軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

猫だましに惑わされるな!

「まさかの猫だまし2発 全勝守った白鵬、苦言も“どこふく風”」
これは昨日の大相撲で白鵬栃煌山に対してとった戦法だが記事はこうだ。
≪…立ち合い。持ち前の馬力にかけて突進した栃煌山の顔の前で、白鵬はパチンと両手をたたく。まさかの奇襲「猫だまし」。さらに左に動き圧力を避け、残されて再び向かってきたところへもう一度パチン。虚を突かれた相手を右四つに組み止め、最後は寄り切った。

 2度繰り出したまさかの戦法に、北の湖理事長(元横綱)は苦虫をかみつぶしたような表情だ。「やられる方もやられる方だが、やる方もやる方。稽古場でふざけてやるのならいいが、全然見本じゃない。横綱だから負けていたら笑いものだった」。最高位に立つ人が用いる策ではない。…(産経)≫


ここで横綱の品格などを語る気はない。相撲は日本の文化であり、神道につながる神聖なものだ、などといっても日本人ではない力士に通じまい。


これと同様な事態が起きていることに、日本人はどれほど気が付いているだろうか?と言いたいのだ。


今やTVも週刊誌も、こぞって【パリテロ事件】特集中だが、はるか欧州で起きている殺戮事件よりも、わが国にとって重要なことは、眼前に起きているシナの侵略だろう。一点に集中すれば、全体像が見えなくなる。「パリ事件」を活用して、“彼ら”は対米軍事戦略上のかなめを急ぎ整備中なのだ。

それは南シナ海東シナ海は彼らの対米戦略上のかなめであり、やがてこの海域に展開させようとしているSLBMのための海洋進出を急いでいるのだ。

日本列島の南側にSLBMを配備できれば、対米政策上、この海域からワシントンを狙うことが可能になるからだ。赤サンゴ盗掘事件はその前触れだとみるべきだろう。

≪シナの領土(領海)拡張は、対米戦略上「核心的利益」なのだ。=SAPIOから≫


≪シナのSLBM:巨浪2の飛翔距離。ワシントンを狙うためには日本列島の南に進出する必要がある=インターネットから≫


日本中が欧州情勢に振り回されている間に、尖閣、沖縄周辺の海洋調査を欠かさないのは、将来の潜水艦作戦用の基礎データを収集しているからだ。
米ソ対立時代、米本土に届かないICBMの代わりに、ソ連キューバにIRBMを送り込もうとして、ケネディに阻止された。

この時は撤退したものの、やがて飛距離8000kmのD型SLBMを開発してこれをオホーツク海に配備した。ここからだとワシントンまで届くからだ。

早速反撃に出たのがカールビンソン空母群で、オホーツク海に進入して大演習を実施し、ここは「公海だ!」と世界にアピールした。今回イージス艦ラッセン」が「航海の自由作戦」でシナの不法な海域に進入したように。
その後カールビンソンは佐世保に入港したからご記憶の方もいるだろう。もっとも佐世保では反戦グループから「歓迎」ならぬ「帰れ!」コールを浴びせられたが…
このころ日本海側ではスクランブルが多発して、私も忙しかったものだ…。


米国は、南シナ海でフリーダム・ナビゲーション作戦を続行するというが、情勢は厳しくなってきた。NATOが息を吹き返し、同盟国支援に団結する可能性が出てきたからだ。
つまりフランスが「戦争状態」を宣告したからNATOとして集団的自衛権を発動する可能性が出てきたからである。
とすれば、米国は忙しくなる。いかに軍事に疎い大統領が「空爆だけで陸兵は出さぬ、移民は継続して受け入れる」と公言しようとも、米国国内世論はもとより、欧州の世論はそれを許すまい。


だから今までの米国大統領はこのような軍事的危機に適応できる「軍隊経験者」を大統領に選んできたのだが、民主党という“弁護士集団”にホワイトハウスを占拠されて以降、パスカルの「力なき正義は無効」という事実をテロリストに示してしてしまい、脳みそよりも武器の方を重視する無教養な殺人集団をのさばらせてしまった。

同様に「国際紛争を解決するための手段」としての軍事力を放棄させられた我が国は、この大統領と同じような道を進みつつある。


今我が国を取り巻く軍事環境は、シナにとって有利になりつつあるのだ。それはテロリストらによる“猫だまし”効果ともいうべき空白地帯がアジアにできつつあるからだ。

小粒ながらも精強な“軍隊”を持つことさえ忘れているかのような、わが政治家たちには、その空白を埋める処置を自ら取る決心を期待できないのが何とも残念だ。
「持ち前の馬力にかけて突進した栃煌山」は、大横綱がパチンと両手をたたくという「まさかの奇襲」に虚を突かれて寄り切られた。


そんな戦法は卑怯だ!と世界の首脳陣が「苦虫をかみつぶしたような表情」をしようとも、結論は「やられる方もやられる方だ」で収束するだろう。


自分の国は自分で守る、その決意がない国家は衰退してやがて消滅することは歴史が示している。

テロに関しては、国内の関係機関が真剣に動いているようだから期待したいが、議会制民主主義を貴ぶ?国柄である。その先頭に立つ「政治屋」にどこまで真剣みを期待していいものか…と不安がよぎる。


ところでいささか遅くなったが、三菱が開発した国産初の小型ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」が11日午前、初飛行に成功した。≪戦後初のプロペラ旅客機「YS−11」以来、53年ぶり。平成20年の事業化から7年以上≫かかったが、成功を喜びたい。次は国産戦闘機であることを忘れないでほしい!

