軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

新防衛大綱=軍縮大綱!

憲法改正をも視野に入れた自民党案は、政権交代民主党案の“たたき台”になったようだが、やはり換骨奪胎、軍縮されてしまったようだ。

航空雑誌から所見を依頼されていたので、気を付けてニュースを見ていたのだが、断片的な情報はあるものの、まとまったものは見られなかった。それもそうで、きょう閣議決定されたのだから。
しかし、16日の段階で「Chosun−Online」(朝鮮日報)がいち早くわかりやすい図で報じていたから、民主党政府は日本の新聞社よりも朝鮮日報社にサービス?するのか?と勘繰った。


≪「動的防衛」を目指す日本、海自・空自を増強:新「防衛大綱」今週中に閣議決定≫とのタイトルで、

陸自兵力:15万5000人→15万4000人。
戦車  :600両→390両
火砲  :600門→400門
空自戦闘機:260機→現代化を推進
海自潜水艦:16隻→22隻

とわかりやすい表が入っている。


新大綱の「動的防衛」という標語も聞こえがいいが、要は機動部隊構想である。いざという時には、月光仮面よろしく変幻自在に戦場に駆けつける?構想らしいが、過去の戦訓ではほとんど役に立っていないことが多い。
戦争には相手があり、相手はわれの行動を妨害することに努めるから、沖縄戦大本営が米軍の侵攻先を読み違えて、沖縄守備の主力であった第9師団を台湾へ引き抜いたのだが、引き抜かれた第9師団の補充は沖縄に送られることなく、約束は空手形に終わった。
そしてその責任はだれも取らず、現地では住民を巻き込んだ激戦で、牛島中将以下わが将兵は玉砕した。きっと無念だったことだろうと思う。今でもその“たたり”からか沖縄はもめごと続きのように見える。

どうも民主党は、このような戦史から戦訓を得るのは不得手のようだが、空想漫画はよく読むらしい。


それはともかく、防衛大綱が策定される度に防衛予算は削減され、主戦力は減少の一途をたどってきているのだが国民は知らない。大綱の巧妙な本文を読んでもわからないからである。要約された「大綱別表」を読めば“軍縮”の実態がよくわかる。

51大綱から07大綱、16大綱と時がたつにつれて、
陸自定員:18万人→16万人→15万5千人と削減され今年は15万4千人に。
海自護衛艦:約60隻→50隻→47隻→?
空自戦闘機:約350機→300機→260機→?と軍縮され続けてきた。


国際情勢、とりわけ我が国周辺情勢は今後予断を許さない。私が2012年危機を唱えるのも、今後の東アジア情勢は、直接我が国の安全保障を左右すると予想するからである。

「百年兵を養うは、一日これを用いんがため…」などといっても、元ゲバ学生主体の民主党首脳には理解できないだろうな〜


51大綱によって、防衛力整備目標が定められ、極東ソ連の著しい増強を踏まえた「56中業」、つまり「昭和56年度〜60年度の間の防衛力整備計画」策定時に作業の末端に携わった一人として言わせてもらうならば、例えば完成時に到達する防空能力は、F-15部隊が6個飛行隊、予算オーバーな分を現用のF−4EJ:4個飛行隊を「能力向上」させて延命し、作戦用航空機を約400機に増加させるというものであったが、一度たりとも目標の400機には届かず、うまい≪文言≫でカバーされて「おおむね達成」と言い逃れてきた。
万事この調子だったから、現場は苦労に苦労を重ねたものである。
例えば政府専用機としてジャンボ機を2機導入したが、運行を担当する空自の定員は増加されなかったから、各部隊から≪寄せ集めて≫業務を遂行した。

とにかく現場は≪知恵≫を出して任務を遂行するものだから、上は「やればやれるじゃないか!」という認識しか持たなかったのである。
今回の20年先を見渡した?大綱も、これ以上に激しい削減を決定したようだから、周辺諸国、特に中国は笑いが止まらないだろう。何しろこの国には「野戦軍司令官」(最近『1兵卒』に自ら降任したそうだが)を送り込んであるので、その成果が出たと思っていることだろう。


いまだにこのような防衛軽視状態が続いている、というのが「新大綱」に対する私の所感である。現役諸官、本当にご苦労様!

ただ、天安号沈没事件で「僕たち戦争は嫌だ!」とインターネットに流して、避戦を訴えたお隣の兵隊さんたちのようにならないでほしいと思っている!しかし、ガダルカナルインパールじゃあるまいし、いくら『精神力』でカバーしても、限界はあるだろう。それが気がかりである…



さて昨日、面白い本が送られてきた。「西尾幹二ブログ論壇」という「ネット言論のきわどい魅力を存分に発揮」した本で、これからのインターネット言論の行方を考えさせられる。

私のこのブログからも、西尾氏と秦郁彦氏の田母神事件に関する論争に対する意見が取り上げられているのだが、大好きだった雑誌「諸君」を潰す原因を作ったのが、秦氏らのような言論人だったという部分。

とにかく、この夏入間基地で「俺を誰だと思っている!」と隊員の胸ぐらをつかんだ民主党代議士がいたように、自分の間違いを指摘されたら「貴様それでも広報室長か!俺は内局の部員だった!まだ友人が内局にいる」と暗に人事上の脅迫をしてきて、それを無視していたら上司に手紙を出して「誹謗する」ような偽善者の著作は、やはり淘汰されるべきものの一つだと思う。これからはインターネット社会がこのような偽善者に対して厳しい目を光らせていくということだろう。


勝手気ままな私の「ブログ」だが、その点だけは無責任であってはならないと自戒している。

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