金曜日は航空雑誌社でF35選定について対談してきた。軍事機密は別にしても、国は機種選定の大筋をよく説明すべきことを痛感した。
さらに、国内産業の活性化についても配慮すべきで、単なる≪買い物計画≫論議であってはならないだろう。メディアももっと突っ込んだ議論をしてほしいものである。社会部的感覚ではなく防衛、経済両面の感覚で…
≪F35=ロイター≫
土曜日は靖国会館で第4回国防講座を担当したが、土曜日でしかもみぞれ交じりの悪天候にもかかわらず、30名の方が集まって下さった。中には長野から駆け付けてくださった方もいて感激した。
私の十八番?である「国際軍事関係論」の基礎である「地球は丸い!」というお話なのだが、やはりまだメルカトル症候群?が残っていると痛感した。
さて、今朝の産経は一面トップで≪防衛大、任官辞退で250万円徴収へ 26年4月入校生から 「授業料」相当分≫と報じた。
≪防衛省が、防衛大学校の卒業時に自衛官への任官を辞退(拒否)する学生や卒業後任官しても6年以内に退職する自衛官から、一般国立大学の授業料・入学金相当分の償還金を徴収する制度を導入することが21日、分かった。国防や国際貢献、災害派遣など自衛隊の活動は増え続けており、できるだけ多くの幹部自衛官(将校)の確保が必要と判断した。新制度は平成26年4月の入校生から適用する。徴収額は最大で国立大の4年間の授業料・入学金に相当する約250万円とする方向だ。志願者への周知が必要なため24日召集の通常国会に、新制度導入のための自衛隊法改正案を提出する≫という。
“辞退者”は「平成22年度(23年3月)の卒業生397人のうち12人が辞退。21年度は364人中17人▽20年度は431人中35人▽19年度は415人中26人▽18年度は421人中10人」だというから、もっと早くから適用すべきだったと私は思っている。
昭和34年入校時の学生手当は月3900円で、500円もあれば東京まででられた時代だったとはいえ、ありがたいことであった。今は月額10万8300円、年2回に分けて期末手当計約31万9千円が支給されるというから、衣食住が完備している以上、恵まれているというべきだろう。
我々ロウトルは正式には「学卒」ではないが、平成3年度からは学士号が得られるようになったので後輩たちは「学士様」である。
一朝有事の際には「身命を賭す」仕事だから、高いのか安いのかは判断にもよるが、「医官を育成する防衛医科大学校では、任官辞退や任官後9年以内に自衛隊を退職する場合、教育費の一部を償還金として支払う制度がすでに存在」していた。
例年『任官拒否』が報じられる3月になると、卒業生の一人としてなんとなく納得がいかなかったものである。
さらに“任官拒否組”とレッテルを張られた同窓生たちの立場も微妙だったに違いない。防大教育が厳しい、信念に会わないというのであれば、早々に退学すべきであって、中には当初から“それ”を意図して入ってきていた者も察せられたし、専攻学部の教官と示し合わせて?企業に引き抜かれたものもいた。
当時は左翼運動が激しかったこともあって、企業にとっても≪札付きの優良株≫を取るのは有益だったのである。
中には学生時代に≪愛国発言≫を繰り返していた先輩が、卒業と同時に大企業に入り、その理由が“彼女”から自衛隊は嫌いと言われたからだ、と聞いた某教授が怒り心頭に発していたこともあった。
空幕教育課長時代、国税で育てられた恩を忘れて、仲間から去っていく行為は許し難い。後に続くものに対して悪影響があるから、相当の学費を徴収すべきである、と課長会議で意見を言ったが、これを管轄する“役所”は、最初からそう規定すれば、希望者が激減して、優秀な人材が確保できない、と言ったものだ。
今回「国防や国際貢献、災害派遣など自衛隊の活動は増え続けており、できるだけ多くの幹部自衛官(将校)の確保が必要と判断した」というが、時代とともに見解が変わったということか。
何はともあれ、今後“任官拒否”する者も、胸を張って部外者になれるのだから、ストレスがたまらないだけいいだろう。防大教育を糧にして「部外」で国家のために尽力してくれればいいのである。
≪防大卒業式=防大ホームページから≫
ところでイタリア中部沖のジリオ島付近で豪華客船コスタ・コンコルディアが座礁した。この事故ではスケッティーノ船長が「乗客らより先にジリオ島に避難しているのを沿岸警備隊関係者に見とがめられ」その無責任ぶりに非難が集中しているが、私は海自の先輩が遠洋航海でドイツに行った時、ドイツ人が日本海軍士官だと知って、「今度はイタリア抜きでやろう!」とビールで乾杯した逸話を思い出す。
第2次世界大戦欧州戦線では、ドイツ軍が同盟国に相当足を引っ張られて苦戦を強いられたからである。4000人の乗員を放置して逃げだした船長が母親へ電話し、「ママ、悲劇が起きた。だけど落ち着いて。僕は乗客を救うため頑張った。少しの間、ママには電話できないだろう」と話したという記事を読んで、当時のドイツ軍の苦労が思いやられた。国民性はいかんともなし難いが、日米同盟を振り返ると、集団的自衛権も解決せず、普天間問題は15年間も放置したママの我が国もこのイタリア人船長並み?に思われているのかもしれない。
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