鳩山首相のブレが止まらない。普天間移設問題は3月にはめどがつき、5月には決着するといったにもかかわらず、全く進展せず、米側は先の日米合意案を譲ろうとはしない。あれだけ自民党政権時代に合議を重ねて落ち着いたのだから、いまさら白紙に戻せまい。勿論、東アジアの安定とミリタリーバランス維持、そして万一の際の米海兵隊の行動を最優先する軍事的合理性が最優先するのだから、軍事音痴の素人案とも言うべき民主党案には馬鹿馬鹿しくて付き合ってはいられまい。しかしそこは“大人”だけあって顔に出さずに耐えている。いつまで耐えられるかは問題だが・・・
31日の党首討論で、鳩山首相が『命懸けでこの問題に体当たりで行動し、必ず成果を挙げる』「腹案を持っている」と発言したため、閣僚はじめご当地・沖縄県が混乱している。しかし仲井真知事が上京して「腹案発言」を質そうとしたがはぐらかされた。
この問題の発端となった当時の橋本首相による普天間返還発言は、地元地主抜きで決定されたから、地主会は大混乱、13年も年月を費やす原因になった。今回の鳩山首相の思い付きによる「腹案」も、それと同様現地を混乱に陥れるだけであろう。いずれにせよ協力してきた沖縄県民までも怒らせてしまった。自縄自縛である。
県外移設などという飴玉をちらつかせたのだから、今度は自民党時代のように何とか辺野古沖に移設するというぎりぎりの案も出来ないだろう。
民主党案は、キャンプシュワブ陸上部に新設、ヘリ部隊は鹿児島県・徳之島に分散、最終的には勝連半島沖を埋め立てて人工島を建設するという雄大な構想だが、この案自体が既に検討段階で否定されてきた二番煎じに過ぎない。知事はじめ、県民が了解しまい。問題は鳩山首相が“隠している”「腹案」である。おそらくこれも「嘘」だろう。思いつきで「腹案」と言っただけ、詐欺師まがいで自縄自縛、これで首の挿げ替え時期が近づいた。
今日の産経新聞はこの件について、≪それでも首相は1日夕、首相官邸で記者団に「腹案」の真意を問われると、『政府の考え方は私自身の腹案だ。私は中身に関してひと言も申していない。私の言葉で混乱を来しているとは思わない・・・』こううそぶいた≫と表現した。
遂に新聞記者諸君も愛想を尽かしたらしく、自国総理は「とぼけて、知らん顔をする」男であり、「偉そうに、大げさなことを言う」男だと認定したようだ。我々のような無責任な“評論家”が「うそぶく」というのならいざ知らず、れっきとた全国紙がこう書いたのだから少し驚いた。
ところでこの問題について、ようやく産経が裏の実態を書き始めたようだ。1日の3面に『同盟弱体化』という連載があるが、移設候補地に挙げられた徳之島では土地の買占めが行われているという。
今までこじれてきた辺野古沖移設でも、名護市がこれを受け入れると表明したことに伴い、「政府は沖縄本島北部地域への振興策として、道路、港湾の整備などのため毎年100億円を投じ、既に770億円が使われた」と報じた。
野党時代の民主党はこれを『アメとムチ政策だ』として批判してきたが、政権をとると「北部活性化交付金」という名目で22年度予算には70億円のアメを盛り込んだ。
在沖縄米軍基地の土地所有者に支払う借地料としては約910億円が計上され、事業仕分けの対象にもならなかった。そして防衛省元高官の次の指摘が実態の一部を表している。
「国からさまざまな名目で、沖縄に落ちる金は他の地域の反発を恐れ、総額は公表されたことはないが、年間6千億円以上に上るだろう。国会議員も地元業者達もみなこの利権が目当てなんだ」
ある県議は「結局は利権の付け替えなんだ。勝連半島沖の埋め立て案を実施すると大規模工事になり、巨大な利権構造が生まれる。現政権は県民の負担軽減より、普天間移設でうまい汁を吸おうとしている」
私が沖縄勤務だった時、青森・神奈川など、米軍基地を抱える県知事が橋本首相に直談判に行ったことがある。危険と騒音を抱えているのは沖縄県だけではない。我々の県も米軍基地を抱えて状況は同じだが、沖縄は騒げば騒ぐほど金が落ちる。安全保障と防衛に理解を示し、共存共栄している我々だけが損をする。我々も騒ぐぞ!というわけである。
沖縄県は辺野古沖に移設する案を呑んで、ようやくその“浅ましい根性”から決別する寸前だったのだが、民主党政権のおかげで、再び利権亡者に立ち返ろうとしているように見える。
鳩山首相の『腹案』がどんなものか知らないが、本当に持っているのであれば、早く案を示してこれ以上沖縄県民を苦しめないようにすべきである。何よりも、これは国内問題ではなく、長引けば長引くほど国際的非常識国家の烙印を押されかねない問題だからである。
昨夜は久しぶりにチャンネル桜で防衛漫談をしてきたが、話題は鳩山首相個人の指導力不足と「優柔不断な性格」に尽きて、真面目に話すのがあまりにも馬鹿馬鹿しく感じられた。往復の電車内の国民の表情も、お花見の季節であるにもかかわらず実に冴えない表情である。金と女に汚い“性悪政府”によって、言論の自由が束縛されたような暗い雰囲気が国内に漂っている・・・
31日の産経抄子は「宇宙人」というあだ名を持つ首相の「独特の風貌といい、常識人には理解し難い言葉の軽さといい、誠にぴったりで命名者に敬意を表したいが、最近の言動を聞いていると『バカボンのパパ』と呼びたい衝動にかられる」と書いた。
今朝の産経正論欄には、三木光範・同志社大教授が『今大人になるための条件は』と題したなかで、「重大な危機に鈍感な日本人」と書いている。
「われわれは、往々にしてニュースで騒ぎ立てる目の前の小さなリスクには敏感に行動するが、静かに増大する重大なリスクには鈍感である。望ましくない状況を冷静に見つめ、最善の行動を取ることこそ、泣いて助けを求める子供ではなく、責任ある大人の態度である」
日々の変化が小さいとさほど気にしないが、1年前、5年前、10年前と比較して、その変化の大きさに驚くことは「茹で蛙理論」に似ているが、正に民主党政権のこの7ヶ月間余の施政を見てみると、徐々に恐るべき変化が積み上げられていっている様に感じる。一刻も早く正常な事態に戻さなければ、気がついたときにはすでに遅いというころになるだろう。
その意味では『今大人になるための条件は」ではなく、『今全うな日本を取り戻すための条件は』何か?を改めて考察すべきであろう。
おそらく普天間問題が5月の期限切れを迎えても、鳩山首相はまたまた理解不能な言葉遊びで逃げるに違いない。「命懸けで、体当たりで」といっても、ご本人はその言葉の意味を知らないのだから、全くその気はないのである。
“名門”鳩山家を3代目のボンボンが潰すのは一向に構わないが、2700年の歴史と伝統を誇る日本国を潰されたのではかなわない。5月に交代するのが世のため人のためだろう。
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