軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

法廷で明らかにしてほしい!

 尖閣事件のVTRを“流出”させたとして、神戸海保の43歳の保安官が名乗り出たという。いずれこうなることは予想できていたことだが、政府は「国家公務員法守秘義務違反」で取り調べ、逮捕する予定だという。
海保には彼を擁護する激励の電話などが殺到しているらしいが、さもありなん。国民の今回の事件に対する政府の行為に対する不信感が高いことを示している。

就任したばかりの馬淵大臣が、「VTRを厳重管理せよ」と指示したのが根拠らしいが、こんなもの、秘密指定にする方がどうかしている。


現役時代、パイロットは悪天候下をスクランブルしてソ連機を監視しつつ証拠写真を撮影し、情報幹部に提出する。情報班で分析し「貴重な情報」を入手する時もあるが、時には一般航空雑誌のほうが鮮明なものを掲載している事があった。

要は、わが方の能力が察知されないように配慮するのが世界各国軍隊の常識であり、その点さえ注意すれば、あとは国民に知らしめるべき性質の写真であったから、若いころの私はよく上司に対して「公開すべし」と具申したものであった。

苦労して撮影したパイロットは当然、少しは評価してほしいから、新聞やTVのニュースで公開されることを期待したものである。
最近は「広報活動」の一環として公開されるようになったが、産経くらいしか紹介してくれないことが多い…。その理由は≪自衛隊の広報活動には協力しない≫という不文律?がメディアにあるからだという。


自衛官だって人間、一生懸命任務を遂行して、評価されないことに耐えられるほどの聖人君子ばかりではない。その点では今回の海保隊員ほど“むなしく”感じた公務員はいなかったであろう。真面目な人間が処罰され、いい加減な無責任政治家が勲一等じゃ、筵旗の一本でも立てたくなるだろう。



もっとも今述べたように、我々の方も情報班員が、苦労して撮ってきた写真に「秘」と赤いハンコを押して金庫に入れておしまい!だったのだから、「秘文書」はたまり放題だった。

秘密漏えい“事件”が起きるたびに、メディアから「防衛庁は何でも秘にして隠す体質がある。公開すべし」とたたかれたものである。


今回の海保の事例は、まずこのVTRが正式に「秘密」に指定されたものだったのか?その価値は十分にあるものなのか、の検討が必要だろう。
担当大臣が「厳重管理せよ」と言ったらすべてが「秘」扱いになるのだったら、海保もかっての防衛庁並みに「秘文書」であふれかえることになるだろう。発言メモから始まって、VTR,DVD、CD,FD…、際限なく秘のハンコが押され続ける。
野党時代には、国民の知る権利を振りかざしてきた民主党が、政権をとるとこのありさまじゃ、国民の政党とは言い難い。


いっそのこと、43歳の保安官には気の毒だが、法廷で信じるところを堂々と証言し、むしろ「国益のために公開した行為」であること、首相と官房長官が「何に“配慮”して公開しなかったか」という、根本問題をあぶりだすべきである。


当然、北朝鮮の不審船に警告射撃した時公開されたVTRと比較して、どこが「秘」に当たるのか、政府に説明させるとよい。
きっと元ゲバ学生たちは「秘」だから「秘だ!」というに違いないだろうが、それじゃ我々パイロットが苦労して撮影してきたソ連機の写真に、機械的に「秘」の赤いハンコを押して金庫に隠し、期限が来たら焼却処分していかにも仕事をした気分になっていた、当時の情報班員たちと少しも変わらない。


法廷で、堂々と国民の前に信念を“公開”してほしいと思う。9割近い国民が支持している。
中には法治国家である以上、法を順守するのが公務員だ、とわかったようなことをいう者がいるが、何のために法律があるのか知らないようだ。「憲法残って国滅ぶ」ことを優先させる気か?それを「法誹」という。
今回起訴?されたら、何のために法律、規則があるのか、徹底的に法廷の場で論争されることを期待したい。ついでに公務員には「不服申し立て」が出来、審査請求ができることを書いておこう。

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