軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

自衛隊法を読んでみたら?

今朝の産経一面に、「官舎値上げ、地方で逆効果 自衛官の入居率低下も 有事・災害時の即応性懸念」という記事が出た。
財務省が昨年11月に発表した国家公務員宿舎の家賃値上げで、地方で活動する自衛隊員の官舎への入居率が低下する懸念が強まっている≫というのだが、如何に国防=自衛官の存在を忘れた決定だったかがよく証明された記事だろう。
官舎費値上げは「消費税増税を前に公務員優遇批判をかわす狙いがあった」そうだが、小泉政権時代にも『予算削減は防衛費も聖域ではない』とて、一律に削減されたため、今その後遺症が現れている。そんな時に限って3・11や尖閣問題で、猫の手も借りたい状況になるのが皮肉である。
≪有事や災害時の部隊即応性を損なうと防衛省自民党が反発。値上げが逆に税金の無駄遣いを招く可能性も出ている≫というのだが、こんなことを事前につかめなかった政府の作業部会?が愚かだったということだろう。
口先では国防重視を叫び、自衛隊を重用している風を装っているが、やっていることは真逆なのに気が付いていない。
これは常々、制服と私服、そして政府との間のパイプが詰まっているからだと思われる。


現役時代、六本木にあった防衛庁に緊急事態で非常呼集された自衛官は、どのような要領で駆け付けるかが問題になったことがあった。
都心部自衛官用の官舎は少なく、皇居守備には市ヶ谷の連隊しかなく、特に幹部は埼玉、千葉方面に自宅を構えていたから、片道2時間以上もかけて私鉄で駆け付けねばならない。しかし私鉄もJRも早朝深夜は動いていない。だから主要幹部はほとんど集まれないから、これで一朝有事の際に国が守れるのか?と言う疑問が生じたのだ。
今や皇居守備部隊は練馬と習志野以外は無くなったから、有事にどうする気だろう?

だから環境が悪い六本木を捨てて市谷に集めた? いやいやこれはトクトク会計上のうまみを予測した当時の政府が移転させたもので、その動機は「国防」ではなかったことは巨額の予算で建設した中央指揮所を、何ら生かすことなく取り壊したことが証明している。
そして今や跡地には歓楽街はじめ企業が集結した…


自衛隊は白書に書かれているように、我が国の防衛を担当する組織である。
従って厳しい規則で縛られているのだが、さて、政府関係者は関連法律に一度も目を通したことがなさそうだ。
≪国家公務員宿舎をめぐっては、民間の相場よりも格安だとの批判を浴び、民主党政権が値上げを決定した。財務省は平成26年4月から宿舎の家賃を最大2倍まで値上げする。賃料収入は約280億円から約550億円に増すと見込む≫


これを算盤だけではじいた「とらぬ狸の何とやら」という。確かに都心部の「家賃の官民格差」は著しいといえなくもないが、実動部隊が展開する地方では格差は小さい。…全国の国家公務員宿舎全体の46%は自衛官が利用している」が、
≪北海道では、家賃は現在2万円程度だが、財務省の方針通りになると3万9千円程度になる。一方、道内で同じ程度の広さの民間マンションが都市部でも7万円程度で入居できる。民間に入居すれば2万7千円の住宅手当が入るので、自衛官の負担は官舎でも民間でも大差がなくなる。その上、通勤手当もつく。
道内の官舎に入居する隊員へのアンケートで、家賃を値上げした場合、家族も含めると2万328人のうち4割の8680人が官舎から民間に移ろうと考えていることが判明した。
基地から離れることで、まずは非常招集に間に合わないなど危機管理の問題が発生する。さらに「自衛官が減ると子供も減る。地域の崩壊につながる」(山口氏)と地元自治体は危機感を募らせる≫
と産経は書いたが、即応体制を強調した自民党からは、≪防衛計画大綱への提言で「即応態勢を求められる自衛隊員の職務の特性に鑑み、官舎料については格別の配慮」を求めた……財務省は財源確保を理由に自衛隊官舎の適用除外を最小限にとどめたい考えだが、党国防関係議員は「官舎を離れた隊員への住宅手当と通勤手当でかえって支出が増える。財務省は本末転倒だ」と指摘する≫とある。


財務省幹部は忙しくて読む暇はないのだろう?が、自衛隊法上、自衛官には、
●指定場所に居住する義務 (自衛隊法第55条)
●職務遂行の義務 (第56条)
●上官の職務上の命令に服従する義務 (第57条)
●品位を保つ義務 (第58条)
●秘密を守る義務 (第59条)
●職務に専念する義務 (第60条)
という「6大義務」が課せられている。
勿論、よく知られるようになった次のような「宣誓文」を朗読して、署名捺印をする事も義務付けられている。


≪私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います≫


其の他に、「自衛官の心がまえ」という昭和36年6月28日に制定された●使命の自覚●個人の充実●責任の遂行●規律の厳守●団結の強化
という5つの徳目が列挙された精神教育の準拠もある。
一般公務員とは異なり、自衛官はこれほどがんじがらめなのだが、国民はほとんど知らない。メディアが報じないからである。
官舎費値上げによって、入居者が減るという現象は、6大義務の第1項目の「指定場所に居住する義務」に“違反する”ことになる。
そうなれば、2項以下の義務が果たせなくなるのは自明だろう。上官の命令に服従する義務と品位を保つ義務には無関係かもしれないが、秘密漏えいも防げまい…


関係省庁が縦割り行政であることの弊害の典型例だろうと思うが、これじゃ防衛省は任務を遂行できない。
防衛省には頑張って予算を獲得してほしい。地方はもとより、特に都心部においても重要だ。
「百年兵を養うは一日これを用いんが為」であることを財務省には忘れないでほしいと思う。
大臣愛読書の「ゴルゴ13」には、「ワイマール憲法」同様何も書いてなかっただろうな〜〜

その他、今朝の産経には示唆に富む事件や記事が多かったが、今日はこれだけにしておきたい。


ところで8月15日が近付いてきた。今年こそ総理を筆頭に各大臣うち揃った靖国参拝が期待されるが、6年前の様にこれをスポイルすれば、今度こそ大きな災いが降りかかることを覚悟しなければならないと思っている。
靖国公式参拝こそ、シナや半島からのいわれなき中傷を跳ね返す“絶好のチャンス”なのだから、安倍総理には毅然と実行して、自著の「美しい国へ」に書いた「闘わない“腰抜け”政治家に」に自分がならないようにしてほしい。
「わたしは、常に『闘う政治家』でありたいと願っている」という安倍晋三氏の言葉を信じた私は、前回は完全に裏切られた。
だから今度こそ、前回のような「有言不実行」を繰り返してほしくない、と願っているのである。

≪まかさ忘れはしまい…私はいつもそばに置いている!≫


そこでご参考までに、私の真意の一部を書いた「若者たちよ、靖国で英霊と語ろう!(ジャパニズム:第14号:30ページ)」をご紹介する。
尚、同誌の漫画「ストレンジャー(146ページ)」は、南混団司令時代に書いた私の中編小説をもとにして、漫画家のあびゅうきょ氏が連載してくれているもの。ついでにお楽しみあれ。
また、SAPIO(2013・9)の「90歳になった帝国軍人25人『最後の証言』」も併せてご一読あれ。イデオロギーに関係なく、靖国に参拝したくなるだろう。


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