軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

飛行教導群司令・田中1佐と植田1尉、殉職

航空自衛隊小松基地(石川県小松市)のF15戦闘機の墜落とみられる事故で、基地の石引大吾司令(48)が二日、小松市と県庁を訪ね、石引司令は「多大なご心配とご迷惑を掛け大変申し訳ない」と謝罪した。訓練再開は基地所属の機体すべての点検と乗員の安全教育を条件とし、原因や再発防止策などを地元に説明した後になるとの考えを示した。

 石引司令は市役所で市長と議長を順に訪ね、経過や対応を説明した。会談後の取材に、石引司令は「隊員二人の行方不明は残念で断腸の思い。まずは捜索救難活動に全力を注ぎ、飛行訓練は実施しない」と述べた。F15は離陸後約一〜二分で墜落したとみられるが、機材トラブルなどの可能性には「事故原因の調査中」として回答を差し控えた。

宮橋勝栄市長は「原因究明がなされれば、市民に説明してほしい。安全な飛行の徹底がなければ、通常の訓練は考えられない」と強調した。谷本正憲知事は「安全が確認されるまで訓練を控えてほしいというのが県民の率直な思い。地元の意向を尊重してほしい」と繰り返し求めた。(北国新聞)

f:id:satoumamoru:20220203165036p:plain”謝罪”する基地司令

現役時代から不思議に思ってきたことだが、自衛隊は事故を起こすと「一歩間違えれば大惨事!」などと報道され、今回の様に基地司令が市長に謝りに行く。

まるで「僕たち、憲法で認められていない自衛隊に、この国を守らせてほしい」と懇願しているかの様だ。最近報道内容は少し変化したが。

私の現役時代に比べて市長らの話し方は、少しはトーンダウン?しているかのようだが、知事も市長も、殉職した二人は石川県民であり小松市民であることをどう思っているのだろう?真面目な納税者が二人消滅したというのに…。同じ市民であるはずの家族に対しても、お悔やみの言葉はなかったのだろうか?

最近の政治家の魂はどこか不自然で、人間性が感じられないのは私だけだろうか?。

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それはさておき、偶々「航空情報誌」の3月号に田中群司令は登場している。

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「航空情報3月号から」

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殉職した田中1佐(同誌)

経歴を見たら、防大38期だというから(私は7期)31年も若いが、その前に7空団305飛行隊と4空団で第9代のブルーインパルス隊長を務めている。どこかで袖すり合っていたかもしれない。周辺情勢が緊張しているさなかである。「敵役」たる教導群のトップの死は戦力上惜しまれてならない。

F15DJの事故と言えば1983年10月に宮崎県新田原沖で、夜間低高度要撃訓練中に突如墜落した福島3佐と北村2尉の事故が忘れられない。当時春日勤務だった私は、立川から急遽帰隊して救難活動に従事した。あの時はヘルメットが2個回収できたので、二人の死亡が確認できたのだが、今回はどうだろうか?出てくればいいが・・・

この機の事故は、その後偶然にも通常訓練中だった同じF15DJに異常事態が発生して操縦困難になったものの、ベテランが操縦して何とか滑走路にたどり着いた。昼間だったからよかったものの、夜間で発生していたら声も出せなかっただろう。原因は操縦系統の中枢にある「減圧バルブ」が異常になり、操縦者の意図とは別にかってに?作動したのであったが、DJはライセンス(国産)ではなく、米国から直輸入だったため、直ちにDJを検査したところ、20機近くに同種の不具合が発見されたと記憶する。減圧バルブが欠陥品だったのだ。

浜松の第1術科学校で、燃料漏れが治らず、何度「ゴムタンク」を新品と交換しても漏れるので検査したところ、タンクを収納するか所のスペースに「バリ」が出ていて、タンクを切っていたことが分かった。それほど「国産」と「輸入」では製造過程に考えられない「差」があったものだ。

南シナ海の緊張は予断を許さない。県民が安心するのを待って居れないこともあろう。敵は事故調査が終わるまでゆっくり待ってはくれないからだ。

北朝鮮だって、これ幸いとばかりに日本海めがけてミサイルを撃っている。そういう情勢下にあるということを「市民を保護する?」立場にある知事や市長らは「地元の意向を尊重してほしい」などという前に「市民たちに解説」してやってほしいものだ。

国防に関しては「百年一日のごとく」門斬り型のマンネリ記者会見が続いているが、もうそろそろやめにしたらどうだろう?

 

田中1佐と植田1尉の冥福を祈り、併せてご家族に哀悼の誠を捧げたい。 合掌