軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

北のミサイル如きに…

 北朝鮮は3月6日に四発のミサイルを発射したが、そのうち三発が我が国のEEZ排他的経済水域)内に着弾した。発射したミサイルはICBMではなく中距離弾道弾と見られるが、メディアはいつものごとく右往左往!
安倍首相を取り囲んでこれまたいつも通り質問攻めだが、発射したことがどうだという前に、わが国の備えが万全か?を問い、メディアも安倍首相を支持することを表明して、全面的に我が国の防衛力整備に協力する姿勢を打ち出したらどうだ?
“渡来人”が目立つ野党に日本防衛を期待する方がおかしいのだ。

それとも自分のTV局には北のミサイルは着弾しないと確信しているのか?

7日に朝鮮中央通信は「在日米軍攻撃用の弾道ミサイルの4発同時発射訓練に成功した。金正恩朝鮮労働党委員長が立ち会った」と報道しているが、それをどうとらえたのだろう?

狙いは在日米軍だから、わが社には関係ないとでも勘違いしているのか?


ニューズ・ウィーク2月28日号に興味ある漫画が出ていた。


≪本当に発射ボタンを押してしまった…来月号の漫画が楽しみ!≫


米韓合同演習が始まっているから、半島には十分な戦力はある。
ただし、韓国軍の力量が不明で、米軍の足かせになる恐れが多分にあるから、やるとしたら米軍単独の秘密作戦になるだろう。万一そうなっても、北の反撃は韓国どまりだから…。

しかし不軌弾が我が国の領土に飛んでこないとも限らない。
1〜2発だったら自衛隊で撃墜可能だろうが、まとまって飛んできたらいかに精強な自衛隊でも対処できまい。


森友学園の不法投棄、土地代金の不明朗さなどは、大阪府と関係役所、会計検査院に任せておいて、国会は国家防衛の大本について審議すべき時だ。


阪神淡路大震災、3・11の東電原発事故の時の政府の混乱が思い返されてならないが、被災した現地は辛うじて“復興した”ものの、国会議員らの頭はいまだに当時のままで“回復”していないから危険極まりない。未だに“ノー天気状態”だ。


もう一つ付け加えるが、メディアには正しい情報を示してもらいたいものだ。
例えばこんな図面が、大方の紙面を飾ったが、どこの通信社が流したイラストだろうか?

次のような図面もあったが、いったい何が言いたいのだろう?北のICBMは、米本土に届くぞ…とでも言いたいのだろうか?

では前掲した「今回の飛翔図」と比べてみたらいかが?この飛行経路が何を意味しているかお分かりだろう。
そう、南は韓国、北はロシア、西には中国が控えていて、万一その上空を飛びでもしたら、大変なしっぺ返しが来ることを“首領様”は予測しているのだ。
しかも飛距離の関係から今回の発射地点は北の西海岸から東向きだった。これは東海岸から撃てば秋田近辺に着弾する可能性があったからだろう。

今までのわが国は唯一“しっぺ返しが出来ない国”だったから、いとも簡単に北のミサイルは領土上空を飛び越えて太平洋上に落下していた。
この図のようにわが国は、以前はこんな風に舐められていたのだ!


当時、堂々と日本本土上空を飛ばされ、主権を侵されたわが防衛省は、それを分析して、きめ細かな飛翔図を作って白書に掲載して「仕事をした」と勘違いしていたのだった。
私には当時の北の首領の大笑いが聞こえたものだ。


その後、日本海イージス艦を配備し、要点にはペトリオットミサイルを配備したから、北は発射経路を次のように変更した。


そう、もうお分かりだろう。飛翔経路を日本を含む周辺諸国領空を避けたのだ。
貧弱?だとはいえ、日本の自衛隊が迎撃態勢を取ったからだ。備えがなかったころの北は傍若無人だったわけだ。

処が未だにこんな図で国民をだましているTV局があるのが情けない。
無知だとしたら無責任極まりないが、意図的なフェイク情報だとしたら、野党同様、北朝鮮と親密な会社だといわれても仕方あるまい。

