軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

お灸を据える?据えられる?

 原稿3本を抱え、時間の制約を受ける毎日だが、総選挙を控えた“不気味な”国内情勢もさることながら、半島情勢など国際情勢の動きは急速だと感じる。


 5日夜の国家基本問題研究所主催の定例会は満員の盛況だったが、自民と民主の「マニュフェスト」の分析が中心だったからか、質問者が「ますますわからなくなった・・・」と言ったのが面白かった。マニフェストに「交代させなければならない」ほどの大差はないからであろう。

 全般に、本質を見失って「なあなあ」の政治をやってきた自民党に対する批判が極めて強いので、政権交代は避けられない・・・という雰囲気だが、私には「政権交代する理由」がさっぱりわからない。


 例えは悪いが、車を買い替えるとして、そこには「現在使用中の車」に燃費が悪いとか、家族が増えて狭くなったとか、何か「不都合になった理由」がなければ買い換える気が起こらない筈である。
 ただお金が余っているから3台目、4代目を買う、などという方は別にして、やはり「買い替えの理由」があってしかるべきだろう。


 そう考えると今回の政権交代の理由は、車で言えば「古くなって見場が悪い」程度に過ぎない様に思う。動かなくなったのならいざ知らず、結構動いているし、見場だってそう悪くはない。買い換えるほどの問題ではないようにも思うのだが、気分転換に「新車」にしようというのだろうか?
 しかし、車だったらハイブリッド等、新しい車があるし、税金も優遇されているからいいとして、政権の“買い替え”ほうは、何のメリットも無いように思えてならない。「新車」には程遠いし、「ハイブリッド」でもなく、せいぜい税金の優遇が「あるかもしれない」程度だろう。
下手をすると結果的には、買い換えた車が「欠陥中古車」だったりして・・・。文句を言おうにも会社は倒産?してドロン、という事にならねばいいが・・・

 会場を埋めた皆さんの雰囲気は、「とにかくだらしない自民党にお灸を据える!」というもののようだったが、桜井理事長が言ったように、自民党に「お灸を据える」と思って投票した結果、お灸を据えられるのは国民自身だという事に気がつかねばならない。有権者はそのことを自覚する必要があろう。「欠陥中古車」だとわかったとき、責任が取れるのか?
 自民も民主も「欠陥だらけ」というのであれば、政界再編成の道が残されている。投票まで後3週間、日本の将来がかかっている。


 ところで、クリントン元大統領の「二人の拉致被害者救出劇」は、久しぶりに「ジョン・ウェイン」の西部劇を見るような気がした。他方、拉致被害者総数が400人に上るといわれているわが国は、そんな活劇を指を銜えてみている無力な観客に過ぎなかった。なんだかんだと米国にたてついてみても、これが現実の姿である。悔しかったら自分で片付けろ!といわれるのがオチ、60年前に、この国とがっぷり四つに組んで、血みどろな戦いをした「大日本帝国」も、だらしなくなったものだと思う。

 クリントン氏が日本人拉致について発言したそうだが、金正日は無言だったという。60年前はあの国は日本の属領だった・・・。そして今彼は、北半分に「擬似天皇制国家」を築いてその首領様に納まっている。

 日本人同胞の命を救うため、と口では言う政治屋さんも、今は自分がリストラされるかどうかの瀬戸際だから、同胞の命なんぞ構っては居られないらしい。

 米国と日本の違いは、強力な核を含む軍事力を持っているかいないかの差だけである。いや、やる気もそうだが、経済力も互に大きく低下している。こんなことで本当にいいのだろうか?


 話は変わるが、梯久美子さんから「昭和20年夏、僕は兵士だった」という書が送られてきた。一気に読み上げたが、戦後生まれの“戦無派”の彼女が、実によく取りまとめたものだ、と感心する。そしてこの書に登場する俳人金子兜太氏、考古学者の大塚初重氏、俳優の三国連太郎氏、漫画家の水木しげる氏、建築家の池田武邦氏の5人の方も、その凄惨な戦いの体験談を淡々と語っている。今まで、戦友たちの無残な死に様を封印してきたのであろうが、それぞれご高齢、今や「語り残しておくべき」と達観して、すべてを語っているような気がする。つまり後に続く若者達に対する「遺言」に思われる。この夏、特に若い方々に、当時の同じ世代の方々の生き様を知ってもらうため、是非読んでもらいたいと思う。

昭和二十年夏、僕は兵士だった

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散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道 (新潮文庫)

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世紀のラブレター (新潮新書)

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