軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

ラビア・コーデルさん講演会

 最近は都心部に出るのが億劫になった。何よりあの人ごみ、電車内のエチケット欠如風景、特に今は夏休みとあって、子供の躾ができない親たちの傍若無人ぶり・・・

 精神衛生上よくないので、気にせず読書しようとするのだがなかなか熱中できない。そんなときは乗客の人相を観察するのだが、私が子供の頃に周辺にいた「大人達」の顔は存在しない。
 戦後だったから身なりもよくなく、皆歩いて通勤、通学したものだが、そんな中にも笑顔の挨拶があったし、大人達の子供に対する躾があった。勿論他人の子に対しても・・・。社会全体が機能していたように思う。
 大人は、われわれ子供にとっては『大きな存在』だったが、今はそんな頼りになる大人は全然見当たらない。どこに行ってしまったのだろうか?


 そんな時、テレビニュースで「精神年齢引き下げ・・・」と聞いたから驚いてボリュームを上げると、『精神』ではなく『成人』だった。
 そうだろう、これ以上精神年齢が低くなったのでは、マッカーサーの“日本人12歳論”を修正しなければならなくなる。20歳から18歳に引き下げるという案が出されたそうだが、いやはや、そうなれば「大人」ではなく実質的「小人=未成年」が増え、社会全体が「未熟社会・・・」ということになる。
 これじゃ、『弱肉強食』の世界を生きぬけまい。
 とにかく身の回りに『未発育日本人?』が目に付くようになった。母親を殺し、次女をつれて沖縄まで逃避行した、アンナ表六玉が増えることになるだろう・・・
周辺諸国にとっては、よだれが出るような環境になる!


 昨日の午後は猛暑になったが、靖国神社に参拝し、出版社に行き、夜は市ヶ谷で表記の講演会に参加した。
 作家の水谷尚子さんが最初に『ウイグル問題の背景』について解説し、続いて『今、ウイグル人に何が起こっているか』という題でラビア・カーディル女史が講演する予定だったが、31日の米議会に出席することになって急遽米国に戻ったから、前日撮ったDVDが約50分間放映され、彼女の日本に対するメッセージが紹介された。
 続いてご主人のシディック・ハジ・ロウジ氏の体験談を元にしたメッセージを聞いたが、報道と生の声を聞くのでは全く違った感覚で深く感動した。話の中に「ヤポーニ、ヤポーニ」と何回も『日本』が出てくる。アジアの仲間だとして日本に痛切に訴えているのである。

 ロウジ氏の生々しい弾圧や拷問体験の証言もさることながら、
1、今やウイグル人は自国語のウイグル語を失う寸前である。
2、民族浄化は凄まじく、14歳から25歳の女性がすでに30万人、就職という名目で内陸部に“連行”されているが、これは北朝鮮による日本人拉致と同じである。
3、一人っ子政策ウイグル人の人口は急減している。
という証言は、極楽トンボの今の日本人には全く理解できないに違いない。


 そしてロウジ氏の次の言葉は強烈な印象に残った。
1、弾圧の限界を超えた時に、どんな優しい者でも爆発する。
2、七月五日に「素手で中国軍の戦車に立ち向かった」ウイグル人の若者たちを誇りに思う。
3、共産主義者はウソをつく。全てがウソである。中国政府が真実を言ったら、地球は別の地球になる!地球が二つになる!(大きな拍手が沸いた!)


 ロウジ氏は今回二人を日本に招いてくれたことに感謝しつつ、日本政府に次のように要望した。
1、ウイグルが中国に侵略されてはや60年になる。日本は戦後経済大国になったが、早く『政治大国になって欲しい!』
2、中国軍のトップが、中央アジア3カ国に軍隊を進駐させて、ウイグル人テロリストを退治する準備は万端整った。後は国連の指示を待つだけだ、といった。日本はこれに深く注意を払って欲しい。


 毛沢東によって侵略されたチベットウイグル国民の血を吐くような訴えを聞いても、“政治大国ではない”わが国政府が何もできないのが情けない。
 大戦中には、ナチスの迫害から逃れんと日本大使館に避難した多くのユダヤ人を、領事や東條関東軍参謀長が日独同盟を“無視”して列車で東方へ逃避させ、日本経由で米国に亡命させたことは有名だが、果たして今、ウイグルチベット人の悲劇を救うほどの豪胆な人物は日本にいるだろうか?


 まさに今、チベットウイグルで、中国軍は『南京大虐殺』を実演しているのである。その実行者は中国軍自身であったことを自ら証明しているのである。このことをこれらの事件から日本人は知らねばならない。誰が虐殺行為を“好む”民族であるかという事を。人種差別も、白人対黒人・黄色人種ではなく、アジアでは黄色人種自らが少数民族に対する差別を行っているのだという現実も直視すべきだろう。
 チベット問題や今回の問題の裏には、国共内戦ならぬ、北京派と上海派の熾烈な権力闘争があるのだが、その犠牲になっているのがこれら少数民族という図式なのである。その詳細については今朝の産経7面『正論』欄に、『ウイグルの陰に権力闘争あり』と評論家の鳥居民氏が鋭く指摘している。
 また、産経2面に、中国の核実験で『ウイグル人死者は数十万人』だという記事がある。
 以前から札幌医大の高田教授らがその事実を確認していたのだが、国内のメディアは全く無視して来た。NHKの「シルクロード」絶賛番組につられて多くの日本人が現地観光に出かけたのに、NHKは核実験の被害などを黙殺してきたとして、公開質問状を出しているが、今回、この高田教授らの合同調査結果を、米国の科学専門雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』7月号が掲載したので、高田教授の研究が“認知”されたのだろう。「ウイグルの核」問題を報道すれば、中国から何をされるか分からないから怖いのである。
 日本のメディアは、自らリスクをものともせず真実を語ろうとはしないが、外国機関・メディアの指摘にはからきし弱いから、いずれ今回の“暴動”の真相も、このようにして世界中に公になるときが来るのだろうが、それでは今その惨禍の中にいる人々は余りにも悲惨であり、不運だったで片付けられるべきものではあるまい。
 国連が、紛争解決のための有効な機構だと錯覚している民主党幹部や日本人は、チベットウイグル事件で「綺麗ごとを言っても国連の実力はこの程度」であり、自らに降りかかる火の粉は自ら払わねばならないという事実を自覚しなければならないだろう。ウイグル人の血の叫びを『平和で何不自由なく暮らしている』日本人はどうとらえたか。


 会場は600名を越す超満員だったが、熱心に聞き入る若者の姿が目立ち、講演後のロウジ氏に対する拍手は鳴り止まなかった。せめて『拍手』で日本人の気持ちを伝えたかったのであろう。私も嬉しかったが、こんな日本人だけだったら、何時でも都心に出かけてくるのに、と思った次第。

 しかし、政治大国になり得ない日本の現状では、国民がお役に立ちたいと思ってもなすすべがない。何よりも、自分らの『同胞』が30年以上も北朝鮮に拉致されているにもかかわらず、政府は同胞を救出する勇気も意欲さえないのだから・・・

 ただ、そんな中で、中国政府がカーディル女史とロウジ氏の日本入国を猛烈に妨害しようとしたにもかかわらず、日本政府がそれを無視してビザを発給したことである。これには嬉しかったし、その勇気を高く評価したい。中国でも宮本大使が呼びつけられ、クレームをつけられたそうだが、ならば8月15日に麻生首相靖国に参拝して『報復』すべきだろう。


 秋の総選挙までは時間がある。有権者はこれらの実情を正確に分析し、日本の将来の道を誤らないようにすべきだと思う。


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