どうしてわざわざ朝鮮半島と日本本土の断面図を浮き彫りにして、米大陸とつなげるのだ?
このようなやり方をする会社を、トランプ大統領は意図的なフェイクメディアだと非難するのだ。

前掲の図面から明白なように、北朝鮮ICBMで米国に“反撃する”とすれば、ミサイルは必ずロシア上空を飛ばねばならない。仮に射程が12000キロに延伸されてもである。


同様にシナのICBMも、ワシントンを狙うとしたらロシアの上空を経由する必要がある。これをロシアがみすみすと指をくわえて見ているとでもいうのか?
大韓航空機という、民間旅客機が不注意で侵犯しただけで撃墜した国である。
ましてや核付きミサイルが侵犯するのをみすみす見逃しでもしようものなら、シベリア軍管区司令官は間違いなく“処刑”されるだろう。
だから米国にとっては北のICBMなんぞ恐れるに足らないのだ。


但し、SLBMになると対米効果は出てくる。勿論シナのSLBMもそうだ。
だから彼らは南シナ海を占領し、航空優勢を確立して米軍の進入を阻止し、シナのSLBMの自由な航路を確保したいのだ。
しかしそれにしても邪魔なのがロシアと日本領土である。
さらに周辺海域には世界一の対潜水艦能力を持った海自と、恐ろしい攻撃力を持つ第7艦隊がコラボして待ち構えているのだから、シナにとっても北にとっても都合が悪いのだ。
こんな軍事的基礎学力もない“おばさん”たちがディレクターの指示に従って、カメラに向かって危機感を煽るのは如何なものか?

其の昔、シナが大陸西部にICBMを配備した時、売れっ子の軍事評論家が、メルカトル図法の世界地図上で「米国と中ソが核戦争になったら、シナのミサイルもソ連のミサイルも米国のミサイルも、わが国上空を飛び交う」とその危険性を強調していたから、当時3佐にすぎなかった私は愕然としたことがあった。スタジオは恐怖感に包まれていたが…
その後有名な国際関係論の大学教授が米軍人から教えられて、科学雑誌「サイエンス」にミサイルは北極上空を飛ぶのだ!と“得意げに”書いたから、彼の国際関係論をいささかなりとも評価していた私はあきれてものも言えなかった。

国際関係に無知な日本人が育った背景には、小学校時代から無意識?に教えられるメルカトル図法の地図が原因だ!と考えた私はそれ以降、軍事音痴な日本人を【メルカトル症候群】と名付けたものだ。

今や宇宙に進出する時代である。影響力が大きいメディアのディレクターは、身近に地球儀を置いて、解説者の解説を監視しておいてほしいものだ。

それにしても、北の首領様は実に勇敢な方だ。カダフィーやチャウセスクのようにならないと確信しているのだろうが…。


ところでそれよりも気がかりなのは、米国の対中国軍事費増加である。細部を見なければ不明だが、おそらく台湾に対する何らかの措置を採ると考えられる。

南シナ海の死命を制する位置にあるのが台湾だからである。
たまたま雑誌「正論」4月号に島田洋一福井県立大教授が「台湾に米軍の駐留を!」と書いているのに呼応するかのように、台湾に米軍司令部が設置されるという情報が届いた。
昨年、米国台北事務処が新築完成したが、その中に「東太平洋米海軍陸戦隊司令部(海兵隊?)」が入る。沖縄、韓国、ハワイなどから約800人が移動するという。


≪建築中だった美国在台協会台北新址の写真=インターネットから≫

現在は「在台北米国協会米軍弁公所」などと称されているが、シナは神経を高ぶらせていて、外交部が反発しているというが、米国台北協会(AIT)事務処長Stephen Xonng処長は「米軍の“台北事務所だ”」と突っぱねた、という。

≪ステファン処長≫

南西方面、少しはいい方向に向けて“波高し!”になりつつある。
事実だとしたら大いに喜ばしいことだ!

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