≪MRJ=航空情報誌から≫


さて、13日の産経抄子は「戦闘機をめざす女性たち」と題してこう書いた。
≪「若き血を父の霊に献(ささ)げて女飛行家となった健気(けなげ)な少女(おとめ)飛行学校へ入学」。大正8(1919)年の大阪朝日新聞に、こんな見出しの記事が載った。愛媛県出身の兵頭精(ただし)という少女を取り上げている。

 ▼亡くなった父親が、飛行機にあこがれ、設計図を書きためていたことを母親から聞いて、飛行家を志した。「小柄で、顔も軀もまるっこい、しかし男みたいに生きのいい女性」だったという。三等飛行機操縦士の航空免許を取得するのは、記事から3年後、22歳だった。

 ▼晴れて、日本女性で最初の飛行家となった。世間の注目の的になったまさにそのとき、未婚の精が流産する。スキャンダル記事を書き立てられた精は、消息を絶ってしまった(『飛行家をめざした女性たち』平木国夫著)。

 ▼以来、数えきれないほどの女性が、大空に羽ばたこうとしてきた。しかし、戦後かなり早い時期から、女性の旅客機操縦士が誕生した欧米に比べて、日本女性の進出がもっとも遅れた分野の一つである。5年前、日航で初の女性機長が誕生して、話題となった。ただ、国内の航空会社で働く約5000人のパイロットのうち、女性は1%の約50人にとどまっている。

 ▼自衛隊が、女性パイロットの養成を始めたのは、平成5年だった。今や、輸送機や救難機で多くの女性が操縦桿(かん)を握っている。最後まで「女人禁制」だった、戦闘機パイロットへの道も、開かれることになりそうだ。防衛省が週内にも正式に決定する。すでに複数の女性自衛官が意欲を示しているというから、頼もしい。

 ▼折しも、国産初の小型ジェット旅客機「MRJ」の初飛行が成功した。「日の丸ジェット」のコックピットにも、女性の姿が目立つようになるだろう。≫


現役時代、突如防大に女子学生を入校させ、自衛隊に女性パイロットを採用する検討が開始されたと公表されたのでメディアが大喜びして取り上げたことがあった。今回の産経抄子同様「頼もしい!」と言って。


確かに当時の男子の中に、戦闘機は怖い?という気迫に欠ける応募者が出たこともあって「頼もしくない」ところがあったので、女性パイロットが脚光を浴びたが、現場で彼女らを教育する担当部隊はかなり神経を使う羽目になった。
もともと人間には自然に「アダムとイブ」的要素が埋め込まれている。これがあったればこそ人類は絶えないで今日まで来たのだが、こと軍事、それも3次元の航空界というと、やはり一種独特な雰囲気が漂うのは避けられなかったのである。


三沢時代、米空軍には女性パイロットがF−16で飛行していたが、彼女は医務官であった。つまり、航空医学を自ら体験しつつ、パイロットの精神的、肉体的問題点をフォローしパイロットの精神的、肉体的問題点を解決するための手段として操縦していたのであった。

そこで私も防衛医大卒の医務官(男子)を、機会をとらえては飛行させて、夜間飛行や空中戦闘などを体験させて、パイロットの肉体・精神にかかる問題についての医学的処置法を研究させたものだが、あくまでも試行であって、オーソライズされたものではなかった。
その後彼は不幸にも医師の名義貸し事件?に巻き込まれて自衛隊を去ってしまったが…。


さて、女性戦闘機パイロットを否定するものではないが、肉体的にかなり苦しいものが伴う以上、相当慎重に検討される必要があろうといいたいのだ。
聞くところによると、将来採用されるF-35戦闘機は高度にコンピューター化されているので、さほどのGはかからないというが、それでもそれまでの間は、戦闘機操縦者として5〜7Gかけて訓練する必要があるから、一概に大丈夫だとは言えまい。


男性と女性との間には、神から与えられた生理的区別もある。とりわけ人間の感情には察しがたいものがあるので、2番機に女性を引き連れて戦場に向かうリーダーの精神的な負担は、男性同士の編隊よりももっと複雑になるだろう。
下手をすれば、高度な練度を持つリーダーの、上空での能力発揮を“2番機”によって阻害されかねないと思う。
ましてや“彼女”が不運にも撃墜されようものなら・・・


マ、操縦かんを手放してはや20年、老兵が心配することもなかろうが、ただ気がかりなのは、以前の女性パイロットの採用動機が「男女雇用平等法」に基づいていたように、今回の決定が、政治屋や、官僚たちによって喧伝されている「輝く女性」の金看板に基づくものであってほしくない。


3次元の空間で、強烈なGの中を飛び回る彼女たちは、肉体もさることながら、瞬間的判断力が命の分かれ目であり、大活躍しているスポーツ界の女性アスリートと同類ではないのだから…


いい加減な?男たちに“口説かれて”スポットを浴びることを期待してはならない。民間機パイロットならばいざ知らず、戦闘部門は、相当な異次元の世界であることを事前によく理解させてから教育を開始すべきじゃないか?と思う。
これも一種の政治家らによる“猫だまし?”のような気がしてならないのだが…。

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