握手して帰って行った。

 福島女史と握手する気は毛頭ないが、児戯にも悖る程度の低い論議を神聖な「国会の場」でやって得意になっているのかと思えば、○○につける薬はない!と痛感する。
「主義・主張はいろいろあっていいと思います。ただ、団体であれ政党であれ、『自衛隊の任務に反対しましょう』と賛同を求めるなら、下の句を添えることも忘れないでいただきたいものです。『皆さん、守ってもらえなくても文句は言いませんね』と」と(尚)記者は書いたが当然である。
 人員削減、予算削減で自衛隊だって忙しいから、手が回らない。だから「守る優先順位」をつけないと、とても任務達成は不可能だろうから、部隊では救助対象の「過去の言動」を参考にさせていただき、救助順位を決めることにしたら良い。いい歳をした大人たちが未だに「偽善」で食っているようだが、いい加減に止めるべきである。


 ついでだが、今朝の産経25面下に「南アフリカ南端の喜望峰近くの浅瀬に5月30日、55頭のゴンドウクジラが乗り上げた(写真)」という記事が出ている。ダイバーらが救出を試みたが失敗。「衰弱を避けるため同日、約35頭が銃で射殺された」という。専門家によると「最も人道的な安楽死の方法」として頭部を銃で撃って死なせたそうだが、35頭のクジラたちは『人道的な安楽死の方法』であることを納得し、了解した上で殺されたのか?

 人間のエゴに過ぎないのではないか? 一方的な屠殺とどこが違うのだろう? グリーンピースはこれを認めるのか?
残りのクジラのうち10頭は『ストレス』で死んだそうだが、ストレスであることを誰が証明したのか? これまた人間様の身勝手な思い込みではないのか?

 別に個人的な信念でクジラたちを救助することに文句を言うつもりはない。「人道をクジラに適用する方々」にむしろ“敬意”の念さえ覚える。しかし私が気にしているのは、これが『絶滅に近いクロマグロ』だったら、保護団体はどうしただろうか?と思っただけである。
 クジラを『愛する』ことは出来ても、人間同士でありながら、異民族の食文化を排斥するグリーンピースピースボートのような人間が多いから、この世から『戦争はなくならない』のである。

福田恆存評論集〈第12巻〉問ひ質したき事ども―言論の空しさ

福田恆存評論集〈第12巻〉問ひ質したき事ども―言論の空しさ

福田恆存戯曲全集〈第1巻〉

福田恆存戯曲全集〈第1巻〉

自衛隊風雲録

自衛隊風雲録

国防論

国防論

武徳教育のすすめ

武徳教育のすすめ

戦争は無くならない (1984年)

戦争は無くならない (1984年)