軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

南シナ海波高し!

昨日は史料調査会の勉強会で、「福島原発事故の教訓とエネルギー戦略」という元三菱原子力工業常務取締役・小倉成美氏の話を聞いてきた。
講話の後、原子力発電の今後の在り方について活発な賛否両論の意見が出たのが、世の関心を示していて興味深かった。講話の中で「脱原発」を打ち出したのが「ドイツ・イタリア・それに日本」という図式は、米国など原発推進諸国、つまり連合国に対峙する「日独伊」枢軸国か…という比喩が面白かった。


ところで今朝の産経トップ記事は「米海兵隊、豪北部に駐留」「2500人規模・中国牽制を強化」である。記事には≪オバマ米大統領とオーストラリアのギラード首相は16日、キャンベラで会談し、豪州北部ダーウィンに新たに米海兵隊を駐留させることで合意した。来年半ばに第一陣の一個中隊約250人を展開。将来的に最大約2500人まで拡大する。オバマ大統領は会談後の記者会見で「米国がアジア太平洋地域への関与を強化していることを明らかにするもの」≫
≪米海兵隊の本格的な豪州駐留は、戦略的、経済的に重要性が高まるアジア太平洋地域に対する米軍のプレゼンス(存在)強化の一環。海空軍の近代化により、南シナ海やインド洋で存在感を増す中国を牽(けん)制(せい)する狙いがある≫とあるが、米国は本気で対中戦略を構築し始めた。2匹の龍は同じ海に住めないのである。
記事に「ダーウィン空軍基地」と出ていたが、日本人のどのくらいがこの地名に聞き覚えがあることだろう。

昭和17年2月19日、南雲中将率いる空母・赤城、加賀、蒼龍、飛龍を中心とした第1航空艦隊は、ジャワ攻略作戦を支援するためここを空襲した。当時はポートダーウィンと称したが、カムラン湾を出港した主力・第38軍は蘭領スマトラ、ジャワ島を攻略し、川口支隊は英領ボルネオに向かった。つまり当時の帝国陸海軍も、南方の資源を確保するため、南シナ海を制覇したのである。当時の“敵”は米、英・蘭・豪…、日本も気宇壮大だった!あれから70年、歴史は繰り返しつつあるらしい。米国は本気である。

≪「大東亜戦争全史(原書房)から≫


これに対して中国外務省の劉為民報道官は16日の記者会見で「軍事同盟の強化と拡大が時宜にかなった行動か、議論の余地がある」と不快感を示したらしいが、本音は米国の行動が事前に全くつかめていなかったかららしい。
どこかのご老人も「俺は聞いておらん!」とお冠だったようだが、中国でも胡主席や軍上層部も「情報が遅い!」と怒髪天を衝いたのだろう。
それで米国に対抗したわけでもなかろうが、米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」(電子版)によると「中国政府はイランを中東における軍事基地として構築し、米国との対立陣営の重要なパートナーとして位置づけている」という。


その強大な人民解放軍内では、兵士が銃を持って脱走した事件で揺れているらしい。一名逮捕、3名射殺されて収束したかの感があるが、人民解放軍江沢民率いる近代的な武器を装備した公安警察“軍”とは不仲で有名である。その警察官から軍人が射殺されたのだから、軍としては名誉丸つぶれ、というところか。
その上、彼ら兵士の家族は所在不明 出身地は厳重封鎖されているというから、何かがあったと中国国内では勘繰られている。

16日付の大紀元時報によると、≪中国東北部吉林省で9日早朝、中国軍兵士4人が武器を所持し、グループで脱走を図り、3人が射殺された事件について、当局の公表がない中、様々な情報が飛び交っている。ラジオ・フリー・アジア(RFA)の報道によると、脱走兵の1人の実家がある村には公安警察が進駐し、外部の人の出入りはできなくなっている。また、脱走兵と思われている兵士の家族は所在不明になったという。中国当局は、4人が脱走した理由や、名前、逮捕の詳細、現在の生死などの関連情報を一切公表していない≫と報じている。


昨夜私に入った情報では、兵士たちは“満州人”で普段から漢族に抵抗心があるという。そのうえ、入隊間もない3人の若い兵士たちの実家が、強制立ち退きで取り壊され、その際内1人の兵士の姉が“強姦”されて殺されたというから尋常ではない。
これに復讐するため銃と弾丸を持ち出したのだが、23歳の上官も3人に同情して復讐のために参加したが、自宅までタクシーを使ったことが不運、途中で見つかり射殺されたらしいという。

一人っ子政策の中国ではただでさえ青年たちは兵士になりたがらない。しかし貧しい地方からは入隊してくるのだが、入隊した後実家がこんな仕打ちを国から受けるのでは、愛国心なんぞ生まれるはずがなかろう。ただでさえも民族対立の根は深いのである。


数年前、日中安保対話で台湾問題を討議した時、中国の上陸部隊は台湾海峡を突破できないだろう。青年たちの血を無駄に流すことになるからおやめなさい、と“ゲンメイ”ならぬ「表明」した時、かの国の専門家は、地方から集めれば2〜300万人はすぐに調達出来ると言い放ったものである。
堤防もアリの一穴で崩れるという。巨大な組織である人民解放軍も、若い兵士達から成り立っているということを忘れては、いずれ内部から崩壊することもあるというべきか。


我が国を取り巻く「近海」では、70年まえと同様、覇権を競う2国の「攻略作戦」が作戦準備段階に入りつつあるのに、わが国の指導者?の言動を見ていると、「すべて世はこともなさそう」で本当におめでたい。穏やかな良い国に生まれたことを親に感謝しているが、さて、覇権を狙う軍事大国のはざまにいることを忘れてはいないか?
化石燃料のルートが遮断、その上脱原発では、ランプの宿のような素朴で自然にやさしい生活がまっている。先を見越して「ろうそく」でも売ろうかな〜
わが国には、既に連合艦隊も強力な空母陣で構成された南雲機動艦隊も存在していないのである。

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