軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

テロリストは焦っている.

サミットが開催されている英国の首都・ロンドンで,7日朝同時爆破テロが発生した.産経は33人死亡,360人負傷と報じているが,JR西日本の事故の様に,死傷者は今後増えるに違いない.サミット開催中という事もあって,ロンドンの警備が手薄になった隙をついたのであろう.
犠牲になったロンドン市民にはお悔やみ申し上げる.
『テロ』ほど卑怯な行為はないが,『卑怯だ』と言っても聞く耳を持たないのがテロリストだから,暫く堂々巡りが続くだろう.現在,テロとの戦いで象徴的なのがイラク情勢だが,国際テロリストたちは相当焦っているように感じる.我国のメディアはイラク情勢を的確に報道しているのか疑問だが,見る限りにおいては,米軍に対するテロ行為,自衛隊に関する『反対行為』(最近は自衛隊の活動に関する記事はめっきり減ったが…)が強調され,全体像がなかなか浮かばない.
しかし,イラク人自身は『新国家建設』に意欲を持ち始めているようだし,それを妨害しようとする『国際テロリスト』達の阻止行動が増えているように思える.イラク人の自立を支援しているのが米,英を中心とした軍事力だから,彼らは当然それをターゲットにする.ここしばし,我慢比べだろうが,肝心のイラク人たちが,テロリスト達をどう捕らえているかが勝負であろう.
イラクイラク人(部族が混在しているとは言え)のもの、外人の干渉は辞めて欲しい、と言う声が高まれば勝負はつく.しかし,テロ行為は,一般人に混じって手薄なところを突く行為だから,警備する側にとって市民の安全確保に万全を期するのは至難の技である.
シナ事変で,便意隊や敗残兵が,避難民の中にまぎれて,警備が手薄になると日本兵を殺害したから,日本軍は避難民や市民を拘束し大掛かりな捜索をせざるを得なかった.古今東西,テロ対策は報復合戦になりやすいから,その現象を捉えて『南京虐殺はあった』という先生もいるくらいである.これからも,テロは完全に封じ込める事は出来ないであろう.
しかし,今回もまたテロリスト達は戦略を誤った.9・11で,多数の市民を『虐殺』したため,米国民の怒りに火をつけた.イラク戦争で米国青年がかなり犠牲になったが,それでも米国民に『ベトナム戦争』時のように『厭戦機運』が盛り上がらない.それは米国民にとってはテロが『アンフェア』であり「ジャスティス」が優先するからである.
昨日,ブッシュ大統領も『ジャスティス』を強調した.フォークランド紛争開始時に,サッチャー首相も『ジャスティス』を強調した.今回のテロ行為も,アングロサクソンの正義感に火をつけてしまった.フランスやロシア,中国がどう考えているかは疑問だが,米・英を中心とした先進国家は,敢然とテロに立ち向かうであろう.ブレア首相の『決意表明』と,ロンドン市民の意外なほどの冷静さがそれを証明している.その意味で,今回のテロは、英国民だけではなく,サミット参加国代表にも,テロ対決表明をさせる結果になったのだから、又もや『失敗』だったと思われる.