軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

基地航空祭と経済効果

久しぶりに松島基地航空祭に出席した。東北地方の水田は見事な稲穂が垂れ、豊作の予感がした。夕方石巻駅に着いたが、台風一過とはこのことで、暑いばかりの日差しが照りつける青空が広がっていた。27日の前夜祭ではこの7月末に着任したばかりの杉山司令が挨拶に立ち、「航空祭は天気が99%、明日は大丈夫だと思うが、以前45日目に大雨が降った例もあるので気が抜けない」と言った。それは私の時のこと、「42日目ではなかった?」と昔の副司令に聞いたら「45日目です」と言う。私が「ブログで42日目と書いたので修正しなければ」と言うと、傍にいた現役が「気象隊で確かめましょうか?」と言ったがそれほど大げさなものでもない。商工会長に聞くと「45日目!間違いない」と背中を叩かれたから、ここで改めて訂正したい。
翌日早朝ホテルの窓から空を見ると、基地の方はどんよりと曇っている。なんと基地周辺では小雨がぱらついたというから、基地司令は気をもんだことだろう。
10時に営門を入ると、既に観客と車で大混雑、雲底は約3000メートルで安定していたから、各種航空機が展示飛行を実施していた。
昼の祝宴では多くの懐かしい方々に会った。「百姓」たちに囲まれて、「司令さん、あの時(45日目)雨が降ったお詫びに頭を丸めてきた、と言ったが、あのときのままだベエ」とからかわれた。「そんなこと言ったかなあ?」ととぼけると、「言った言った。其の後『民百姓に負けた』と言った」と笑う。「今年は豊作のようですね」と聞くと「後は台風と地震次第」と答えたので、この地方は先日も地震があったことを思い出した。何とか豊作を期待したいものである。
メインテーブルには浅野宮城県知事はじめ,仙台市長、石巻市長、それに新「東松島市」市長など、地方自治体の首長が勢ぞろい、いい交流の場になっている。
もともと基地は、矢本町と共存共栄で、基地航空祭にあわせて前日祭として「矢本祭り」を実施し、翌日が基地航空祭という、全国でも珍しいお祭りであったが、この4月に鳴瀬町矢本町が合併して「東松島市」が誕生し、人口も44000に増えた。今回は、地元のお祭りと航空祭が分離した「東松島市」としての最初の航空祭である。
浅野知事は8回?皆勤で出席されたが、今回が知事として最後の出席になるというから、「個人になっても来て下さい」と言うと、「そうだ、後任者が誰になるか知らないが、申し送っておこう」と言った。57歳、まだまだ才気煥発な「青年」である。
午後は日差しが出て暑くなってきたが、大観衆を前にブルーインパルスが展示飛行を実施した。展示飛行を見飽きている私は「観衆の表情」を見るのが好きなのだが、通過する機体を追って一斉に動く観衆の顔が、みんな「口」をあけているのは何故だろう?
高射機関銃や携帯SAMが展示してあるコーナーでは、子供達が長い行列を作ってはしゃいでいたが、実は大人のほうが子供を出汁にして楽しんでいるのではないか?
ヘルメットや防弾チョッキを我が子に着せて、記念撮影する若い家族連れが目立ったが、日教組や「平和団体関係者」が見たら失神するのではないか?
我々の頃は、「軍国主義復活だ」「軍事訓練を意図している!」とか、「校庭で武器展示」と大騒ぎされ、其のたびに国会で問題になって責任者が「配慮不足だ」として処罰されたものだが、其の様変わりには感動した。漸く普通の国になった。
私が三沢基地司令であった約15年ほど前、入場者が40万人を越え、警備担当の米軍がパニックに陥って入場制限したため、その後苦情が寄せられたことがあった。
この日午後一時現在の入場者を34万人と発表したのだが、入場出来ずに町に溢れていた人たちがその後も入場し続けたため、実数は40万を超えたのであった。
航空祭終了後、青森銀行三沢支店長が来て「司令、三沢の経済活動に大きく貢献していただき感謝します」と言い40万人の入場者だと約8億円の現金が一日で基地内に投下されたことになるという。
一人当たり2000円で計算するそうだが、飛行機を印刷したTシャツが2000円、米軍家族手作りの「あまーいケーキ」が一個1000円だったから、ちょっと基準が低いのでは?と聞いたが、老人や幼児を含む平均値として概算使用するのだそうだ。
当時の三沢市の人口は約4万人、米軍と家族を入れると約5万人だったから、一日で三沢市の人口は10倍に膨れ上がったのである。我々は事故防止、交通整理、観客の安全確保に全力を注いでいるから、「収益計算」など想定外だったが、これを聞いて思わず唸った。勿論其の前日から周辺各市町村のホテルなどに宿泊しているファン達の数字や、鉄道などの交通機関の収益は含まない。この日は季節としては暑いくらいの天候だったので、市内の清涼飲料水は飛ぶように売れ、自動販売機は全て空になった。会社は4回補充したそうだが、交通渋滞でその後は出来なかったという。駐車場も満杯なので、農家などが庭や畑を解放して、一台600円で駐車させたらしいが、それも計算外である。勿論自衛隊には一銭も入らない!
基地航空祭は、其の人気の高さゆえに、周辺自治体にとっては相当な経済効果があることは理解していても実際に数字を聞くと納得せざるを得ない。
札幌雪祭りもそうだが、自分が「得すること」には口をつぐみ、騒音問題や事故などの時には自衛隊を非難すると言うのはいかがなものか。
先週御殿場で行われた陸自の総合火力展示には、2万2千人が集まったそうだが、「約40トンの実弾を使用し費用は約3億4000万円」だと新聞は書く。
今回の松島基地航空祭には約9万人が集まったという。三沢の例を適用すれば、一日で約1億8千万円の経済効果があったことになる。
しかし、飛行機のカレンダー一枚2000円、人気の「アポロハット」も2000円以上で、行列が続いていたからもっと大きな効果があったと思われる。
帰京するとき利用しなければならない唯一の仙石線は大混雑で、山手線のラッシュ以上だったが、そのまま一時間、仙台駅まで我慢の連続だった。JRも高速道路もさぞ「儲かった?」事だろう。
このように各地の自衛隊で行われるお祭りは、周辺自治体にとってかなりの「経済効果がある」事も見落としてはなるまい。
最も、一晩の夕食で、一億円を稼ぐ元総理には適わないが・・・。